円高と円安
前回、為替って何?のお話の中に、「為替レート」が出てきました。
手持ちの通貨を他の通貨に交換する時の比率のことを「為替レート」といいます。
例えば為替レートが
1ドル100円から1ドル80円のように比較時点より安くなる動きは「円高」
1ドル100円から1ドル120円のような比較時点より高くなる動きは「円安」
となります。
安くなっているのに「円高」、高くなっているのに「円安」と考えると頭が混乱してきますよね。
これは、円の価値が上がっている時(少ない円でたくさんの外貨と交換できる)が「円高」、
逆に円の価値が下がっている時(たくさんの円で少しの外貨と交換)が「円安」
とも言い換えることができます。
輸入製品である外国のスポーツカーを買う時に、
スポーツカーが50,000ドルだったとします。
1ドル100円の時に購入したら5,000,000円です。
1ドル120円の時に購入したら6,000,000円です。
円安の時に海外製品を購入すると、持ち出しが多くなり不利です。

日本で生活していると、買い物の時、わざわざ他の通貨に交換することはないので為替レートに注目している人はあまり見かけませんね。
海外旅行を計画中の人や、外貨預金・外貨建て保険に加入中の人、上の例のように高価な海外製品の購入を検討している人はよくチェックしていると思います。
いきなりですが、問題です。
日本の投資家が海外への投資を増やしたとすると、「為替レート」は円安と円高のどちらに動くでしょうか…?
変動する為替相場
日本円は戦後から長い間、
1ドル=360円という固定相場制でした。
1973年に変動相場制に移行し、これにより円に対する各国通貨の価値は、経済成長率やインフレ率などの経済情勢に応じて、そのつど変動するようになりました。
ちなみに、過去最大の円高は2011年10月31日の
1ドル=75円32銭です。

為替相場は、世界の経済状況や需要と供給のバランスなどによって日々刻々と変動しています。
つまり、円を売りたいと思う人が増えれば円安になり、円を買いたいと思う人が増えれば円高になります。
どういうことかというと、
例えば、車の販売業者が外国のスポーツカーを輸入する時、
代金をドルで支払うには手持ちの円をドルに交換する必要があります。
そのため、「円を売ってドルを買う」という取引が行われ円安・ドル高の要因となります。
その反対に、
日本製品を輸出する企業が、アメリカに製品を輸出する時、
代金をドルで受け取りますが、
そのドルで日本国内の従業員の給与や材料費を払うためにはドルを円に交換する必要があります。
この時は「ドルを売って円を買う」という取引になり、円高・ドル安の要因となるのです。
その他にも、為替変動の要因としては投資家の行動や物価の変動などが挙げられます。
さて、先ほどの問題ですが、
日本の投資家が海外の投資を増やすという行動は、
「日本の投資家が海外の株や債券を買う」
↓
「円を売ってドルを買う」
↓
「円安・ドル高」
が正解です。
逆に、海外の投資家が日本の株式や債券の投資を増やすという行動は
すなわち「円高・ドル安」の流れを生むといえます。
物価の変動による為替変動
物価の変動も為替変動に影響を与える原因の1つです。
インフレとは、物の値段が上がっていくこと。
インフレ時では以前は買えていたお金を出しても物が買えなくなり、
同じものを買うのに以前よりもたくさんのお金を出さないといけなくなる。
つまり、お金の価値が下がります。
デフレとは、物の値段が下がっていくこと。
デフレ時では同じお金を出せば以前よりもたくさん買えるようになり、
お金の価値が上がります。
仮に、日本でインフレが続き、アメリカでデフレが続けば、
円の価値は下がる一方でドルの価値が上がり、
為替相場は円安・ドル高に向かう可能性が高まります。
日本のインフレ対策にドルを保有することが有利だ
という話を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
<他に、為替変動に影響を与えるものとして>
金利の差
銀行預金や債券投資では、金利が高い方がより多くの収益を得ることができます。
金利が高い国や地域の通貨は買われ、金利が低い国や地域の通貨は売られます。
例えば、
日本の期間10年の国債の金利が0.023%、
アメリカの期間10年の国債の金利が0.704%だとすると、
日本の投資家は持っている円をドルに替えてアメリカの国債を買おうとします。
その場合、円を売ってドルを買うので円安・ドル高の要因になります。
国と国の間の金利差が大きいと、
金利が低い国の通貨は安くなり、金利が高い国の通貨は高くなります。
このため、
日本の中央銀行である日本銀行は、政策金利の引き上げ・引き下げを行い
為替変動をコントロールしています。
各種の経済指数
経済指数とは、
各国の政府や経済関連の中央省庁(日本では財務省、経済産業省、内閣府など)、
中央銀行が発表している「経済に関連する統計」です。
「雇用統計」は市場の注目度が一番高いアメリカの経済指標です。
米労働統計局(BLS)が発表している毎月の経済指標で一般的に、毎月第1金曜日に発表されます。
雇用の状況が良ければ、失業率の低下や賃金の上昇など、アメリカ経済の拡大につながると予想されるため、統計の結果が予想を大きく上回ると、通常は米ドルが買われて円安・ドル高になる傾向があります。
この他にも、政権交代があった場合や戦争などが起きると、リスクを避けようとして関連する国の通貨が売られたり、地震やハリケーンなどの大きなが災害が起こると、その国の経済状態は悪化するリスクが高まると見られます。
世界経済に対する影響力が大きい人物の発言などによっても、為替相場は大きく動くことがあります。
円高と円安を理解するためのサイコロゲームなどは小学校3年生位からできるものもあるので、
お子さんと為替レートが変化する中、実際に「輸入」する立場に立って、「円高・円安」を体験してみるのも良いかもしれません。