2025/07/24

だから詐欺られる!「絶対儲かる」は絶対危険!

日本経済新聞の2025年7月20日付朝刊は、実体のない夢の投資話で全国1,300人以上から約80億円もの資金を集めた大型投資詐欺事件を報じました。東京都内のコンサル会社が「年利20~30%で5年後に元本償還」「大手保険会社が関与しているから元本保証」といった謳い文句で高齢者を勧誘し、実際には病院向け債務保証ビジネスという名目の自転車操業(ポンジ・スキーム)で集金して破綻したのです。勧誘にはファイナンシャルプランナー(FP)の国家資格保有者まで加担しており、多くの被害者が「FPが言うから安心だと思った」と証言しています。なぜこんな荒唐無稽な「夢の資産運用」に、これほど多くの人が騙されてしまうのでしょうか?本記事では、この事件をきっかけに一般的な投資詐欺の手口と構造を分析し、AI技術を悪用した新たな詐欺の脅威にも触れながら、私たち投資家が身を守るために必要な“目利き”の力=情報リテラシーとAIリテラシーの重要性について考えていきます。



「うますぎる話」に潜む罠 — 年利30%保証は嘘の合図

「絶対に儲かる」「年利30%保証」──そんなうますぎる話こそ、まず詐欺を疑うべき典型例です。実際、今回の日経報道の詐欺案件でも「NISAより良い利回り」「今だけ、限られた人にしか紹介していない」と甘い言葉で誘われた人々が被害に遭いました。考えてみてください。もし本当に安全かつ簡単に年利20~30%もの高利回りが得られる投資案件が存在するなら、なぜその“夢のような話”がわざわざあなたのところに転がり込んでくるのでしょうか?通常、そんなおいしい話は既得権益層の間でひっそり消化されてしまい、一般投資家の元に流れてくることはありません。冷静に「なぜこの人は他人の私にこの話を教えるのか?」と自問すれば、そこに大抵は裏があると気づくはずです。

また金融の世界の大原則として、「高利回り」と「元本保証」は絶対に両立しません。リスクとリターンは比例するため、本当に年利30%もの利益を狙うには相応の大きなリスクを背負う必要があります。にもかかわらず「絶対に損しない」「今まで一度も損失が出ていないから大丈夫」といった触れ込みで安全を装うのは、典型的な詐欺の話法です。実際、世界有数の投資家であるウォーレン・バフェット氏ですら長期平均の年利回りは20%弱と言われます。それを凡人が「毎年30%確実」に増やせるなどというのは、常識的に考えてあり得ませんよね。

さらに詐欺師たちは法規制を巧みにすり抜けようとします。例えば「元本保証」を公言すると違法になるため、「保証はしませんが今まで損した人はいません」などと“絶対”という言葉を避けつつ、結果的に絶対儲かると信じ込ませる話法を使います。あるいは「証券会社を通していない特別なルート」「紹介者限定の秘密案件」といった触れ込みで、公的なチェックを経ていない怪しい商品をあたかも選ばれた人だけの特権のように見せかけるケースもあります。パンフレットや説明資料がやたら豪華でキラキラした夢物語ばかり強調されたものになっているのも警戒信号です。おいしい話には必ず落とし穴がある——昔から言われるこの教訓を肝に銘じましょう。投資の世界で「絶対儲かる」「ノーリスク」といった言葉が出た瞬間、それは真っ赤な警告サインだと思うべきです。


AI時代に巧妙化する新手の投資詐欺

ところが近年、この「美味しすぎる儲け話」にさらにリアリティを持たせて人々を欺くため、AI技術を悪用した新手の投資詐欺が急増しています。特に深刻なのが、ディープフェイク(AIによる偽動画・偽音声)やSNS上の自動勧誘ボットを駆使した手口です。例えばSNS上では、著名人の顔写真や名前を無断使用した偽の投資広告が溢れ始めています。「有名経営者による無料投資セミナー開催」「この方法なら必ず儲かる」といった魅力的なフレーズとともに、実在の著名人があたかも投資を推奨しているかのような動画付き広告が流れてくるのです。もちろん本人は全く関与しておらず、それらの広告は嘘の投資話へ誘導するための囮(おとり)に過ぎません。

