2025/06/24

暗号株も金鉱株も…そのレバレッジ投資、ちょっと待って!

最近、暗号資産(ビットコイン)や金(GOLD)など注目の資産で「もっと効率よく儲けたい」という欲が高まり、レバレッジ(てこ)を効かせた投資がブームになっているようです。たとえばビットコインの値上がりに便乗して、その代わりになる「暗号株」を信用取引で何倍もの資金を借りて買ってみたり、金価格の上昇を期待して「金鉱株」やオプション取引でハイリスク・ハイリターンを狙ったり…そんな動きが見られます。しかし、投資歴の長い私としては「ちょっと待って!」と声をかけずにいられません。確かにうまくいけば大きな利益を得られる可能性はありますが、その裏には見逃せないリスクが潜んでいるからです。

今回は、2025年6月現在話題の2つのケース──一つはビットコインの「代替株」として急騰するメタプラネット株、もう一つは金鉱株や金の派生商品によるレバレッジ投資――を取り上げ、それらに共通するリスクを解説してみます。「レバレッジって危なそうだけど魅力的…」と迷っている方はぜひ参考にしてください。



メタプラネット株:ビットコイン代替株に沸く個人投資家と巨大レバレッジ

まずは暗号資産の世界で起きている事例です。日本のメタプラネットという企業をご存じでしょうか?元々ホテル運営などを手掛けていた会社ですが、近年ビットコインの大量購入に舵を切りました。同社の株価が2025年に入って急騰し、時価総額は一時1兆円近くに達し、株価も2024年末比で5倍以上に膨らむ熱狂ぶりです。「ビットコイン代替株」として個人マネーが殺到し、大フィーバーとなりました。ビットコイン自体が足元で史上最高値圏まで上昇する中、メタプラネットはビットコインを次々と買い増しており、そうした積極姿勢が「ビットコインで大儲けする企業」という物語を盛り上げ、個人投資家の期待を煽っている面もあります。

しかし、この熱狂には危うい側面が隠れています。実はメタプラネット株の上昇には、個人投資家による信用取引(マージン取引)での買いが大きく影響しています。6月中旬時点で同株の信用買い残高は約1,900万株に達し、わずか2ヶ月あまりで約20倍に急増しました。信用買い残が積み上がった結果、売り方(空売り)の少なさも相まって信用倍率は約53倍という異常な高水準になっています。つまり、それだけ多くの個人が借金をしてメタプラネット株を買い込んでいるのです。

なぜここまで信用買いが膨らんだのでしょうか?背景にはメタプラネット株の「実質的なレバレッジ効果」があります。同社の株価は現在、保有するビットコイン価値(約1,550億円)の約6倍もの企業価値で取引されています。株価には「将来ビットコインがもっと上がるだろう」という期待が織り込まれているわけですが、それに加えて信用取引では証拠金の最大3.3倍まで取引可能です。保有資産の6倍の株価×信用倍率3.3倍=約20倍という計算になり、結果としてビットコインの値動きに対しておよそ20倍のレバレッジが掛かっている勘定になります。言い換えれば、ビットコイン価格が10%上がれば理論上メタプラ株は200%(3倍)上がるかもしれませんが、逆にビットコインが10%下がればメタプラ株は30%もの急落に見舞われかねないということです。

個人投資家がこれほどまで無理なレバレッジを求める背景には、制度上の理由もあります。日本ではビットコインを直接運用するETF(上場投資信託)が未だ認可されておらず、また暗号資産(仮想通貨)の証拠金取引は最大2倍までという規制があります。そのため「ビットコインで大きく勝負したい」と考える向きが、抜け道としてメタプラネット株に流れ込んだという面があるのです。さらに、日本の税制ではビットコイン売買益は総合課税の雑所得扱いで最大55%の税率がかかる一方、株式売買益は一律約20%の分離課税です。税金面でも有利なメタプラ株の方が「効率が良い」という思惑も、個人を引きつける要因となっているようです。

