最近、世界各国の中央銀行が外貨準備に「金(GOLD)」を大きく組み入れ始めていることが注目されています。特にここ日本でも報じられたニュースとして、韓国銀行(中央銀行)が中長期的に金の購入を検討していると明らかにしました。各国の中央銀行がなぜこぞって金を買い増しているのでしょうか。その背景には、貿易摩擦や税制変更、地政学リスクの高まり、そして景気後退への懸念といった不透明な世界情勢が影響しています。本記事では、その理由と私たち金投資家への示唆について一緒に見ていきましょう。
・中央銀行が金を買い増す背景 ・韓国も金購入を検討:世界の潮流に合流 ・金が「攻め」と「守り」を両立する理由 ・金価格下落でも慌てないで ・金投資家へのアドバイス:愚直に積み増しを続けよう ・書籍紹介
中央銀行が金を買い増す背景
グローバル経済の不確実性が増す中、各国の中央銀行はこぞって金の保有量を増やしています。最大の要因の一つは米ドル資産への信頼低下です。米国の通商政策は近年予測が難しく、関税引き上げなどの動きや財政赤字拡大による先行き不安から「ドル離れ」の傾向が強まっています。実際、専門家からは「近年の脱ドル化の原動力は依然健在で、むしろアメリカ政権の予測不能な政策姿勢や悪化する財政見通しがドルと米国債の信頼をさらに揺るがしている」との指摘もあります。
また、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発した制裁リスクも無視できません。西側諸国による制裁でロシアの外貨準備の一部が凍結されたことを受け、中国や新興国は自国の準備資産が政治的な影響を受けにくい形で保全されるよう、ドル建て資産から金へのシフトを進めています。実際、「金は誰の負債でも債務でもないため、政治的リスクを懸念する中央銀行にとって魅力が増している」との声もあります。さらに、世界経済の減速懸念やインフレ圧力の高まりも、安全資産である金への需要を後押ししています。
こうした背景から、中央銀行による金の購入量は歴史的な高水準に達しています。2022年以降、中央銀行の金純購入量は年間1,000トンを超えて推移しており、それ以前5年間の平均を2倍以上も上回る記録的ペースです。この大量の公式部門からの需要が金市場を下支えし、実際に金価格は押し上げられてきました。2024年には中央銀行保有の金の価値がユーロを抜いて米ドルに次ぐ「世界第2の準備資産」になったとの報告もあります。中央銀行の金保有額がついに米国債保有額を上回ったという事実は、各国がそれだけ金を戦略資産として重視している証と言えるでしょう。
韓国も金購入を検討:世界の潮流に合流
こうした潮流の中、韓国もついに金準備の拡大に乗り出そうとしています。韓国銀行の準備資産担当幹部は、京都で開催されたロンドン地金市場協会(LBMA)年次会議で「中長期的に外貨準備として金の購入を検討している」と発言しました。韓国は現在、外貨準備として104トンの金を保有していますが、2013年以降まったく買い増しをしていません。これは近年、準備資産の多角化を目的に積極的に金を購入している中国などと対照的です。
韓国中央銀行がここにきて方針転換を示唆した背景には、前述のドル資産への依存リスクや地政学リスクへの備えがあると考えられます。担当者は、購入のタイミングと規模は「自国通貨ウォンと金価格の推移次第」と述べており、慎重ながらも今後の金準備拡大に前向きな姿勢が感じられます。韓国がこの動きに合流すれば、アジアの主要経済国として金市場に与える影響も小さくないでしょう。
金が「攻め」と「守り」を両立する理由
中央銀行が金を増やす根底には、「金」という資産が攻めと守りの両方を兼ね備えている点があります。金は有事の安全資産(守りの盾)であり、紛争や金融危機の際にはその価値を保全して資産を守ってくれます。一方で平時やインフレ局面では価値上昇のチャンス(攻めの矛)ともなり得ます。言い換えれば、金は資産運用において「盾」であると同時に「矛」にもなる存在なのです。たとえば米中対立や地域紛争など地政学リスクが高まれば逃避先として金が買われますし、各国が金融緩和に転じたりインフレ懸念が台頭すればヘッジ手段として金の需要が増え、価格上昇が見込めます。
現に2025年に入ってから金価格は急騰し、一時1トロイオンス=4,000ドル超の史上最高値を記録しました。これは金が守りの資産であるだけでなく、攻めのリターンももたらし得ることを示しています。各国中央銀行が金を「攻守両用の切り札」として準備高に組み込むのも頷ける話ですね。また、世界的に政府債務が膨張しインフレ圧力が続く中で、「米ドル覇権への不安から依然として中央銀行は金に目を向けている」との分析もあります。
