今回は「トランプ氏の関税政策のおかげで、歴史上稀に見る爆上げ相場がやってくる」という視点で見ていきましょう。
関税政策が株式市場にプラスに働くという前提でまとめてみます。(「悪影響視点」はこちらをご覧ください。)
トランプ氏の関税政策(2025年現在)
トランプ氏は「アメリカ第一主義」のもと、海外からの安価な輸入品に高関税を課す政策を推進しています。特に中国などとの貿易赤字削減や国内雇用確保を目的に、2018年以降、大規模な追加関税措置を次々と導入しました。例えば、中国からの輸入品の多くに追加関税を課し、鉄鋼製品には25%、アルミニウム製品には10%の関税を課す措置を実施しました。2025年に入りトランプ氏が大統領職に復帰すると、これら関税は更に強化されています。2025年1月には、「半導体、医薬品、鉄鋼、アルミニウム、銅、軍需品など重要物資に近く新たな関税を課す計画がある」と表明しました。また同年2月には、これまで例外を設けていた鉄鋼関税を撤廃して全ての鉄鋼輸入に一律25%の関税を適用し、アルミ関税も従来の10%から25%に引き上げました。トランプ氏は「関税こそが米国内への工場誘致を促すインセンティブになる」と述べており、関税によって海外企業が米国に生産拠点を移すことまで狙っています。
以上が2025年現在におけるトランプ氏の関税政策の概要です。
要約すると、
- 中国をはじめとする輸入品へ大幅な追加関税を課し、貿易赤字の是正と国内産業保護を図る。
- 鉄鋼やアルミなど基幹素材に高関税(鉄鋼25%、アルミ25%など)をかけ、海外からの安価な流入を抑制。
- 重要産業(半導体・医薬品など)にも関税対象を拡大し、海外依存度を下げつつ国内生産を奨励。
こうした強力な関税政策が米国株式市場にどのような影響を与えるのか、次に5つのプラス効果を見ていきましょう。
関税政策が株式市場に与える5つのプラス影響
トランプ氏の関税政策は批判も多い一方で、「実は株式市場にプラス効果をもたらす」とする見方もあります。ここでは、その代表的な5つのポジティブな影響について見ていきましょう。
1. 国内産業の活性化と大型投資の誘発
高関税によって海外製品との価格差が縮まるため、米国内の産業が有利になり生産が活発化します。輸入品が減れば、その分を国内企業が生産する必要があり、結果として国内工場の増設や設備投資が促されます。実際、鉄鋼関税の導入後には米国内で製鉄所の新設・拡張計画が相次ぎました。2018年以降、米国の鉄鋼メーカー各社は設備新設・刷新に157億ドル以上の投資計画を発表し、少なくとも3,200人の新規雇用創出が見込まれました。また鉄鋼大手5社(ニューコア、USスチール、クリーブランド・クリフス等)は2017~2019年の間に年間設備投資額を15億ドルから42億ドルへと倍増させています。このように関税政策は国内産業への再投資を促し、設備投資や雇用の増加につながりました。産業の活性化は地域経済にも波及し、例えば鉄鉱石産地の米ミネソタ州では関税が「地元経済を押し上げた」と評価されています。国内企業の事業拡大は中長期的に株価の押し上げ要因となり得ます。
2. 関連企業の株価急騰(保護産業の恩恵)
関税によって直接恩恵を受ける業種の企業は、業績改善期待から株価が急上昇しやすくなります。輸入品に対する課税で競争が緩和され、自国企業がシェア拡大・価格転嫁しやすくなるためです。例えば、2025年2月にトランプ大統領が鉄鋼・アルミの関税強化を発表した際、米国の鉄鋼株が軒並み急騰しました。クリーブランド・クリフス(鉄鋼大手)の株価は発表翌営業日に一日で約18%も急伸し、USスチールも5%近く上昇、ニューコアも6%近い上げを記録しています。このような劇的な株価上昇は、投資家が関税政策による恩恵を織り込んで関連銘柄を買い進めた結果と言えます。また、貿易摩擦局面では米国内需要中心の小型株が有利になる傾向も指摘されています。事実、2018年の米中貿易摩擦下では小型株指数のラッセル2000が年初来+10%超の上昇を示し、同時期のS&P500(+6%程度)を上回るパフォーマンスを見せました。このように、関税で守られる業種や国内志向の企業は株式市場で買われやすくなり、結果として関連銘柄・セクターが大きく値上がりする可能性があります。
3. 雇用増加と景気押し上げ効果への期待
