・技術やコンテンツはコピーされる時代 ・模倣できない「本質」にフォーカスする投資へ ・AI時代、「情報スピード格差」を埋める者が生き残る ・「投資の本質=金(GOLD)」をポートフォリオに ・書籍紹介
技術やコンテンツはコピーされる時代
最近あるニュースが投資家の間で話題になりました。中国が開発した国産旅客機C919が、欧州エアバス社の主力機A320を「完コピ」した疑惑です。中国は2000年代初頭にエアバスからA320を2機購入しましたが、そのうち1機は一度も旅客機登録されず行方不明に。その機体を徹底的に分解して構造を解析し、部品をコピーしてC919を開発したというのです。胴体の長さや重量などスペックがほぼA320と同じという「ドッペルゲンガー」が誕生した、と報じられました。技術大国フランスを驚かせるほどの大胆な模倣劇であり、「技術は盗まれる」という現実を象徴するエピソードと言えるでしょう。
こうしたハード面のコピーだけでなく、ソフト面、つまり情報コンテンツの世界でも模倣は加速しています。インターネット上には情報が溢れ、今やAIに尋ねれば大抵の質問には即座に答えが返ってくる時代です。たとえば「渋谷でおすすめのラーメン店を10軒教えて」とAIに聞けば、一瞬で地図付きのリストが出てきます。AIが既存の文章やデータを学習し、要約記事や画像を即座に生成してしまうため、誰が書いても同じような一般的コンテンツであれば簡単にコピー可能です。言い換えれば、「情報そのもの」の価値が下がり、手軽に模倣できてしまう時代なのです。
しかし、そのように容易に盗める「技術」や「コンテンツ」がある一方で、決して盗むことのできないものも存在します。それが「その人の本質」や「独自の価値」です。属人的な経験や感性から生まれるコンテンツには、模倣不可能な「その人らしさ」が宿ります。実際、個人のストーリーや価値観に根ざした発信を続ければ、人柄や思想といったAIでは表現できない“その人らしさ”が自然と浮き彫りになると指摘されています。平凡な情報記事はAIが量産できますが、喜怒哀楽の背景や独自の視点が込められたコンテンツは唯一無二であり、読み手の心に響くのです。
模倣できない「本質」にフォーカスする投資へ
同じことは投資の世界にも当てはまります。革新的な技術やヒット商品も、いずれ競合に追いつかれたりコピーされてしまうリスクがあります。では投資家は何に注目すべきでしょうか?鍵となるのが、容易に模倣できない価値=その企業や人の「本質」です。
企業で言えば、他社が真似できない強みを持つかどうかが重要です。圧倒的なブランド力、独自のネットワーク、蓄積されたデータ、人材や組織文化、特許やノウハウといった無形資産こそが長期的な競争優位を支えます。ウォーレン・バフェット氏が重視する「経済的な堀(エコノミック・モート)」の概念も、まさにこの点です。「経済的な堀」とは参入障壁の高いビジネスモデルや価格決定力、圧倒的なブランド力等によって競合他社を寄せ付けず、長期にわたり利益を生み出す企業のことを指します。言い換えれば、他者が簡単に奪えない強みを持つ「勝ち組企業」です。
例えば、高級ブランドのバッグには必ず偽物が出回りますが、外見をいくら真似ても本物のブランドの持つ品質と信頼、ステータスまではコピーできません。同じように企業においても、競合が製品の仕様を模倣できても、長年かけて築いたブランドの信用や独自の企業文化までは奪えないのです。アップル社のiPhoneは発売以来、多くのスマートフォンメーカーが似た製品を開発しましたが、iPhone固有の使い勝手やブランド力、エコシステムへの信頼があるためユーザーを惹きつけ続けています。日本企業でも、長年培った職人技術や品質への信頼によって他社が真似できない地位を築いている例があります。典型的なのがトヨタ自動車の現場力でしょう。同社の生産方式(TPS)は世界中の企業が取り入れましたが、根底にある徹底した品質文化や人材育成まで真似するのは容易でなく、その差が業績に表れています。投資先を選ぶ際は、このような「他社が真似できない核(コア)」を持っているかを見極めることが大切でしょう。それは財務指標には表れにくい部分ですが、長期投資においてリターンを生み出す源泉となり得ます。技術革新が激しい現代だからこそ、奪えない本質的価値に光を当てる投資を意識したいものです。
AI時代、「情報スピード格差」を埋める者が生き残る
いくら現在圧倒的な競争力を持つ企業でも、昨今のAI革命によって情報処理スピードの格差が生まれつつある点にも注意が必要です。技術やビジネスモデルだけでなく、情報収集・分析や意思決定の速さが企業の命運を分ける時代になっています。AIを積極活用している企業と、従来型の手作業に頼る企業では、刻一刻と競争力に差が開いてしまうでしょう。
