6月中旬の米国市場では、株価が上昇し原油価格が低下するという、一見落ち着いた動きが見られました。イスラエルとイランの軍事衝突が「より広範な戦争には発展しない」との見方から、投資家心理が安堵したためです。一部報道では中東の混乱が「6週間で終了」するという楽観的な声も聞かれ、市場には安心感が広がっています。しかし、こうした楽観シナリオには大きな落とし穴があります。特に注目すべきは「海上封鎖」のリスクです。もしホルムズ海峡などで海上封鎖が起これば、状況は一変しかねません。現在の市場環境に潜むリスクと戦略を5つのポイントに沿って一緒に見ていきましょう。
・最大の地政学リスク:「海上封鎖」に備えよ ・6月中は動かず静観が賢明 ・7月は「投資を始める時」ではなく「判断できる時」 ・株価は堅調に見えても…割高な米国株はギャンブル化? ・金(GOLD)市場にも表れる市場の不安定さ ・まとめ ・書籍紹介
最大の地政学リスク:「海上封鎖」に備えよ
中東情勢における最大の懸念材料は、石油輸送の要所であるホルムズ海峡の封鎖です。現在、市場は「イスラエルとイランの衝突が他国を巻き込まない限り大きな影響はないだろう」という見方をしています。確かに、現状では紛争が限定的に収まるとの楽観論が優勢で、原油市場も落ち着きを取り戻しています。しかし、この前提は非常に脆いものです。もし情勢が予期せぬ形で悪化し、イランなどがホルムズ海峡を封鎖するといった事態になれば、これは市場にとってゲームチェンジャーとなります。
ホルムズ海峡は、中東の産油国が世界へ原油を出荷する生命線です。その狭い海路を1日に約1,700万バレル(世界消費の20~30%)の原油が通過しており、他に代替手段はほとんどありません。言わば世界の石油の動脈です。この動脈が塞がれてしまえば、原油供給が途絶し、価格は急騰するでしょう。実際、マーケット関係者からは「原油価格の急騰によってインフレが加速すれば、S&P500指数は現在の水準から10%以上下落する可能性がある」との指摘も出ています。株式市場にとって、原油高・インフレ高進は急ブレーキになり得るのです。
「6週間で終わるだろう」という楽観的な観測は、確かに耳障りは良いものです。しかし、私は最悪のシナリオにも目を向けることの重要性を強調したいと思います。かつてない地政学リスクが潜む今、海上封鎖という最悪のケースにも備えておく必要があります。ホルムズ海峡封鎖ともなれば、市場心理は一夜にしてリスクオフに傾き、現在の平穏は蜃気楼のように消え去るでしょう。「もしもの場合」を常に意識し、過度な楽観に流されない慎重さが求められます。
6月中は動かず静観が賢明
現在(2025年6月中旬)は、不透明要因が多く、積極的に相場に手を出すべき時期ではありません。私自身、『DEVOTION GOLD CLUB(小川運営のオンラインサロン)』のメンバーの方々には「6月いっぱいは静観しましょう」とお伝えしています。その理由は幾つかあります。
まず、主要イベントの結果がまだ出揃っていないことです。例えば、G7首脳会議が6月17日まで開催されましたが、今回は共同声明の発表が見送られるなど不透明感が残りました。特に米国(トランプ政権)の主張もあって各国の足並みが揃わず、会議は議論百出の状態だったようです。国際協調の行方が見えない状況では、市場も方向感を掴みづらくなります。
さらに、米国の貿易政策(関税交渉)の行方も定まっていません。トランプ大統領は強硬な関税措置を次々と打ち出し、市場にサプライズを与えてきました。4月には「相互関税」の詳細発表で市場を揺るがす場面もあり、その影響でボラティリティ(変動率)が高まった経緯があります。このように、米国と貿易相手国の駆け引きは投資家心理に直結しています。しかし6月現在、その交渉の結果は読めません。もしかすると関税引き下げに向かうのかもしれませんが、逆に新たな関税発動というリスクも残っています。まさに霧の中で運転しているようなもので、ここで焦って動くのは得策ではないでしょう。
