2025/08/29

“高利回り貯蓄型保険”という爆弾?消費者は要注意!



金利上昇でなぜ高利回り保険が登場?

近年、長らく続いた超低金利政策に変化の兆しが見え、国内の金利がじわじわと上昇傾向にあります。日本銀行がマイナス金利政策を解除し、市場金利が上向いてきたことで、生保各社は貯蓄型保険の予定利率(保険会社が契約者に約束する運用利回り)を相次いで引き上げ始めました。これまで低金利下では予定利率を引き下げて保険料を値上げし、契約者の負担が増すばかりでした。しかし金利上昇により、ようやく保険料を引き下げられる局面が訪れたとも言えます。こうした「金利のある世界」への転換を背景に、生命保険会社は高い返戻率をアピールする新商品を次々と投入しています。

具体的には、市場価格調整(MVA)機能付きの一時払終身保険や個人年金保険など、表面上の利回りを高めに設計した商品が各社で活発に販売されています。日経新聞の報道によれば、大手生保4社におけるこれら高利回り保険の2025年6月の販売額は前年同月比で2倍にも増加しました。各社がこぞって「高利回り」「お得」などと宣伝するため、一見すると銀行預金や国債より魅力的な運用商品に映ります。しかし、ここに大きな落とし穴が潜んでいるのです。


表面利回りの罠:MVA付き保険に潜むリスク

生命保険の貯蓄型商品で謳われる高利回りは、「契約満期まで解約しなかった場合」の受取額ベースで語られます。たとえば最近の若年層向け積立保険では、10年満期で返戻率105~106%程度(10年間で元本が5~6%増)の商品が登場しています。住友生命の新商品「チャキン」は10年満期で返戻率106.1%、日本生命の「ちょこつみ」は105.2%とされ、年平均利回りに直すと約0.5~0.6%程度です。確かに普通預金よりはわずかに良い数字ですが、大きな増益とは言えませんし、インフレ率2%を考慮すれば実質目減りしてしまう利回りに過ぎません。

さらに注意すべきは、市場価格調整(MVA)付きの商品では途中解約時に返戻金が減額され、元本割れのリスクを伴う点です。「市場価格調整(MVA)」とは、契約時と解約時の市場金利の差によって解約返戻金額が増減する仕組みです。

契約後に市場金利が上昇すると、保険会社の運用資産(債券等)の価格は下落します。その損失分を契約者に負担させるため、解約返戻金が減少してしまうのです。逆に金利が下がれば返戻金が増えることもありますが、現在のように金利上昇局面では解約すると大きく元本割れする恐れが高まります。

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図:金利0.3%の銀行預金や年0.6%の積立保険では資産はほとんど増えません。一方、2%のインフレでお金の価値は着実に目減りしてしまいます(左から順に、年0.3%で運用した銀行預金、年0.6%で運用した積立保険、年2%のインフレによる価値目減り分、年5%で運用した投資商品の、10年後の元本100に対する価値を比較)。超低リスク商品だけで運用していてはインフレに負けて購買力が低下してしまう例です。

このように、「高利回り」に見える保険ほど解約時のペナルティが大きい傾向があります。返戻率を良く見せて契約を促す一方で、いざという時に解約しようとすると元本割れの可能性がある——いわば「爆弾」を抱えた商品と言えるでしょう。「市場金利の変動による負の影響を契約者に負ってもらう商品」だとも日経は指摘しており、販売にあたっては丁寧な説明が欠かせないと強調しています。


 「預金以上・投資未満」保険で資産運用は正解?

保険各社が売り出す貯蓄型保険は、「預金以上、投資未満」というキーワードで安全志向の消費者のニーズを捉えています。つまり「元本保証の安心感は預金と同じでありながら、預金よりは少し有利に増やせますよ」という触れ込みです。確かに元本割れリスクを嫌う人にとって魅力的に映るかもしれません。しかし、ここに大きな落とし穴があります。

資産運用の基本原則として、リスクを取らない限り大きなリターンも得られないことが挙げられます。リスクとリターンは表裏一体であり、資産が減るリスクを一切取りたくない人は資産が増える果実も手にすることはできません。貯蓄型保険はまさに「リスクゼロだからリターンも極小」にとどまり、長期的に見れば資産形成にはほとんど寄与しない可能性が高いのです。たとえ元本割れしなくても、年0.5%程度の利回りでは物価上昇に追いつかずお金の購買力は確実に低下してしまいます。

