2025/05/30

NTTとSBIホールディングスの資本提携で広がる投資の未来

2025年5月29日(木)、日本を代表する通信企業NTTと、ネット金融大手のSBIホールディングスが資本業務提携を発表しました。NTTは約1,100億円を投じてSBIホールディングス株式の約9%(8.18%)を取得し、両社は金融と通信の融合に向けて広範な協業を進める計画です。具体的には、NTT傘下の携帯電話会社であるNTTドコモがSBIホールディングス傘下のネット銀行「住信SBIネット銀行」を子会社化することも含まれています。この提携によって、通信と金融という二つの世界を文字通り“手を組ませる”壮大な試みがスタートしました。

今回の提携は一見むずかしそうに聞こえますが、やさしく言えば「スマホ会社(NTTドコモ)が銀行(SBIのネット銀行)や投資会社(SBI証券など)と仲良くなって、一緒に新しいサービスを作ろうとしている」ということです。携帯電話会社と銀行が組むなんて不思議な感じがしますが、背景にはスマホ決済やポイントサービスなど通信と金融の境界が薄れてきた流れがあります。ライバルのソフトバンクやKDDI(au)もそれぞれ自社の金融サービスを強化しており、NTTドコモも負けじと銀行や証券への参入を進めてきました。今回のNTTとSBIの提携は、その集大成とも言える動きであり、今後私たちの投資やお金の扱い方にも影響を与えそうです。

では、この提携によって具体的にどんな変化が期待できるのでしょうか?

キーワードの一つが「セキュリティトークン」です。

聞き慣れない言葉かもしれませんが、実はこの新しい仕組みが、NISA(少額投資非課税制度)を利用する株式投資家や金(GOLD)投資家にとってもうれしいメリットをもたらす可能性があるのです。



通信と金融が手を組むとどうなる?

NTTとSBIがタッグを組む目的は、単にお互いの事業領域を広げるだけではありません。両社はデジタル技術と金融サービスの統合によって、新しいサービスや価値を生み出そうとしています。たとえば、NTTドコモは全国に数千万規模の携帯電話ユーザーがおり、大人気のdポイント(ドコモのポイントサービス)も運用しています。SBIはネット証券やネット銀行で培った金融ノウハウがあります。この二社が連携すれば、「スマホで簡単に投資」や「ポイントで投資信託を購入」といったサービスが現実味を帯びてきます。

実際にNTTドコモは、昨年ネット証券のマネックス証券を傘下に迎え、ドコモのアカウントと紐付けてポイントが貯まったり、ポイントを使って投資信託を購入できるようになりました。スマホ決済で買い物する感覚で投資ができたら、初心者にとってハードルがぐっと下がりますよね。

NTTとSBIの協業でも、こうした利便性向上が期待されています。例えば、将来的にドコモのスマホアプリ上で銀行残高の確認から株式・投資信託の購入、さらにはデジタル証券(セキュリティトークン)の取引までワンストップでできるようになるかもしれません。通信インフラやスマホの技術力を持つNTTと、金融商品の幅広さを持つSBIが力を合わせれば、場所や時間にとらわれない新世代の金融サービスが生まれそうですね。

こうした新サービスの中心に据えられているのがセキュリティトークンという新しい仕組みです。では、セキュリティトークンとは一体何なのでしょうか?


セキュリティトークンってなに?

最近ニュースなどで「◯◯社がSTO(Security Token Offering)を実施」などと耳にすることが増えてきました。このセキュリティトークン(Security Token、略してST)とは、簡単に言うとブロックチェーン技術を使ってデジタル化した有価証券のことです。少しかたい表現ですね。もう少しかみ砕いて説明しましょう。

従来、株式や社債といった証券は紙や電子データで管理され、証券会社を通じて取引されます。これに対しセキュリティトークンは、暗号資産(仮想通貨)にも使われているブロックチェーン(分散型台帳)という新しい技術を活用して発行されるデジタル証券です。ブロックチェーンはみんなで取引記録を共有・管理する仕組みで、不正な改ざんが極めて難しく高い透明性があります。言ってみれば、「みんなで見張り番をしているオンライン金庫」に証券の情報を記録するイメージです。そのため、セキュリティトークンは透明性が高く、安全で、さらに紙の証券と違ってネット上で即座に送金・取引できる利点があります。

もう一つ、セキュリティトークンの大きな特徴は小口投資がしやすいことです。ブロックチェーン上で権利を細かく分けて扱えるので、一つ数億円もするような不動産や、美術品、さらには金(GOLD)などこれまで一部の富裕層しか直接投資しにくかった資産にも、一般の人が数万円・数千円といった単位から投資できる可能性が広がります。例えば「ビル一棟を買う」のは普通の人には無理でも、そのビルを1000口のセキュリティトークンに分ければ「ビルの1000分の1を購入する」という形で少額から不動産投資ができる、というわけです。

