2025/11/06

「1円から株主!」誰もが投資家になれる新時代の幕開け

24時間・1円単位の株式取引がもたらす革命とは

先日の日経新聞に「株式を24時間・1円単位で取引できる新システム」が紹介されました。SBI証券と大手信託銀行が連携し、上場企業の株式を24時間いつでも、しかも1円から取引できるしくみを2026年にも導入する方針とのことです。これは株式をデジタル証券(セキュリティ・トークン)として小口化(細かく分けること)し、最低投資額を1円まで引き下げるという画期的な試みです。金融業界横断でインフラを整備し、「貯蓄から投資へ」の流れを加速させる狙いがあります。

これまで日本の株式取引には、「売買単位が大きい」「取引時間が限られる」という二つの大きなハードルがありました。多くの銘柄は100株単位などまとまった数でしか買えず、株価によっては数十万円以上が必要でした。また、売買できるのは平日昼間の限られた時間帯のみで、深夜や早朝は注文すら受け付けてもらえませんでした。このため、「投資にはまとまった資金と平日日中の時間的余裕がないと難しい」というイメージが根強かったのです。

しかし今回発表された新システムでは、こうした常識が大きく覆りそうです。24時間いつでも取引可能で、しかも1円から購入できるようになるため、株式投資がこれまで以上に身近になると期待されています。昼間忙しい社会人でも夜に取引できますし、学生や主婦の方でもお小遣い程度の少額から好きな企業の株を買えるようになります。「株はお金持ちのもの」という時代から、「誰もが株主になれる」時代への転換点になるかもしれません。



SBIと信託銀行、ODXの取り組みと狙い

この少額・24時間取引を実現するための鍵となるのがデジタル証券(セキュリティ・トークン)です。デジタル証券とはブロックチェーン技術を活用して発行される電子的な有価証券で、従来の株式や社債をデジタル上で表現したものです。ブロックチェーン上に記録されたトークンとして株式を扱うことで、取引の効率化権利管理の簡素化が期待できるうえ、1円単位まで細かく権利を分けて販売できるようになります。まさに証券市場そのものがデジタル時代にシフトしていく構造的転換と言えるでしょう。

SBIグループはこの分野で先行しており、2021年には三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)などと共に大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)という会社を設立しています。ODXは日本初のセキュリティ・トークン取引所の創設を視野に、株式の私設取引システム(PTS)とデジタル証券の市場運営を目指して発足しました。ODXの代表は「東京証券取引所への一極集中に対し、PTS市場への新規参入と、ブロックチェーン技術を活用したセキュリティトークン取引所の創設によって日本の投資の裾野を拡げたい」と述べています。つまり、従来は投資になかなか参加できなかった層にも門戸を広げ、資本市場を活性化しようという大きな狙いがあるのです。

この新システムもまさにその延長線上にあります。証券会社だけでなく信託銀行も巻き込んだ業界横断プロジェクトである点が重要です。信託銀行は株式の管理や権利処理のプロですから、デジタルトークン化した株式の裏付け資産(実際の株券や権利)の保管・管理を担うのでしょう。SBIなどの証券会社が取引プラットフォームを提供し、信託銀行が資産の信託・管理を行うことで、安全かつ円滑に小口株取引を実現する仕組みと推察できます。国内の複数金融機関が協力してインフラを構築することで、信用力のある安心できる市場を作り上げようとしているわけですね。


誰もが1円から投資家に?期待されるメリット

それでは、株式が1円から24時間取引できるようになると具体的にどんなメリットがあるでしょうか。大きく三つ挙げられます。

今までは株を買うにもある程度まとまった資金が必要でしたが、1円から買えるなら中学生のお小遣いでも株主になれます。学生や若い世代でも気軽に株式を保有できるようになり、投資デビューのハードルが一気に下がります。これは将来世代の金融リテラシー向上にもつながるでしょう。

夜間や早朝に海外で大きなニュースや為替変動があっても、従来は日本市場が閉まっていて対応できませんでした。常時取引可能になれば、海外のニュースに即座に反応して売買できます。たとえば米国市場の動向を受けて深夜に日本株を調整するといった柔軟な対応が可能になり、機動的な資産運用がしやすくなります。

少額でも参加できる人が増えれば、株式市場に新たな投資家層が参入します。結果として取引参加者が増え、市場全体の流動性(売買の活発さ)が高まることが期待されます。市場が活性化すれば企業にとっても資金調達しやすい環境が整い、「貯蓄から投資へ」の流れがさらに加速するでしょう。

このようにメリットは盛りだくさんですが、一方で注意すべき点もあります。取引時間が延長されても、深夜や休日は取引参加者が少なく流動性が薄くなる可能性がありますし、出来高が少ない中では売買のスプレッド(価格差)が拡大して割高・割安で取引してしまうリスクもあります。また24時間体制になることで値動きが常に起き、相場のボラティリティ(変動幅)が増大することも考えられます。便利になる反面、「いつでも取引できる=いつでも安全に儲かる」ではない点は肝に銘じ、冷静な投資判断がこれまで以上に求められるでしょう。


海外の事例:少額投資はもはや常識?