また、貯蓄型保険は流動性(自由に引き出せる柔軟性)の低さにも注意が必要です。契約の途中で解約した場合、商品によっては元本(払い込んだ保険料)がそのまま戻るものもありますが、運用益は一切得られませんし、解約控除などで損失が出るケースすらあります。実際、一般的な個人年金保険では契約後5年以内に解約すると支払った保険料の30~40%程度しか戻らない商品もあると報告されています。このように「いつでも引き出せる貯蓄」には程遠いのが保険商品なのです。

そもそも資産運用目的で生命保険を利用すること自体に疑問を呈する専門家もいます。保障(保険)と貯蓄(運用)をワンセットにした商品より、保障は必要最低限の手頃な定期保険で賄い、運用は別途シンプルな金融商品で行う方が効率的との指摘です。保険はあくまで万一に備えるセーフティーネットであり、資産形成のエンジンとしては非効率になりがちです。特に若い世代では、自ら運用を学び複利の力を活用できる時間がありますから、「安心感」と引き換えに将来の資産成長の機会を逃してしまうのはもったいないでしょう。


NISAと比較:本来とるべき投資判断とは

では、資産形成には具体的にどのような手段があるでしょうか。代表的なのはNISA(少額投資非課税制度)iDeCo(個人型確定拠出年金)といった税制優遇制度を活用した長期投資です。NISAであれば、毎年一定額までの投資で得られた運用益が非課税になるため、効率よく資産を増やせます。2024年から制度が拡充された新NISAでは非課税投資枠が大幅に拡大し、生涯で最大1,800万円までの投資元本を非課税で運用できるようになりました。株式や投資信託で運用すれば、長期的に年数%のリターンも期待でき、インフレにも対抗し得る果実を狙えます。

一方、積立型の保険商品は先述の通りリターンが限定的で、インフレに弱く、途中解約もしづらい商品です。税制面でも生命保険料控除による節税効果はごくわずかで、最終的な手取り額に大差を生むものではありません。変額保険など一見“投資もできる保険”も存在しますが、保険会社に支払うコストや手数料が高く、肝心の運用部分は証券投資信託(投資信託やETF)とほぼ同じというケースが大半です。結局、余計なコストを払って複雑な商品を買うより、シンプルで低コストの投資信託やETFで運用した方が合理的だという結論に落ち着きます。

もちろん、保険には万一の際の保障が付いている安心感や、強制的に積み立てて貯蓄が苦手な人でも確実にお金を残せるといったメリットもあります。しかし「貯蓄もできる保険」を選ぶ場合は、その裏にあるコストやリスクもしっかり理解しなければなりません。特にNISA等を活用すれば投資でも非課税メリットを享受できる時代です。目先の「元本保証」に飛びつく前に、他の選択肢と冷静に比較検討することが重要でしょう。


販売現場で懸念される契約者保護

最近の高利回り保険ブームの陰では、販売現場における説明責任モラルの問題もクローズアップされています。かつて外貨建て保険が流行した際、高齢者を中心に「相続対策になる」と銀行窓口で勧誘が過熱しましたが、その裏で商品内容を十分に理解しないまま契約してしまい、トラブルが多発しました。2019年度には銀行経由で販売された外貨建て保険の苦情件数が2,800件超と、2014年度比で3倍以上に膨れ上がったことが報告されています。契約者に過大な解約手数料やリスク負担を強いる商品設計であるにもかかわらず、十分な説明がなされなかったケースが多かったのです。

金融庁の幹部はこうした状況について「最悪の仕組みでしょ」と厳しく批判し、保険各社に見直しを促しました。市場金利連動で解約返戻金が減額されるMVA型商品のように、複雑でリスクを内包する商品ほど販売側の誠実な説明と顧客本位の姿勢が不可欠です。にもかかわらず、「売れれば良い」という営業優先の考えで爆弾をばら撒くように商品を提供していれば、最終的に信頼を失うのは保険業界自身でしょう。契約者保護の視点を持ち、長期にわたり顧客の人生に寄り添うという本来の使命を忘れてはならないはずです。


まとめ:賢く選択し、資産形成を

金利が上昇局面に入った今、「利回りが良い」といった宣伝文句につい心惹かれるかもしれません。確かに生命保険各社の新商品には魅力的に映るものもあります。しかし、その裏に潜むリスクや制約もしっかり理解した上で判断することが大切です。特に資産運用を目的に保険を契約しようとするなら、「本当にその商品で良いのか?」と一度立ち止まって考えてみましょう。私たち消費者自身が正しい知識を持ち、長期的視野でより有利な選択をしていく姿勢が求められています。

最後に、保険を使った資産形成の限界や、保険営業の裏側について詳しく知りたい方は以下の参考記事もぜひご一読ください。それぞれ保険の落とし穴や賢い資産形成のヒントが分かりやすく解説されています。


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