暗号資産(仮想通貨)を巡る投資の世界が、新たな転機を迎えようとしています。2025年11月、日本経済新聞の報道によれば、野村アセットマネジメントやSBIグローバルなど国内の資産運用大手6社が、日本で初めて暗号資産を組み入れた投資信託(以下、暗号資産投信)の開発を検討し始めました。これは、金融庁が暗号資産を投資信託に組み入れることを認める方向で制度改正を検討している流れを受けた動きです。投資初心者~中級者の皆さんにとっても、この「暗号資産投信の国内解禁」は、これまでとは違う新しい投資の選択肢が身近になることを意味します。今回は、この動きを歓迎するとともに、これをきっかけに減ってほしいグレーな投資勧誘の実態について考えてみたいと思います。
・日本で整いつつある新たな投資環境を歓迎 ・ブラックロックのIBITに見るETFという選択肢 ・「節税」をうたうグレーな海外業者が減ってほしい ・海外保険で暗号資産投資を勧める無登録業者の問題 ・20%の税率でも国内投資を選ぶことの意義と安全性 ・投資家自身がリテラシーを持ち、グレーゾーンに惑わされない姿勢の重要性 ・書籍紹介
日本で整いつつある新たな投資環境を歓迎
金融庁は現在、暗号資産に関する規制を見直しており、従来は法律上禁止されていた投資信託への暗号資産の組み入れを認める方向で検討を進めています。具体的には、暗号資産の扱いを資金決済法から金融商品取引法へ移管し、投資家保護を図るための法改正を2026年に目指しています。これに合わせて、暗号資産の売却益に対する課税も、現行の最大55%の総合課税から株式や投信と同じ20%の申告分離課税に引き下げる方向で検討中です。20%という税率は一見すると負担に感じるかもしれませんが、現状の最高税率55%と比べれば大幅に軽減され、公平で納得感のある水準と言えるでしょう。たとえば、100万円の利益に対して55万円も税金で差し引かれていたものが20万円で済むようになるわけですから、投資家にとっては朗報です。
さらに、暗号資産投信が誕生すれば、日本国内の証券会社やネット証券の口座から直接購入できるようになります。これまでは暗号資産取引所でしか扱えなかったビットコインなども、投資信託の形になれば株や通常の投信と同じ口座で手軽に取引できるようになります。実際、日本国内の暗号資産取引所の口座数は約1,300万にも上ると言われています。暗号資産投信が登場すれば、それらの個人マネーが従来以上に証券市場を通じて暗号資産へ流入しやすくなり、投資の裾野が広がるでしょう。また、投資信託はプロが分散投資や管理を行ってくれる商品です。初心者の方でも、直接暗号資産をウォレットで管理したり売買する負担を減らし、より安心して暗号資産の成長性にアクセスできるようになる点も歓迎できます。
ブラックロックのIBITに見るETFという選択肢
海外に目を向けると、暗号資産への投資商品は既にETF(上場投資信託)という形でも広く提供されています。中でも注目なのが、世界最大の資産運用会社ブラックロックが手掛けるビットコインETF「IBIT」です。このIBITはビットコインの価格に連動するETFで、機関投資家から個人まで幅広く資金を集め、2025年9月末時点で約900億ドル(14兆円)規模という驚異的な資産残高に達しました。現時点でIBITは世界最大の現物ビットコインETFとなっており、その純資産額は約11兆円に達していると報じられています。こうした海外の例からも、暗号資産を組み入れた投資商品がいかに大きな市場性を持つかが分かります。
ETFは株式と同じように市場で売買できる投資信託です。つまり、投資家はETFを通じてビットコインを実物で保有しなくても、価格連動した運用成果を手軽に享受できるのです。ブラックロックのIBITはまさにその代表例であり、米国では個人の老後資金を運用する年金基金や大学基金(たとえばハーバード大学基金)までもがIBITを通じてビットコインに投資しています。日本でも金融庁の方針次第で、こうしたビットコインETFが上場される可能性があります。
選択肢が増えることは投資家にとって喜ばしいことです。暗号資産投信にせよETFにせよ、信頼できる国内外の金融商品として整備されていけば、わざわざ専門知識のない個人が海外の怪しい取引所でリスクを取らずとも、安全で分かりやすい形で暗号資産に投資できるようになります。「貯蓄から投資へ」の流れの中で、新たな資産クラスとして暗号資産が正規の土俵に上がってくる意義は大きいでしょう。
「節税」をうたうグレーな海外業者が減ってほしい
日本で暗号資産投信や低税率の制度が整えば、期待したいのはグレーな投資勧誘をする業者が淘汰されていくことです。これまで、日本では暗号資産の利益に最大55%もの税金がかかることもあり、「何とか税金を安くしたい」と考える投資家心理につけ込んだ節税ビジネスが存在してきました。
たとえば一部の無登録業者や海外業者は、「海外に口座を作れば暗号資産の利益はバレずに税金ゼロ」「海外保険を使えば合法的に節税できる」といった謳い文句で勧誘を行っています。実際、あるオフショア投資サービスは「暗号資産の利益が非課税のマレーシアがオススメ」と宣伝し、日本を「暗号資産投資家にとってはワースト」の国とまで位置付けて移住や口座開設を勧めています。
しかしご存知のように、日本はOECD(経済協力開発機構)の共通報告基準(CRS)に参加しており、主要な国は金融口座情報を互いに自動交換する体制が整っています。さらに近年は、暗号資産を使った脱税リスクが顕在化したことを受けて、非居住者の暗号資産取引情報を各国税務当局間で自動的に交換する国際基準(CARF)が策定されました。日本を含む各国はこの新ルールに沿って2026年以降、暗号資産取引情報の交換を順次開始する予定です。もはや海外に資産を移せば当局に捕捉されないという時代ではなくなりつつあります。