夢のようですが、技術的にはもう可能であり、法律の整備も進んでいます。日本では2020年に金融商品取引法が改正され、セキュリティトークンは正式に有価証券として位置づけられました(専門的には「電子記録移転権利」という分類が新設されました)。その結果、この新しい仕組みを使った資金調達(STO)が法的にできるようになり、金融業界でも注目が高まっています。

要するに、セキュリティトークンとは「インターネット上で売買できるデジタルな証券」であり、少額から色々な資産に投資できるチケットのようなものです。では、このセキュリティトークンは実際にどのように使われ始めているのでしょうか?


すでに始まっているセキュリティトークン活用例

セキュリティトークンという言葉を聞くと「なんだか未来の話?」と思うかもしれませんが、実はもう日本でも活用が始まっています。例えばSBIホールディングスはこの分野の先駆け的な存在で、2020年には自社の子会社であるSBIeスポーツの株式をセキュリティトークンとして発行し、個人投資家に販売しました。また2021年4月には、SBI証券自らが発行体となり、ブロックチェーン上で社債(SBI証券の社債)を発行するSTOを実施しています。この社債型セキュリティトークンは発行総額1億円と小規模でしたが、日本初の一般投資家向けSTOとして話題になりました。利率0.35%の1年債でしたが、購入者には金利とは別に仮想通貨XRP(リップル)がおまけとして配布されるというユニークな試みも行われています。従来の社債にはないデジタル時代ならではのサービスですよね。

他にも、不動産の小口化にセキュリティトークンを使う例も出てきました。日本でもある不動産会社が、都内の物件を小口化して投資家に募集する際にブロックチェーンを活用し、約2億円規模の不動産ファンド持分をトークン化しています。これにより、従来は数百万円以上必要だった不動産投資が数十万円単位から可能となり、より幅広い投資家を募ることに成功しました。

また、大手銀行の三菱UFJ信託銀行(MUFG)が中心となって「Progmat(プログマ)」というデジタル証券の発行・管理基盤が立ち上げられ、SBIやNTTデータも参画して国内インフラの整備が進んでいます。金融大国スイスのSIX(証券取引所グループ)やドイツのシュトゥットガルト証券取引所ともSBIは提携しており、世界的にもセキュリティトークン市場の整備に積極的です。

このように着実に事例が増えてきたセキュリティトークンですが、NTTとSBIの提携によってさらに普及が加速する可能性があります。なぜなら、NTTの技術力や顧客基盤と、SBIの金融商品ノウハウが合わされば、「セキュリティトークンを使った新しい投資サービス」を大規模に展開できるからです。例えば、将来的にNTTドコモのスマホアプリで「新発売のデジタル社債」や「不動産トークン」の販売が通知され、ワンタップで購入、といったことも夢ではありません。携帯電話料金の支払いと同じ感覚で、デジタル化された証券に投資できる世界が来るかもしれないのです。

では、そうした未来が訪れると、私たちNISA投資家や金投資家には具体的にどんなメリットがあるのでしょうか?


NISA投資家にとってのメリット

NISA(少額投資非課税制度)を利用している皆さんにとって、一番の関心事は「安心して少額から投資できる環境がもっと良くなるか」ですよね。NTTとSBIの提携、およびセキュリティトークンの普及は、まさにこの点でメリットをもたらしそうです。

まず第一に、投資商品の選択肢が広がる可能性があります。セキュリティトークンによって株式や債券だけでなく、不動産や社債、さらには新興企業への投資案件など、これまで一般投資家には手が届きにくかった商品にも少額から参加できるようになります。NISAは年間の投資枠が決まっていますが、その範囲内でより多様な資産に分散投資できるのは魅力的です。例えば、NISA口座で「デジタル社債」を買ったり、「地域のインフラ事業へのトークン投資」に参加するといったことが、将来は当たり前になるかもしれません。

第二に、投資の手軽さ・利便性が向上します。NTTとSBIの協業によって、ドコモのスマホアプリなどからワンクリックで投資商品を買えるようなサービスが期待されます。現在でもスマホ証券やポイント投資など手軽なサービスはありますが、通信会社の持つ巨大な会員基盤(ドコモユーザー)と連携することで、より多くの人々が投資を始めやすくなるでしょう。たとえば「携帯料金の支払いと一緒に毎月1,000円を投資に回す」といった設定も考えられます。これは投資をつみたて貯金のように生活の中に溶け込ませるアイデアですね。