以上のように、6月は「静観」がキーワードです。無理に波風立つ海に漕ぎ出す必要はありません。潮目が変わるのを岸辺で待つくらいのゆとりを持ちましょう。大きなイベントの結果や交渉の行方が判明し、波が穏やかになるまで待つことが、リスクを抑え資産を守る賢明な戦略です。
7月は「投資を始める時」ではなく「判断できる時」
「6月は待機、では7月からすぐ投資再開!」…と考えるのは早計かもしれません。私がお伝えしたいのは、7月が「新たなスタートの合図」ではなく、「状況判断が可能になるタイミング」だということです。
7月に入れば、前述した不透明要因のいくつかに決着や方向性が見えてきます。G7後の各国の政策方針や、米国の関税交渉の結果が少しずつ明らかになるでしょう。また、米国企業の4~6月期(第2四半期)決算発表も7月中旬以降に本格化します。これらは市場の健康診断結果のようなもので、景気の実態や企業業績の傾向が見えてきます。いわば7月は「市場の通知表」が手に入る時期なのです。
しかし、通知表を見てからが本当の考え所です。仮に情勢が安定し始めたとしても、それは「今すぐ全力で買い出動せよ」という意味ではありません。むしろ7月は、6月まで揃わなかった材料が出揃い、ようやく冷静に状況分析ができる段階に過ぎません。例えば、ホルムズ海峡の危機が回避されたか、各国の政策協調が保たれたか、企業業績は予想通りか――こうしたポイントを確認し、自分なりの投資判断を下せるようになるのが7月なのです。
初心者の方には、「7月=投資再開の号砲」と短絡的に捉えないでほしいと思います。むしろ「7月=情報が揃い、判断材料が出揃う時」と考えてください。そして、状況によってはさらに様子を見ることも選択肢に入れましょう。一度逃した投資チャンスは、また次の機会が巡ってくるものです。慌てず、焦らず、自分で納得できる状況になるまで待つ――これも立派な戦略です。7月は、そんな心構えで臨むことをおすすめします。
株価は堅調に見えても…割高な米国株はギャンブル化?
最近の米国株式市場は一見すると堅調そのものです。主要株価指数は高値圏にあり、「強いなぁ」と感じてしまうかもしれません。しかし、数字の裏側を覗いてみると、違った風景が見えてきます。実は今、米国株はかなり割高な水準にあります。
具体的に指標で見てみましょう。株価収益率(PER)を見ると、S&P500指数の予想PERは今年初めに約22倍と歴史的高水準に達しました。直近では21倍弱とわずかに低下したものの、長期平均の約15.8倍と比べれば依然としてかなり高い水準です。「利益に比して株価が高すぎる」状態であることは否めません。
一方で、経済の先行きには減速の兆しが出ています。米国の2025年の経済成長率は大幅な鈍化が予想されていますが、ウォール街(市場)はそれを織り込んでいないかのように振る舞っています。株価とバリュエーション(評価)は過去最高水準からわずかに下がっただけで、依然として強気の企業利益予想が維持されているのです。「企業業績は今後も過去最高益を更新し続ける」という楽観が支配的ですが、これは現実とかけ離れている可能性があります。実際、足元では米国の消費者マインドも冷え込みつつあり、消費者信頼感指数は4年ぶりの低水準、期待指数に至っては12年ぶりの低さに落ち込んだとの報告もあります。景気の陰りを示すシグナルが出ているにもかかわらず、市場がそれを直視していないように見える点は大いに気がかりです。
このように、米国株式市場は今「高い期待と不透明感」という相反するものが同居している状態です。著名な機関投資家は「2025年に株式市場は高い期待を伴う割高な水準で突入し、現在は不確実性に見舞われている。これらは両立しない」と警鐘を鳴らしています。まさに私も同感で、現在の米国株はファンダメンタルズ(基礎的条件)を無視したギャンブル的な様相すら帯びていると感じます。これだけ割高で、景気減速や業績悪化のリスクがちらつく中で飛び込むのは、カジノで大金を賭けるようなものかもしれません。