こうした状況に対して、市場の専門家からは強い警鐘が鳴らされています。メタプラネット株の株価形成は「ビットコイン価格が上昇し続けることが前提」になっており、特殊な需給要因で空売り勢が踏み上げられてきた経緯もあるため、一度下落に転じると脆い可能性が指摘されています。実際、前述のように信用買い残が膨張していますから、ビットコインの動向次第ではその投機マネーが一斉に利益確定やロスカットに走り、株価急落に拍車をかけるリスクがあります。まさにハシゴを外されるように、気づいた時には大きな損失が出かねないのです。夢のような20倍レバレッジの裏には、このような危うさが潜んでいる点を忘れてはいけません。


金鉱株・金ETF・金オプション:金で儲けたい人々のレバレッジ投資

ビットコインの次は、私たちの大好きな「金(GOLD)」に目を向けましょう。金は安全資産として長年親しまれていますが、その値動き自体は1日に1%上下すれば大きい方で、急騰急落はあまりありません。そこで「もっと金でハイリターンを狙えないか?」と考えた一部の投資家が注目したのが、金鉱株や金先物オプションといった金の派生商品です。

金鉱株とは、金の採掘・生産を行う鉱山会社の株式です。一見すると金そのものではなく「株式」なので異なるものに思えますが、実は金価格と連動しやすい性質があります。金の価格が上がれば金鉱企業の売上や利益が増えるため、その業績レバレッジで株価が上昇しやすいのです。特に採掘コストなど固定費を抱える金鉱会社では、金価格の上昇によって利益が倍増するケースもあり、それが株価に反映されやすくなります。実際、2025年に入ってから金価格も堅調でしたが、金鉱株はそれ以上に大きく上昇しました。アメリカ市場で取引されている代表的な金鉱株ETFであるGDX(ゴールド・マイナーズETF)は、年初来の上昇率が金価格の上昇率を大きく上回っています。さらに中小規模の鉱山株に分散投資するGDXJ(ジュニア・ゴールド・マイナーズETF)というETFもあり、一般に小規模なジュニア金鉱株は大手以上に金価格の影響を受けやすい(上がる時は大きく上がるが、下がる時も大きい)とされています。

しかし、金鉱株で得られるリターンの大きさは、同時に値動きの激しさ(ボラティリティ)が高いことを意味します。金価格が順調に上がる局面では金鉱株は「金の価格以上」に値上がりする半面、一旦金が下落局面に入れば金以上に急落する傾向があるのです。例えば、過去10年間(2015年~2025年)で金価格に連動する金ETF(GLD)と金鉱株ETF(GDX)に投資した場合を比べてみましょう。最終的なトータルリターンはほとんど同じだったにもかかわらず、金鉱株ETFの方は価格変動が非常に大きく、投資中には何度も深い谷(ドローダウン)を経験しました。一方、金ETF(現物ゴールド)の値動きは比較的穏やかで、最大下落幅もGDXの半分以下でした。下の図はこの両者のパフォーマンス推移を視覚化したものです。

画像
図:2015年から2025年にかけての金鉱株ETF(GDX、オレンジ線)と金ETF(GLD、黒線)のトータルリターン比較(配当込み)
最終的なリターンはほぼ同じ約+169%でしたが、途中の値動きの振れ幅はGDXの方が格段に大きく、最大で43.3%の下落を経験しています。金(GLD)は最悪でも20%程度の下落にとどまり、より安定した値動きであったことが分かります。このように、金鉱株は長期的に見てもボラティリティが高く、大きな利益の裏には常に大きなリスクが伴っていたのです。(引用: https://incomeshares.com/en-eu/insights/gold-vs-gold-miners-10-year-performance-comparison#:~:text=Standard%20deviation%20measures%20how%20much,experienced%20bigger%20peaks%20and%20troughs )