実は少額からの株式投資という点では、海外ではすでに一般的になりつつあります。たとえば米国の株式市場では、通常1株単位で売買できます(日本のような100株単位の制約がありません)。さらに最近ではフラクショナル株取引といって、1株未満の端数株も購入できるサービスが広がっています。証券会社のロビンフッドやフィデリティなどが提供するフラクショナル取引では、わずか数ドルから好きな株を買うことが可能です。

日本企業でも米国株の端株取引に参入する動きがあり、たとえばスマホ証券のmoomoo証券は2025年に1ドル(約150円)から米国株に投資できるサービスを開始しました。これによりテスラやエヌビディアといった高額な米国株でも、コーヒー1杯分程度のお金で少額投資できるようになっています。米国ではGAFAやマイクロソフトのように株価が数百ドルを超える銘柄も多く、従来は個人には手が届きにくいものでした。しかしフラクショナル取引の登場で、「有名企業の株をとりあえず○○ドル分だけ買ってみる」といった気軽な投資スタイルが定着しつつあります。こうした流れを見ると、日本の「1円から株式投資」は遅ればせながらようやく世界標準に追いつく第一歩とも言えそうです。

また24時間取引に関しては、株式市場では世界的にもまだ珍しい取り組みです。多くの国では証券取引所の開場時間は決まっており、米国でも通常は平日昼間(日本時間の夜間)だけです。ただし暗号資産(仮想通貨)の市場は24時間365日動いており、若い世代を中心に「常にマーケットが開いている」感覚が浸透しています。株式もデジタル証券化されることで、将来的には暗号資産のように休みなく取引できる市場になる可能性があります。日本発のこの試みが成功すれば、“24時間動く資本市場”という新常識が世界に先駆けて生まれるかもしれません。投資の機会が時間に縛られなくなる恩恵は計り知れず、世界の投資スタイルにも影響を与える可能性があります。


株式以外も?広がる資産トークン化の波

注目すべきは、小口化して投資しやすくなるのは株式だけではないという点です。デジタル証券の技術は、不動産美術品(アート)など様々な資産にも応用できます。実際、日本では2021年に早くも不動産のセキュリティ・トークン(不動産ST)第1号が誕生しています。不動産STとは、特定のビルやマンションなど不動産を裏付けに発行されるデジタルトークンです。大きな不動産を小口に分割して一般投資家に販売できるため、これまで数千万円単位の資金が必要だった不動産投資が数万円程度から可能になりました。たとえば2021年8月には、東京都渋谷区の賃貸マンションを原資産とする日本初の不動産デジタル証券が個人投資家向けに発行されています。これにより、従来はREIT(不動産投資信託)経由で間接的にしか不動産投資できなかった個人も、特定の物件に直接少額投資する道が開かれました。

アート作品のトークン化も見逃せません。高価な絵画や彫刻などは富裕層しか買えないイメージでしたが、日本ではANDART(アンドアート)というサービスが美術品のオーナー権を小口化して販売しています。ANDARTでは1作品の所有権を細分化し、誰もが少額から購入できる共同保有プラットフォームを提供しています。たとえばアンディ・ウォーホルやバンクシーのような有名アート作品でも、1万円からの「オーナー権」購入でその一部を所有し、価値の上昇益を狙うことができます。アートは値動きが株式市場と連動しにくいため分散投資にも有効と言われており、近年注目が高まっています。こうしたアートの小口投資プラットフォーム登場により、アートを資産形成の一部と考える人も増えてきました。

このように、不動産からアートに至るまであらゆる資産のデジタル証券化(トークン化)の波が押し寄せています。もし今後、株式の1円取引が定着し他の資産にも広がれば、私たちは日常的に「○○円分のビル」「○○円分の名画」をスマホで買う時代が来るかもしれません。投資対象が広がることで、一人ひとりが自分の興味や価値観に応じた資産ポートフォリオを持てるようになるでしょう。まさに「全員が何らかの投資家」という時代が現実味を帯びてきています。


デジタル資産の課題:量子コンピューターは脅威?