投資とギャンブルの違いは、期待値と再現性にあります。安定した経済成長や堅実な企業利益に裏打ちされた株価上昇は「投資」です。しかし今のように、根拠薄い楽観に乗っかって「誰かが買っているから自分も…」と参入するのは「ギャンブル」に近い行為です。特に初心者の方には、このタイミングで無理に米国株に飛び乗ることはおすすめできません。長期的な資産形成を目指すのであれば、無理に高値掴みをせず、もう一度足元の状況を見直しましょう。
金(GOLD)市場にも表れる市場の不安定さ
最後に、金(GOLD)市場の動きにも触れておきます。金は伝統的に「安全資産」「価値の保管庫」として、市場が不安定なときに資金が集まりやすい資産です。実際、ここ最近の金価格には市場の不安心理が色濃く反映されています。
例えば、中東リスクが急浮上した先週、金現物価格は週で3.7%も急騰しました。イスラエル・イラン間の緊張が高まったことに加え、「トランプ大統領の関税政策が世界経済を減速させる」との見方が広がったことで、安全資産である金への需要が一段と増えたためです。4月には金価格が史上最高値を付けており、6月16日時点でもそのピークから僅か110ドル下回る程度、ほぼ最高値圏にあります。足元では一時的に調整で下落する局面も見られましたが、それでも年初来で約30%高という驚異的な上昇を記録しています。
この金の強さの背景には、各国中央銀行の動きもあります。中央銀行が外貨準備の一部をドルから金にシフトしていることが金価格押し上げの一因となっています。つまり国レベルでも「不透明な時代に備えて金を持っておこう」という動きがあるわけです。また市場でも、「金は安全資産として非常に良好なパフォーマンスを示しており、多くの投資家が長期的に米国債から金に資金を移している」との指摘があります。米国債よりも金を選好する投資家が増えているというのは、裏を返せばそれだけ先行きへの警戒感が強まっているということなのでしょう。
金価格は現在でも最高値付近にありますが、仮に中東情勢がさらに悪化したり、他のリスク(例えば金融市場の急変動や世界景気の失速)が台頭すれば、金はさらに一段高になる可能性もあります。実際、専門家からは「地政学的な緊張が一段と高まれば、金価格はさらに押し上げられるだろう」との見方も出ています。金が上がる局面というのは、裏を返せば他の市場が不安定な局面でもあります。まさに現在の金市場の動きは、投資家たちが感じている不安定さのバロメーターと言えるでしょう。
資産保全の観点からも、金への関心は今後ますます高まるかもしれません。不測の事態に備え、ポートフォリオの一部に金を組み入れておくことはリスクヘッジの一策です。もちろん金価格も変動しますが、通貨価値が揺らぐ局面やインフレが進行する局面では、その価値の堅さが際立ちます。荒波の中で頼りになる救命ボートのような存在が金なのです。
まとめ
以上、5つのポイントを中心に現在の市場を考察してみました。今はマーケットの表面上の落ち着きに油断せず、冷静かつ戦略的なスタンスを保つことが大切だと考えます。例えるなら、嵐の前の静けさの中で空模様を注意深く読む気象予報士のように、市場の兆候を見逃さず、自分の資産を守る行動をとることです。
繰り返しになりますが、6月はあえて動かず守りを固める時、そして7月以降は状況を見極めてから攻めるか判断する時です。幸いなことに株式市場は常に機会を提供してくれます。焦らずに備え、そしてチャンスが来たら動けば良いのです。地政学リスクや過熱感に対する十分な注意を払いながら、皆さんの大切な資産をしっかりと防衛していきましょう。
最後に、マーケットは生き物です。状況は日々変化します。DEVOTION GOLD CLUBでは、引き続き最新の情報と洞察を皆さんに提供し、共にこの不透明な時代を乗り越えていければと思います。「備えあれば憂いなし」――この言葉を胸に、引き続き健全な投資活動を心がけていきましょう。