金鉱株以外にも、金価格にレバレッジをかける方法はいくつか存在します。代表的なのが金先物取引金CFD取引です。これらは証拠金(保証金)を口座に差し入れて、実際の金額以上の取引を行うデリバティブ取引になります。例えば金1オンス(約31g)が2,000ドルの場合、通常なら2,000ドル全額が必要ですが、CFDなら20分の1の証拠金(100ドル)で1枚の買いポジションを持つことができます。レバレッジ20倍のイメージで、大きな資金がなくても金価格の値動きで大きな利益を狙えるのは魅力に映るかもしれません。しかし、その分わずか数%の逆行であっという間に証拠金の大半を失ったり、強制ロスカット(自動決済)になったりする厳しさもあります。「ハイリスク・ハイリターン」という言葉の通り、当たれば大きい反面、外れれば甚大な損失となり得るのです。オプション取引も同様で、少ない資金で金価格の上昇・下落に賭けることができますが、オプションの満期までに思惑通りの価格変動が起きなければ、掛け金(プレミアム)はゼロになってしまいます。例えば「半年後までに金価格が○○円以上になる権利」を買うオプションでは、その期間内にそこまで上がらなければ権利は紙くず同然です。利益かゼロかという極端な世界で、まさにハイリスク・ハイリターンの代表でしょう。


共通するリスク:元本割れ・税制・流動性などに要注意

ここまで見てきたように、ビットコイン代替株であれ金鉱株であれ、レバレッジ投資には共通するリスクが存在します。主なポイントを整理してみましょう。

① 値動きの振れ幅(ボラティリティ)が大きいこと
レバレッジをかけることで、利益も損失も何倍にも増幅されます。価格が順調に上がっている間は良いですが、一度流れが変われば資産価値が急減し、元本割れどころか借金が残る恐れすらあります。実際、先ほど例に出したGDX(金鉱株ETF)は過去10年で最大43%下落した局面がありましたし、メタプラネット株も日々大きく乱高下する場面がありました。ハイリスク商品では、一晩で評価額が半分以下になるようなジェットコースター相場も珍しくありません。

② 信用取引(借金投資)のリスク
信用取引や先物取引では、証拠金維持率が一定以下になると強制ロスカット(自動決済)されてしまいます。レバレッジを極端に高くすると、「たった1~2%逆に動いただけ」でロスカットが発動し、気づけば資金が吹き飛んでいるという事態も起こり得ます。追証(追加の証拠金)の必要が生じれば、さらなる現金を口座に入れなければなりません。こうした事態は精神的な負担も非常に大きいものです。メタプラネット株でも信用買いの過熱が株価急落の下地となっていたことが指摘されています。このように借金による過剰なポジションは、一斉に解消されると相場に与える衝撃も大きく、結果的に自分自身の首を絞める(自ら暴落を招く)ことにもなりかねません。

③ 流動性リスク
レバレッジ投資が過熱した局面では多くの人が同じ方向に傾くため、ひとたび逆風が吹くと流動性が枯渇しがちです。売りたいのに買い手がつかず、希望より大幅に不利な価格でしか売れない、といった事態も起こり得ます。メタプラネット株のように空売りができない銘柄では特にその傾向が強く、下落局面でパニック的な投げ売りを誘発しかねないと指摘されました。金先物やオプションでも同様のリスクがあります。

④ 税制の違い・思わぬ落とし穴
投資で得た利益に対する税金も商品ごとに異なります。暗号資産の利益は累進課税で最大55%にもなる一方、株式や投資信託の利益は一律20.315%(復興特別所得税込み)です。この差はメタプラ株人気にも影響しました。ただし税制は将来変わる可能性もありますし、簡単に「税金が安いから得」とも言い切れません。金投資に関しても同様です。金地金の売却益は譲渡所得(総合課税)扱いで、5年超保有なら利益の1/2が課税対象になる優遇があります。一方、金ETFの売却益は株式譲渡益と同じ分離課税20.315%で、株式等との損益通算も可能です。それぞれ税のメリット・デメリットが異なるので、「思ったより税金が高くついて利益が残らなかった…」ということにならないよう事前に確認しておくことが大切です。

以上のように、レバレッジ投資には高いリターンの可能性と引き換えに、非常に大きなリスクが内在しています。特に値動きの荒い商品や信用取引による投資は、一種の「投機(ギャンブル)」と紙一重の側面があります。かつてプロの間では「レバレッジは諸刃の剣」とよく言われました。まさに使い方を誤れば、自分自身が大きな傷を負ってしまう刃物のようなものです。