まさに金は金融システムへの不安に対する保険でありつつ、将来的な通貨価値下落への攻めの一手ともなるため、攻守のバランスが取れた資産と言えるでしょう。だからこそ各国はこぞって金を買い増し、「備え」と「攻め」の双方に効くこの資産を手元に蓄えているのです。
金価格下落でも慌てないで
ところで、直近では金価格が調整局面を迎えています。ここ1週間ほどで金相場は一時的に下落しましたが、これは過熱したマーケットが一服している状態と捉えられます。事実、今年に入ってから金は駆け上がるように上昇してきただけに、短期的な利益確定売りによる下落は「避けられない調整」でもあります。グローバル金融アドバイザーであるdeVereグループのCEO、ナイジェル・グリーン氏も「今回の下落を金の強気相場の失敗と捉えるべきではない」とコメントしています。むしろ「異例の急騰の後、市場には一息つく時間が必要だっただけ」というわけです。さらにグリーン氏は「今回のディップ(押し目)は健全で何ら不安はない。過熱した投機マネーが退場し、より大きな力が主導権を取り戻す余地ができた」と指摘しています。ここで言う「大きな力」とは、言うまでもなく中央銀行など長期志向の需要です。
実際、各国の中央銀行は調整局面においても金を買い続けています。最新のワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)のデータによれば、8月には世界の中央銀行が正味19トンの金を購入に転じ、7月の低調な買いから再加速したことが示されています。このように公式セクターの安定した買いが存在するおかげで、金市場には強固な土台が築かれています。ナイジェル・グリーン氏も「中央銀行の購入は金地金の下に防衛可能なフロア(下値支持線)を築いている」と述べており、大口の長期買い手がいることで金価格は下方向に厚いサポートがある状態です。
したがって、目先の調整で必要以上に悲観する必要はないでしょう。むしろ、こうした押し目は長期投資家にとって恵みの買い増しチャンスとも言えます。金の長期的な上昇を支える構造要因(各国の需要やインフレ・通貨不安)は何も変わっていないどころか、中央銀行の買い増しという心強い追い風は今後も続く見通しです。一時的な下落に慌てず、腰を据えて金と付き合うことが大切ですね。
金投資家へのアドバイス:愚直に積み増しを続けよう
以上の流れを踏まえると、私たち個人の金投資家にとって今取るべきスタンスはシンプルです。ブレずに「買い」を止めないこと、すなわち愚直に金を積み増し続ける戦略です。各国中央銀行が足元の価格変動に惑わされず淡々と金保有を増やしているように、私たちも長期的な視点でコツコツと持ち高を積み上げていきましょう。金の価値を信じ、余裕資金で定期的に積み立てていく姿勢が肝心だと思います。
具体的な投資手段としては、地金型金貨を買い足す方法がおすすめです。たとえば英国ロイヤルミントのブリタニア金貨や、オーストリア造幣局のウィーン金貨といった純度の高い地金型金貨は、国際的にも知名度が高く資産価値を保ちやすいです。定期的にこれらを購入して貯蓄代わりに保管しておけば、将来の備えとして心強いでしょう。また、現物の保管や購入手数料が気になる方は、米国市場の金ETFを活用する手もあります。たとえばGLD(SPDR Gold Shares)やGLDM、IAU、IAUMなどのETFは金価格に連動した運用がされており、株式と同じように手軽に売買できます。少額から金に投資できるうえ流動性も高いので、初心者でも始めやすいでしょう。
大切なのは、日々のニュースや短期的な相場変動に振り回されないことです。メディアには様々な情報が飛び交いますが、中には一時的なノイズ(雑音)に過ぎないものもあります。たとえば「金価格が下がった」「〇〇ショックで金暴落か?」といった刺激的な見出しに過敏に反応してしまうと、本来の投資方針がブレてしまいがちです。そうではなく、自分なりの軸を持って投資を続けることが肝心です。中央銀行が実践しているように、ぶれない姿勢で金を積み増す、これが長期的に報われる王道の戦略ではないでしょうか。実際、各国の公式機関が足並みを揃えて金を買い増している事実そのものが、金という資産の信頼性を何よりも物語っています。メディアの喧騒に惑わされず、「攻守の切り札」である金をこれからも愚直に積み上げていきましょう。金との付き合いを続ける先には、きっと私たちの資産防衛と運用の両面で明るい未来が待っているはずです。