実業家や著名投資家など社会的信用の高い有名人が詐欺グループに悪用されるケースは後を絶ちません。警察庁の調べによれば、2023年に日本で発覚したSNS投資詐欺の被害総額は少なくとも277億円に達し、偽広告に釣られてSNS上で投資勧誘される事例が多発しています。悪質な業者はまずFacebookやInstagram等に有名人になりすましたフェイク広告を出し、興味を持った人をLINEのオープンチャットや非公開グループに誘導します。グループ内には「先生」と称する偽投資家や多数のサクラ(協力者たち)が待ち構えており、「私もこの方法で○○万円儲かりました!」などと成功談を次々投稿して被害者の信用を得ようとします。そして十分にその気にさせた段階で、「さらに儲けるには追加投資が必要」「利益を引き出すには手数料が要る」と言葉巧みに金銭を振り込ませ、最後は連絡を絶って持ち逃げするのです。まさにデジタル技術を駆使した劇場型の詐欺と言えるでしょう。

特にAIによるディープフェイク動画・音声の登場は衝撃的です。最近確認されたケースでは、実業家の堀江貴文氏や前澤友作氏などがまるで本人そっくりに喋っている偽動画がSNS広告に使われていました。映像と音声が本人に瓜二つだったため、一見しただけでは「まさか本人が宣伝しているのか?」と信じ込んでしまうほどです。もちろん実際にはAIで合成された偽物ですが、最新の生成AI技術ではわずか数秒~数分の肉声データから声の特徴を学習し、ほぼ本人と見分けがつかない偽の音声を作り出せてしまうといいます。米国ではこうした有名人の顔と声を盗用した詐欺が爆発的に増えており、日本でも今後さらに巧妙なAI詐欺が広がる恐れが指摘されています。有名人本人も被害拡大を黙って見過ごすことはできず、前澤氏や堀江氏らは自民党に対し偽広告の規制強化を訴えたり、米メタ社(Facebook運営)への法的措置を準備するといった動きを見せています。

このようにSNSとAI技術によって、投資詐欺はますます巧妙化・大規模化しています。被害は高齢者だけでなく若年層にも広がりつつあります。警視庁の統計では、2018年に全相談件数の27%だった30代以下の若者の投資詐欺被害割合が、2022年には30.9%まで上昇しました。SNS世代は知らない人とも抵抗なく繋がる傾向があり、「楽して稼ごう」「副業でお小遣い稼ぎ」などカジュアルな誘い文句で巧みに取り込まれるケースが増えています。実際「自分は投資なんてしていないから詐欺とは無縁」と思っている人ほど狙われやすいとも言われます。甘い誘いほど用心が必要——相手はあなたの油断につけ込んできます。デジタル時代の詐欺師たちは、あなたが「気付かないうちにひっかかっていた」と思わせるほど自然に近づいてくるのです。


“騙されないため”に身につけるべきリテラシー

被害に遭わないためには、私たち一人ひとりが投資に関する情報リテラシーとAIリテラシーを高めることが欠かせません。幸い、投資詐欺には共通するパターンやサインがあります。大切なお金を守るために、以下のポイントを日頃から意識しましょう。

⚫︎「必ず儲かる」「あなた限定」など断定的・誘惑的なセリフに要注意!
犯罪者は「絶対儲かる」「確実に利益が出る」「あなただけ特別に教える」といった甘い言葉で心を掴もうとします。将来の利益を断言する行為は金融商品取引法で禁じられていますし、まともな業者ならそんな表現は使いません。不確実な話を断定するセールストークや、「なぜ私にそんなおいしい話を?」と感じる勧誘は、まず詐欺を疑ってかかるのが鉄則です。

⚫︎金融庁に未登録の業者・怪しい暗号資産やアプリは即アウト!
投資話を持ちかけてきた会社や商品が、本当に実在するか確認しましょう。金融商品取引業者や暗号資産交換業者は金融庁に登録されている必要があります。登録業者かどうかは金融庁のウェブサイトで検索可能です。登録のない業者による勧誘は違法かつ極めて危険なので、絶対に取引してはいけません。また「この新しい暗号資産は必ず上がる」などと言われても、それが実在する暗号資産なのか、提示された投資アプリが正規のものかをネット検索でチェックしてください。検索しても出てこないような聞いたこともない名前なら、ほぼ100%詐欺だと考えましょう。