関税による国内生産の振興は、雇用拡大と賃金上昇にもつながります。工場がフル稼働し、新規投資で設備が増えれば人手が必要になるためです。実際、トランプ政権の関税導入後、鉄鋼・アルミ業界では数千人規模の雇用が生まれ賃金も上昇したとの報告があります。雇用が増え所得が向上すれば、消費も活発化し景気全体の押し上げ要因となります。こうした好循環への期待から、投資家が将来の企業業績や経済成長を楽観視し株式市場のセンチメント(心理)改善につながることが考えられます。実際に2024年の研究では、トランプ政権の関税措置が米国経済を底堅くし、製造業の国内回帰(リショアリング)を促したと結論付けています。またトランプ氏自身、関税収入をインフラ投資や減税財源に充てる構想も示唆しており、そうした政策期待も相まって「関税→景気拡大→株高」のシナリオが意識されることになります。
4. 貿易赤字の縮小と国家経済の安定
高関税は輸入の抑制につながるため、貿易赤字の縮小や戦略物資の自給率向上といった効果も期待されます。実際、トランプ政権下で大規模関税措置が取られた結果、米国の鉄鋼・アルミ輸入量は2016年比で約3分の1減少しました。また米国際貿易委員会(USITC)の分析によれば、トランプ関税により中国からの輸入が減少し、その分アメリカ国内での生産が増加したことが確認されています。輸入削減はそのまま貿易収支の改善に寄与し、国家経済の安定度が増す要因です。例えば中国からの安価な製品に依存しすぎなくなることで、サプライチェーン断絶リスクの低減や安全保障上の強みにもつながります。国家経済が安定すれば通貨や金利の急変動リスクも和らぎ、中長期的に企業活動がしやすい環境となります。こうした土台の強化は投資家にも安心感を与え、結果的に株式市場にプラス材料を提供すると考えられます。
5. 投資家心理の改善と株式市場全体の底上げ
トランプ氏の強気な経済政策(減税や規制緩和も含む)により、市場参加者の間で「米国経済は成長軌道に乗る」との信頼感が醸成されてきました。関税政策もその一環として「政府が自国企業を守ってくれる」という安心感を与える側面があります。事実、トランプ政権下の米国株式市場は全体として堅調でした。貿易戦争への不安から途中乱高下はあったものの、最終的には株価指数は高値を更新しています。例えば2019年末、米中が貿易交渉で第一段階の合意に至るとの期待が高まる中、ダウ平均・S&P500・ナスダック総合指数はいずれも過去最高値を更新しました。S&P500指数は2019年通年で約28.6%上昇し、1997年以来の好成績を収めています。これは関税政策による一時的な逆風があっても、企業収益全体は成長を続け投資家の楽観ムードが維持されたことを意味します。加えて、関税の影響で景気に不透明感が生じた際、中央銀行(FRB)が金利引下げなど金融緩和策を行う可能性も高まります。実際2019年には貿易摩擦の影響を懸念してFRBが利下げに転じ、それが株高を後押ししました。こうした政策面の追い風もあり、関税政策の下でも米国株式市場全体が底堅く推移し、強気相場(ブルマーケット)が継続することも十分考えられます。
以上、トランプ氏の関税政策が株式市場にもたらすと考えられる5つのプラス効果を見てきました。国内産業が守られ活気づくことで恩恵を受ける企業も多く、株価上昇の材料が増える一面があることがお分かりいただけたことでしょう。特に製造業や資源セクターなど、恩恵を受ける銘柄では株価が力強く上昇するケースが見られました。一方で、物事には表と裏があります。次に、投資判断時に気をつけたいリスク面について確認しましょう。
投資判断で注意すべきリスク
関税政策にはプラス効果がある一方、投資家として注意すべきリスクや不確実性も存在します。ここでは主なリスク要因を挙げます。
1. 輸入コスト増による企業収益圧迫リスク
関税は原材料や部品の調達コストを押し上げるため、製造業など輸入品に頼る企業の利益率悪化を招く恐れがあります。例えば自動車産業では、鉄鋼アルミ関税により原材料費の上昇→車両価格の値上げ→販売減少という悪循環が懸念されています。実際、業界団体の試算では関税コスト増が最終製品価格に転嫁され、販売減や雇用減につながる可能性も指摘されています。「関税を急に課すと良いことはあまりない」との声もあり、一部の企業にとっては関税が逆風となり得ます。