それに、本当に有利な税制がある国へ移住するならともかく、日本に居住したまま「海外業者を使えば税金をごまかせる」と持ちかけてくる話は、極めてグレーかつ危険です。金融庁も「無登録業者との取引は高リスクであり、一切関わらないように」と注意喚起しています。暗号資産投信の国内解禁と税制整備が進めば、「海外だから大丈夫」という怪しげな節税スキームに頼らずとも、正々堂々と国内で適正な税率で投資できる環境が整います。そうなれば、わざわざリスクを冒してまで海外のよく分からない業者に飛びつく人も減るでしょうし、そうした甘い言葉で誘う無登録業者も自然と廃れていくことが期待できます。
海外保険で暗号資産投資を勧める無登録業者の問題
近年特に問題視されているのが、海外の生命保険商品を使って暗号資産投資を勧誘する無登録業者です。一見すると「海外の保険の商品紹介」のように装いながら、実態は保険契約を通じてビットコイン等の暗号資産に投資させるものです。これら業者は日本の金融庁に登録をしておらず(あるいは保険商品と称して金融商品取引業の登録を逃れ)、インターネットやセミナーで日本居住者に営業をかけています。日本居住者を対象に金融商品や暗号資産取引の勧誘を行うには、たとえ海外に拠点を置く業者であっても金融庁への登録が必要であり、無登録で行う営業は違法です。こういった無登録業者から購入した海外保険やファンドは、たとえ契約書類が本格的でも、日本の法律の枠外にあるためトラブルが起きても保護を受けられません。
典型的なパターンとしては、最初に「税金がかからない」「毎年◯%の利回り保証」などバラ色の話で契約させ、蓋を開ければ隠れた高額手数料や無保証のハイリスク商品だったというケースです。最悪の場合、大切な資金を失っても泣き寝入りになりかねません。
国内で暗号資産投信やETFが整えば、正規のルートで暗号資産投資が可能になるため、こうした「海外保険だから安心」「合法的に節税できる」といった勧誘文句にはより一層疑いの目が向けられるでしょう。金融庁も無登録業者一覧の公表や警告を強化しています。投資家としては、「これは保険ですよ」と言われても中身が暗号資産投資であれば金融商品と同じと認識し、安易に飛びつかないことが大切です。
20%の税率でも国内投資を選ぶことの意義と安全性
税金は誰しも安いに越したことはありません。しかし、たとえ20%の税金がかかったとしても、安全な国内での投資を選ぶ意義は非常に大きいと私は考えます。20%の分離課税なら、先ほどの例で言えば100万円の利益に20万円の税金を払っても80万円は手元に残ります。それを「もったいない」と感じて、何とか全部を手元に残そうとして怪しい投資話に乗ってしまい、元本を失っては元も子もありません。
実際、暗号資産の世界では高い税金を嫌うあまり、無申告のまま放置して後から税務調査で指摘を受け多額の延滞税を払うケースや、SNSで知り合った人物に勧められるまま怪しい海外取引に手を出して出金不能になるケースが報告されています。また、「絶対に儲かる」と保証するような投資勧誘ほど信じてはいけません。それが合法な投資であれば絶対儲かる保証などあり得ないからです。20%の税金を払ってでも確実に利益を自分のものにする方が、脱税まがいの策に溺れてリスクを背負うより、結局は手堅く資産を殖やす近道ではないでしょうか。
リスク回避という観点でも、国内の公的に認められた投資商品を使うメリットは大きいです。国内業者であれば万一トラブルが起きた際に監督官庁への相談窓口がありますし、法令に基づく投資家保護制度もあります。たとえば証券会社が倒産しても預けた有価証券は保護されますが、無登録の海外プラットフォームが突然閉鎖しても誰も保証してくれません。多少の税負担や手数料は「安心料」と割り切り、正規のルールの中で資産運用を行うことが、長い目で見れば大切なのです。
投資家自身がリテラシーを持ち、グレーゾーンに惑わされない姿勢の重要性
最後に強調したいのは、どんなに制度が整っても投資家自身のリテラシー(金融知識・判断力)が不可欠だということです。金融庁が登録業者リストを公開し警告を発しても、最終的に怪しい話に乗るか断るかを判断するのは私たち投資家一人ひとりです。暗号資産投信やETFが解禁されても、これらを装った詐欺商品が出てくるかもしれません。「うまい話には裏がある」「高利益・低リスクと連呼する勧誘は疑ってかかる」、この基本を忘れず、情報を鵜呑みにしない習慣をつけましょう。
幸い、現在はインターネットで少し調べれば、その業者が金融庁に登録があるか、過去に行政処分を受けていないか確認できます。気になる投資話を持ちかけられたら、一度立ち止まって公式情報源を調べたり、信頼できる専門家や公的機関に相談するのも有効です。特に初心者のうちは、「自分だけは大丈夫」という自信は禁物です。逆に言えば、一人ひとりが賢くなれば、怪しい儲け話は相手にされなくなり消えていくものです。
今回の暗号資産投信の解禁という明るいニュースを機に、私たちも正しい知識を身につけ、堂々と胸を張れる健全な投資を心がけていきましょう。そうすることで、グレーゾーンに付け込む悪質な勧誘を退場させ、安心して資産形成できる社会に近づけると信じています。
こちらの記事も参考にしてください。
https://note.com/r_devotion2024/n/nd91443808d30