デジタル証券の未来は明るい一方で、技術的なリスクも頭に入れておく必要があります。その代表例が量子コンピューターによるブロックチェーンへの脅威です。現在、デジタル証券の基盤であるブロックチェーン技術は高度な暗号技術によって安全性が担保されています。記録の改ざんや不正な取引は莫大な計算能力がないと不可能であり、通常のコンピューターでは太刀打ちできません。しかし、もし将来量子コンピューターが実用化されてしまうと、この前提が崩れる可能性があります。

量子コンピューターは従来のコンピューターとは桁違いの計算速度を持つため、現在のブロックチェーンを支える暗号技術(公開鍵暗号)を破ることができてしまう恐れが指摘されているのです。たとえばビットコインなどで使われている暗号も、理論上は量子計算によって秘密鍵が解読されてしまう可能性があります。「量子コンピューターが実用化すると、ブロックチェーンのセキュリティを保証している暗号が破られる可能性がある」という専門家の声もあり、デジタル証券を含む広範なデジタル資産の安全性に影を落としかねません。

もっとも、研究者たちも手をこまねいているわけではありません。既にポスト量子暗号と呼ばれる新しい耐量子計算機向けの暗号方式の開発が進められており、将来的には量子コンピューターにも耐えうるブロックチェーン技術へのアップデートが図られる見通しです。また、量子技術そのものを活用してブロックチェーンを強化する「量子ブロックチェーン」という新発想も登場しています。つまり、イタチごっこのように感じられるかもしれませんが、技術の進歩に応じてセキュリティも進化していくと期待されています。

投資初心者の方は難しく感じるかもしれませんが、大事なポイントは「便利な新技術にも常にリスクは伴う」ということです。デジタル証券の世界が今後発展していく中でも、その裏で最新技術動向(量子コンピューターや新しい暗号技術など)にもアンテナを張っておくと安心です。せっかく1円から投資できる時代になっても、基盤が脆弱では安心して続けられませんからね。このブログでも今後の動きを追っていきますので、一緒に学んでいきましょう。


新しいNISAと「投資が当たり前」の時代へ

日本では2024年から新しいNISA制度がスタートし、非課税で投資できる枠が大幅に拡充されました。これにより、「少額からの長期投資」を支援する環境は整いつつあります。今回の1円単位デジタル株取引の動きは、この流れに拍車をかけるものとして非常にタイムリーです。たとえば今後、この1円単位取引がNISA口座でも利用できるようになれば、文字通りだれもが投資を日常に取り入れられるようになるでしょう。お年玉の一部を株に換えてみる学生さん、毎月のおこづかいで好きな企業の株を少しずつ積み立てる主婦の方、深夜のニュースを見て手元のスマホで株式市場にアクセスするサラリーマン。そんな光景が当たり前になるかもしれません。

「貯蓄から投資へ」というスローガンは長らく掲げられてきましたが、実現には環境整備ときっかけが必要でした。最低投資額の高さや時間的制約といった環境面のハードルが下がり、さらにNISA拡充で税制面の後押しも効けば、いよいよ日本でも投資が当たり前の社会が訪れる可能性があります。これは単に個人の資産形成にとって朗報なだけでなく、経済全体にもポジティブな循環をもたらすでしょう。多くの国民がお金を眠らせず投資に回せば、市場に資金が行き渡り企業も成長資金を得やすくなります。その結果、新たな産業や雇用が生まれ、日本経済の活性化につながる好循環が期待できます。

もちろん、投資にはリスクが伴いますから「誰もが投資家になれば万事OK」と単純にはいきません。それでも、必要なときに必要なだけ、少額から投資に挑戦できる世の中になれば、お金との付き合い方や人生設計に対する意識は確実に変わります。お金を銀行預金に預けっぱなしにせず、自らの判断で運用して増やす。そうしたマインドを持つ人が増えることは、人生100年時代を豊かに生き抜く上でも大切なことではないでしょうか。

これまで投資に縁遠かった方々にも、このニュースは朗報だと思います。1円から買える株式が当たり前になれば、「投資は怖い」「お金がないから無理」という壁はぐっと低くなります。近い将来、日本中の誰もが株式投資の恩恵を受けられる時代が来るかもしれません。そう考えるとワクワクしますね。これからも一緒に経済や投資について学びながら、明るい未来に備えていきましょう!


書籍紹介

👉 第2弾書籍詳細(購入)はコチラ!

👉 第1弾書籍詳細(購入)はコチラ!

コメントを残す

CAPTCHA


CONTACT
矢印