第三に、市場全体の活性化による恩恵です。NISA投資家が増え、市場の参加者が広がると、株式市場や債券市場の流動性(売買の活発さ)が増します。NTTとSBIの取り組みでセキュリティトークン市場が育てば、新規参入の投資家が増え、市場全体が盛り上がるでしょう。その結果、有望な企業が資金を集めやすくなったり、私たち投資家も魅力的な投資先に出会える機会が増えるかもしれません。「投資は一部の限られた人のもの」から「誰にでも開かれたもの」へと変わっていく流れは、NISAの理念ともマッチしています。

NISAはもともと「投資の裾野を広げる」ための制度ですが、NTTとSBIの協業やセキュリティトークンの拡大は、その裾野をさらに大きく押し広げる追い風となるでしょう。証券会社の窓口に行かなくても、スマホひとつで様々な資産に投資できる時代が目前に来ているのです。


金投資家にとってのメリット

では金(GOLD)に投資している方々にとって、この流れはどんなメリットがあるでしょうか?金は「実物資産」として昔から人気がありますが、一方で保管や売買の手間がかかる面もありました。セキュリティトークンやデジタル金融の発展は、金投資にも新風を吹き込みそうです。

一つ目のメリットは、金への投資がより手軽になる可能性です。例えば将来、金の現物を裏付けとしたデジタル資産(ゴールド連動型のセキュリティトークン)が登場すれば、スマホでそのトークンを売買するだけで間接的に金を保有できるようになります。すでに世界では1トークンで1オンスの金を表す「トークン化ゴールド」が出始めており、ブロックチェーン上で24時間取引されています。日本でもNTTとSBIが取り組むWeb3(分散型ウェブ)やデジタル資産の分野で、金をトークン化するサービスが考えられます。そうなれば、金の延べ棒を保管庫に入れておく代わりに、スマホの中の「ゴールド・トークン」を持つだけで済み、必要なときにすぐ売却して現金化する、といった柔軟な運用が可能になります。

二つ目のメリットは、資産運用の幅が広がることによる間接的な恩恵です。セキュリティトークン市場が活発になると、投資家全体の母数が増え、市場が多様化します。そうすると、株や債券だけでなく金などコモディティ(商品)にも資金がバランスよく流れるようになるかもしれません。一般に「リスク分散」の考え方が普及すれば、「株式が好調なときは金は守りに、株式が不調なときは金に期待」という具合に、金の持つ安定資産としての価値が再認識されるでしょう。NTTとSBIの提携によって金融リテラシー向上や投資の裾野拡大が進めば、金もその中でポートフォリオの一角を担う重要な資産として位置づけられ、これまで金に興味のなかった層にも金投資の魅力が伝わるかもしれません。

さらに、NTTとSBIが協力して新しい金融サービスを作る中で、例えば「デジタル金地金サービス」のようなものが出てくる可能性もあります。ユーザーがスマホアプリ上で気軽に金を買い、NTTやSBI系列の信託銀行がその分の金現物を安全に保管してくれる、といったサービスです。これは従来の純金積立にも似ていますが、ブロックチェーン技術を使えばより透明性が高く、低コストで提供できるかもしれません。金投資家にとって、信頼できる大手企業がバックについたデジタル金サービスがあれば、現物を自分で保管する不安からも解放されますね。


これから広がる投資の裾野

NTTとSBIホールディングスの資本提携を中心に、セキュリティトークン時代の幕開けについて見てきました。通信と金融の融合によって、私たちの投資環境はますます身近で便利なものへと進化しようとしています。セキュリティトークンはその象徴であり、難しく感じられるかもしれませんが、本質は「誰もが少額から多彩な資産に投資できるようにする魔法の鍵」のようなものです。

もちろん、新しい仕組みにはリスクや課題も伴います。デジタル資産のサイバーセキュリティや、万一のトラブル時の保証、価格変動リスクなど、投資である以上は注意点もあります。しかし、日本を代表するNTTとSBIが本格的に手を組んだことで、国全体でこの分野を育てていこうという機運が高まっているのは確かです。投資が特別な人のものではなく、日常の延長として当たり前になる未来が近づいているのかもしれません。

最後にもう一度、今回のテーマを振り返ってみましょう。NTTとSBIの提携は単なる企業同士の話ではなく、私たち個人の資産運用にも大きな恩恵をもたらす可能性があります。セキュリティトークンを中心とした新たなサービスによって、株式投資や金投資がより身近で便利になり、これまで以上に多くの人が投資の世界に参加できるようになるでしょう。投資の裾野が広がることは、私たち投資家にとって良いことですね。


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