金(GOLD)そのものに投資するシンプルで堅実な方法

それでは、「金で資産を守り増やしたい」と考える場合、どのような方法が堅実と言えるのでしょうか?答えはシンプルです。レバレッジをかけず、金そのものに投資することです。

具体的には、以下のような方法があります。

① 金地金や金貨を購入する
純金の延べ棒やコインを直接購入して保有する方法です。昔ながらのやり方ですが、自分の手元に実物資産が残る安心感があります。長期的に見れば金はインフレに負けにくく、そのもの自体に価値があるため、極端な暴落で紙くずになるような心配はほぼありません。ただし、保管場所の確保や手数料(購入時のプレミアムや売却時の手数料)には注意が必要です。

② 金ETFを活用する
証券会社の口座を通じて金価格に連動するETF(上場投資信託)を売買する方法です。日本でも東京証券取引所に複数の金ETFが上場しており、少額から手軽に売買できます。ETFであれば証券口座内で管理されるため保管の心配もなく、売買の都度、現物受け渡しをする必要もありません。税制面でも、金ETFの利益は株式同様に分離課税で20.315%です。特定口座を利用すれば確定申告も不要で、NISA口座を活用すれば一定額まで非課税で運用することもできます。金ETFには純金現物を裏付けとしたものと、先物を活用するものがありますが、一般には長期投資には現物裏付け型が安心でしょう(先物型は価格連動にズレが生じるリスクがあるため)。

③ 純金積立をコツコツ続ける
毎月一定額を積み立てて金を買い増していく方法です。証券会社や貴金属商社が提供する純金積立プランを利用すれば、月数千円程度から始められます。価格が高い時も安い時も定額で買うことで平均購入単価を平準化できるため、長期的な資産形成に向いています。売却益に関しては、金地金同様に年間50万円までは非課税(特別控除)で、超える部分は総合課税となります。ただし長期でコツコツ積み立てれば、一度に大きな利益が出るというよりは資産を少しずつ移していくイメージなので、大きな税負担が発生しにくいメリットもあります。

④ 金関連の投資信託や純金型年金商品
直接金現物を買う以外にも、金価格に連動する投資信託や保険・年金商品なども市販されています。手数料や流動性など商品性は様々ですが、「貯蓄と保険を兼ねて金に分散しておく」という選択肢も考えられます。ただし仕組みが複雑な商品もあるため、内容をよく理解してから活用しましょう。

以上の方法に共通するのは、レバレッジをかけずに金そのものの価値上昇(あるいは価値維持)を狙うという点です。派手さはありませんし、一攫千金とは無縁かもしれません。しかし、その分大切な元本を極端に失うリスクも小さいのです。金は長期的に緩やかに価値を高めてきた実績がありますし、不況時の保険にもなってくれます。「堅実に資産を守り育てる」という本来の目的を考えれば、やはり王道のやり方ではないでしょうか。


まとめ

レバレッジ投資のブームに乗って大きな利益を狙いたい気持ちは、投資家であれば誰しも抱くものです。私自身、若い頃にハイリスクな商品に飛びついて痛い目を見た経験があります。(FX投資デビューにて15分で数千万円損失を出しました笑)だからこそ今、声を大にしてお伝えしたいのです。「レバレッジ投資には慎重になってください」と。

ハイリスク商品は刺激的で、一時的には大きな利益が出ることもあるでしょう。しかしその影で、コツコツ積み上げてきた資産を一瞬で失う危険が常につきまといます。たとえ儲け話を耳にして焦る気持ちが出てきても、どうか立ち止まって冷静にリスクと向き合ってみてください。今回お話しした事例やリスクのポイントが、皆さんの判断のヒントになれば幸いです。

金(GOLD)は一夜にして輝くものではありません。しかし時間をかけて大切に育てれば、きっとあなたの資産をしっかり照らしてくれるはずです。欲張らず、焦らず、堅実な金投資を楽しんでください。参考になれば幸いです。


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