⚫︎振込先が個人名義?支払いの度に口座変更?それは罠!
投資金の振込を指示された口座が、銀行や証券会社ではなく個人名義だったり、送金の度に別の口座を指定してくる場合も要警戒です。通常、正規の投資取引で資金を個人の銀行口座へ振り込ませることはあり得ません。ましてコロコロ振込先が変わるようなら、まず間違いなく黒です。少しでも不審に思ったら、一人で悩まずすぐ警察や消費者ホットラインに相談しましょう。

⚫︎AI時代のフェイクを見破る目を持つ!
今やネット上の情報や映像・音声は簡単に捏造できる時代です。「有名人が勧めているから安心」ではなく、本物かどうかを疑う習慣を持ってください。例えばSNSに著名人の投資セミナー広告が出てきても、まず公式アカウントや公式サイトでそんな告知があるか確認しましょう。大物芸能人や経営者が「無料で絶対儲かる方法を教える」ことなど通常あり得ません。また動画や音声も鵜呑みにせず、不自然な点がないか注意深く見てみましょう。声や映像に微妙なズレがあればフェイクを疑う手がかりになります。AI技術の進化は日進月歩なので、「もはや偽動画も出回っている」前提で臨む心構えが重要です。

⚫︎第三者への相談・情報収集を怠らない!
儲け話を持ちかけられたら、その場で即決せず必ず一度立ち止まってください。そして家族や信頼できる知人に相談したり、自分でネット検索して同様の話で被害報告がないか調べましょう。特に「今だけ」「急いで」と契約を迫られる場合こそ要注意です。冷静な第三者の目で見ればおかしな点に気付けるかもしれません。また各都道府県警や消費生活センターなど相談窓口も活用しましょう。恥ずかしいことでは全くなく、自分の大切な資産を守るための賢明な行動です。

以上のポイントを念頭に置き、「おかしいな」「美味すぎるな」と感じたら、素直に疑う勇気を持つことが何よりの防御策です。自分の身は自分で守る——シンプルですが、投資の世界では誰もが肝に銘じるべき心得でしょう。


未来の投資家へのメッセージ

投資詐欺の手口は時代とともに変化し、巧妙さを増しています。しかしどんなに時代が変わろうとも、「楽して一気に大儲けできる魔法のような話」は存在しないし、そんな話を持ちかけてくる人こそ警戒すべき相手である点は不変です。大事なお金を増やすには地道な勉強と適切なリスクテイクが不可欠であり、「簡単に儲けたい」という心理のスキを詐欺師に付け入られないよう、自分自身を律することも求められます。

情報過多の現代だからこそ、“本物”を見極める目を養うことが一層大切になっています。投資家にとって「情報リテラシー」と「AIリテラシー」は生命線とも言えるスキルです。前者は金融商品の仕組みや市場常識を理解しリスクを判断する力、後者はデジタル上の情報の真偽を疑い検証する力です。これらは一朝一夕に身につくものではありませんが、日々ニュースや書籍に目を通したり、小さな投資から経験を積む中で培われていきます。学校教育や社会人向けセミナーでも、もっと金融リテラシー教育を充実させる必要があるでしょう。例えばインフレ率と金利の関係を知れば、「物価上昇率を大幅に超える利回りを謳う投資話はなぜ可能なのか?」と疑問を持つのが当然だと理解できるはずです。

最後に強調したいのは、「おかしいな」と思ったら一人で抱え込まず、必ず立ち止まって誰かに相談することです。たとえ知人からの紹介や信頼する人の勧めであっても、少しでも違和感があれば一度立ち止まる勇気を持ってください。未来の投資家である皆さんには、大切なお金と人生を守るために「まず疑ってみる」という健全な警戒心を是非持っていただきたいと思います。甘い話に流されず、自ら学び考える力を武器に、どうか安全で健全な資産形成への道を歩んでください。それが、これからのAI時代を生き抜く賢明な投資家への第一歩となるのです。


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