事実、AI導入の有無で企業の存続率に大きな差が出ているとのデータもあります。ある調査では、中小企業500社を追跡した結果、AI未導入企業の5年生存率はわずか22.3%、一方でAI活用を積極的に進めている企業は78.9%にも上ったとされています。特にBtoBのサービス業では非活用15.7% vs 活用82.3%と極端で、「AIを導入するか、市場から退場するか」の二択が既に現実化しているというのです。また別の報告では、大企業のAI導入率が47.8%に達する一方、中堅企業では23.1%にとどまるという統計もあります。この差は単なる数字以上に、売上機会の逸失や競争力低下、人材流出といった形で企業の将来を蝕む深刻なリスクです。
想像してみてください。同じ業界にA社とB社というライバル企業があり、A社はAIを駆使して市場動向や顧客データを解析し、新商品の開発スピードを高めています。一方のB社は従来通り人の手による情報収集と経験則に頼った経営です。この場合、数年も経てば両者の業績は大きく開き、A社はより多くの顧客を獲得し、B社は市場シェアを奪われてしまうでしょう。AIによる「情報スピード格差」を埋められる企業だけが生き残る可能性が高まっているのは、こうした理由からです。
実際、マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏やテスラCEOのイーロン・マスク氏も「AIを導入しなければ会社が潰れる」と警鐘を鳴らしています。生成AIの普及によって生じる企業間格差(いわゆる「生成AI格差」)は、単なる技術導入の差ではなく売上や競争力、人材確保に直結する経営リスクだといいます。AI技術を使いこなす企業は生産性向上やサービス革新で先行者利益を得る一方、一度後れを取った企業は加速度的に不利になる構造的問題も指摘されています。もはやAI時代に背を向けることは、高速道路を自転車で走るようなものかもしれません。
このように、たとえ現在有望に見える企業でも、AIやデジタル化への対応状況を見極めなければ“宝の持ち腐れ”になるリスクがあります。「革新のスピードについていけるか」が今後ますます投資判断の重要な基準となっていくでしょう。
「投資の本質=金(GOLD)」をポートフォリオに
以上を踏まえ、最後に私たち個人投資家が取るべき戦略について考えてみましょう。ヒントは「本質にフォーカスする」という発想にあります。実は、私たちの身近に「本質的価値の塊」ともいえる資産が存在します。それが金(GOLD)です。
金は約5000年の歴史を通じて人類から価値のある財(富)と認められてきた、いわば「究極の安全資産」です。派手な値上がり益こそ期待しにくいものの、本質的な価値が揺るがない資産です。投資商品の世界では値動きが大きく派手なものほど注目されがちですが、本当に価値のある資産は地味で目立たないものが多いのが現実です。そして金(GOLD)はまさにその代表格なのです。株式や暗号資産のような派手さはありませんが、経済不安や有事の際には最も確実な保険として機能してきました。実際、2024年から2025年にかけて金価格は過去最高値圏まで上昇しました。中東地域の地政学リスクが高まり世界の株式市場が急落する中、投資家がリスク回避のため金を買い増したことなどが背景にあります。また金は実物資産であり希少性が高く、現代の科学でも大量生産は不可能です。情報や通貨を無限にコピーできても、金という元素を人為的に増やすことはできません。その内在的価値は時代を超えて人々に信頼され続けています。
さらに、金には宝飾品や電子機器など工業用途での実需もあり、投機マネーだけで動く資産ではありません。その安定性ゆえに、近年では各国の中央銀行も外貨準備の一部として金を積極的に買い増しているほどです。事実、世界の中央銀行による金の年間購入量は2022年から3年連続で1,000トン超と記録的な高水準が続いています。プロの機関投資家や富裕層に限らず、国レベルでも「本質的価値」を持つ金に注目が集まっているのです。
こうした金(GOLD)をポートフォリオの「核」として組み込んでおけば、いざ市場に嵐が来ても資産の土台が揺らぎにくくなります。例えるなら、大木の根っこのようにポートフォリオを下支えしてくれる存在が金です。その上で、その他の部分では時代の変化に応じて柔軟に対応すると良いでしょう。テクノロジー株や新興国株など成長が見込まれる分野には積極的に投資しつつ、環境が変われば素早く方針転換するといった機動力も大事です。しかしコア(核)として「投資の本質」とも言える金を据えておけば、多少の波風では資産全体が倒れることはありません。派手な流行に飛びつくだけでなく、本質的価値を持つ資産を堅実に押さえておく――これこそ不確実な時代を生き抜くための知恵ではないでしょうか。
なお、DEVOTION GOLD CLUBとしても、こうした「本質」に注目した情報発信を今後も続けていきたいと思います。皆さんも是非、ご自身の投資戦略で何が本質なのか問い続けてみてください。最後に改めて強調したいのは、「技術や情報は盗まれても、本質は奪えない」という点です。私たち投資家は目先のニュースや流行に心を揺さぶられがちですが、真に重要なのはその裏にある本質的な価値を見抜くことです。コピー商品が溢れる今だからこそ、“本物”を見極め、それに投資していく姿勢が問われています。本質に献身する(Devote)投資こそが、長い目で見てポートフォリオに確かな輝きをもたらし、未来の豊かさへとつながるはずです。