2. 報復関税や貿易戦争激化のリスク
米国が関税を上げれば、相手国も対抗して米国製品に関税引き上げ(報復措置)を取る可能性があります。こうした貿易戦争の激化は世界経済を減速させ、結果的に米国企業の輸出減少や業績悪化を招くリスクがあります。実際、過去にはトランプ政権の厳しい関税発表を受けて中国も報復関税を課し、世界の市場が動揺した事例があります。ある報道では、想定以上に厳しい関税措置発表の直後、アジア新興国の株式市場が軒並み急落し数年ぶりの安値を記録、世界的な景気後退懸念が広がったとされています。このように、関税合戦による世界経済の悪化リスクは無視できません。特に米国企業でも海外売上比率の高い企業(ハイテク、大型消費財など)は、相手国の市場でシェアを失い業績が伸び悩む懸念があります。
3. 株式市場の急変動リスク(ボラティリティ)
関税政策は市場心理を大きく揺さぶり、株価の乱高下を招くことがあります。ポジティブな面では先述のように関連株が急騰する一方、悪材料視されれば急落も起こり得る点に注意が必要です。2025年4月には大型関税措置の発表を受け、ヘッジファンドが記録的な規模で株式を売り越したと報じられました。この動きにより米国株は急落し、米株式のバリュエーション(評価額)が近年最低水準に低下、恐怖指数とも呼ばれるVIX指数も急上昇するなど、市場が大きく動揺しました。また、貿易戦争の行方次第では政策変更や追加関税のサプライズがあり得るため、ニュース一つで相場が上下に振れるリスクが常にあります。短期的な市場変動に振り回されると冷静な判断が難しくなるため、このボラティリティ(変動率)の高さは初心者にとって大きなリスク要因です。
4. 銘柄・セクター間で明暗が分かれるリスク
関税政策は恩恵を受ける企業とそうでない企業の差が鮮明になるため、セクター間の株価格差が広がる可能性があります。先述のように鉄鋼などは好調でも、その裏でハイテク企業などが打撃を受ける場合があります。実際、2025年初にはトランプ氏の仕掛けた貿易戦争の影響で米国の大型ハイテク株(いわゆる「M7」銘柄)の時価総額が年初から約2兆ドルも吹き飛ぶ事態となりました 。一方で中国のハイテク株や欧州の防衛関連株は大きく上昇しており 、関税政策によって勝ち組と負け組がはっきり分かれる状況が生じています。投資家としては、自分が保有する(あるいはこれから買おうとする)銘柄が関税のプラス影響を受ける側か、それともマイナスを受ける側かを見極める必要があります。場合によってはポートフォリオの一部銘柄が大きく値下がりするリスクもある点に注意しましょう。
以上のように、関税政策には明るい側面だけでなく複数のリスク要因が存在します。特に短期的な不確実性が高いため、楽観的なシナリオに飛び乗る前に十分な注意が必要です。
まとめ:今は2~3ヶ月静観も選択肢
トランプ氏の関税政策を巡っては、「国内産業を保護し景気を押し上げる」という期待から株式市場に追い風となる要素が数多くありました。一方で、報復合戦による世界経済の減速や、市場の急変動といったリスク要因も顕在化しています。特に足元のマーケットはニュースに一喜一憂し、ボラティリティが高まる傾向にあります。
投資初心者の方は、こうした状況下で無理にポジションを取ろうとせず、「2~3ヶ月ほど様子を静観する」ことも賢明な戦略と言えるでしょう。実際、相場が大きく動く局面ではプロの投資家でも先行きを見通すのは容易ではありません。十分に情報収集し、関税政策の経済への影響がもう少し明確になるのを待つ余裕を持つことは決して悪いことではありません。
もちろん、中長期的には米国経済の底力や企業収益の成長により、株式市場が上昇基調を辿る可能性もあります。その恩恵を逃さないことも大切ですが、焦りは禁物です。むしろ、一時的な過熱感が落ち着いたタイミングで、改めて有望な銘柄に分散投資するほうがリスク管理の面でも安心できます。
まとめると、トランプ氏の関税政策には株価上昇を後押しする要素があるものの、短期的な乱高下や不透明感も無視できません。初心者の皆さんは長期的な視点を持ちつつ、直近数ヶ月は市場の動きを見極める期間と割り切っても良いでしょう。冷静に状況を見守り、十分な知識と準備が整ってから投資判断を下すことで、将来的な大きなチャンスをしっかりと捉えられるはずです。