2025/04/22

トランプ氏の新たな切り札、「マールアラーゴ合意」とは?

トランプ氏が仕掛ける「マールアラーゴ合意」という言葉をご存じでしょうか。

まだ構想段階ですが、実現すれば世界経済が大きく揺れ動く可能性があります。

私たち日本人の暮らしや株式、そして金市場にはどんな影響があるのか。これからの市場を見極めるために、知っておきたい重要なポイントを一緒に確認していきましょう。



「第二のプラザ合意」?マールアラーゴ合意構想とは何か

トランプ大統領が掲げる「マールアラーゴ合意(Mar-a-Lago Accord)」構想に注目が集まっています。これは現時点ではあくまで政権内で囁かれる構想に過ぎず、1985年の「プラザ合意」のような各国間の正式な合意があるわけではありません。しかしながらその内容は、「第二のプラザ合意」とも呼ばれるほど1985年当時の状況に似通っていると指摘されています。具体的には、トランプ氏が大統領復帰後に米ドルを意図的に弱く誘導し、各国との多国間協定によって米国の貿易不均衡を是正しようとする大胆なプラン。ウォール街でもこの噂が取り沙汰され、フロリダ州にあるトランプ氏の私邸名を冠して「マールアラーゴ合意」と呼ばれ始めています。

この構想の狙いは、かつてのプラザ合意と同様に米国の輸出競争力を高め、巨額の貿易赤字を削減することにあります。

1980年代のプラザ合意では、主要5か国(米・日・独・英・仏)が協調してドル高を是正し、米国の貿易赤字是正を図りました。結果的にドル安・円高が実現しましたが、その副作用として日本では急激な円高に伴う経済停滞(いわゆる「失われた10年」)を招いた経緯があります。今回噂されるマールアラーゴ合意も「ドルの価値を意図的に切り下げる(ドル安誘導)」点でプラザ合意と類似していますが、同盟国に対する安全保障面での圧力も絡める可能性がある点で一段と強硬なものとなっています。つまり、米国が主導して世界経済秩序を再編する壮大なシナリオと言えるでしょう。

もっとも重要なのは、このマールアラーゴ合意は現時点で正式な政策でも合意でもなく、政権内で内々に呼ばれている構想にすぎない点です。しかし「第二のプラザ合意」とも評されるそのアイデアは、市場関係者に大きなインパクトを与えています。もし実現に向けた動きが本格化すれば、為替市場や株式市場に大きな波乱を起こしかねません。金投資家としても、この構想がどのように市場に影響を及ぼす可能性があるのか押さえておくことが重要です。


4月2日「解放の日」以降の動向は読みにくい

トランプ氏は大統領選に向けたキャンペーンや政権の中で、4月2日を米国にとっての「解放の日」と位置付けてきました。これは、彼の掲げる野心的な経済政策を実現する第一弾として、大規模な関税措置を発表する日とされたものです。実際、トランプ政権は4月2日に各国からの輸入品に対する相互関税の導入を発表しました。たとえば中国に対しては57%もの高関税が課され、日本に対しても24%という高率の関税が公表されています。トランプ氏はこの日を「解放の日」と呼び、不公平な貿易慣行から米国が解放される転換点だと強調しました。

しかし、その「解放の日」以降のトランプ氏および経済チームの言動は極めて読みにくい状況にあります

ホワイトハウスからの発表内容は直前まで二転三転し、政策方針にも矛盾が見られるなど、一貫性に欠ける面が指摘されています。実際、発表予定の関税内容でさえ最後まで謎が多く、周囲をハラハラさせました。このように、トランプ氏の発言や政策は予測が難しく変わりやすいため、市場参加者としては常に注意を払っておく必要があります。

特にマールアラーゴ合意のような通商・通貨政策の大転換に関する示唆は、突然飛び出す可能性があります。

4月2日の関税発表はトランプ政権の強硬姿勢を象徴するものでしたが、それが最終目標ではなく「交渉への手段」に過ぎないとの見方もあります。トランプ氏の経済ブレーンであるスティーブン・ミランCEA委員長も、関税は各国を交渉の場に引きずり出すための道具であり、真の狙いは「ドル安誘導による世界経済体制の再構築」にあると述べています。

したがって、今後トランプ氏がいつどのように為替や通貨に関する発言・政策転換を打ち出すか、予断を許しません。初心者を含む投資家の皆さんも、「トランプ発言一つで相場が大きく揺れ動く」リスクがあることを念頭に、ニュースや動向を追うようにしましょう。


世界経済への影響:ドル安誘導・関税政策と通貨戦争のリスク

トランプ氏のマールアラーゴ合意構想が現実味を帯びるとすれば、まず考えられるのが世界経済への大きな波及効果です。

そのシナリオでは、米国がまず強硬な関税政策を発動して世界経済に揺さぶりをかけ、各国を交渉のテーブルに引き出します。そして交渉の席で新たな通貨協定を結び、意図的なドル安誘導(米ドルの価値切り下げ)を各国にも容認させる、という展開が予想されます。このような協定が実現すれば、「ここ数十年で最も広範な影響」を世界の貿易・金融システムに及ぼし、体制を根本から再構築する可能性があると指摘されています。言い換えれば、戦後続いてきたグローバルな経済ルールが塗り替えられるかもしれないのです。

しかし、各国が素直にドル安誘導に協力するかは疑問です。

1985年のプラザ合意では各国が協調介入でドル高是正に動きましたが、その後ドル安が行き過ぎてしまい、2年後には急速なドル安・円高を止めるために「ルーブル合意」が必要になった経緯があります。日本は結果的に長期不況に苦しみ、中国も現在、不動産危機やデフレ圧力を抱える中で日本の教訓を無視できない状況です。もし米国が一方的にドル安政策へ舵を切れば、中国や欧州などは自国経済への悪影響を懸念し、報復的な為替介入や金融緩和で対抗する可能性があります。これは、いわゆる「通貨戦争」に発展するリスクを孕んでいます。

加えて、マールアラーゴ合意構想には安全保障と経済をリンクさせる戦略も示唆されています。

報道によれば、もし同盟国が米国の提案に従わなければ、米国はNATOや日米安保条約などでの防衛義務の履行を放棄する可能性すら囁かれているとのことです。経済交渉に軍事・安全保障上の圧力を組み合わせる手法は極めて異例であり、世界秩序の大きな再編につながりかねません。関税とドル安誘導という経済面の圧力に加え、安全保障面でも揺さぶりをかけることで、米国は前例のない交渉力を発揮しようとしているわけです。

こうした動きが現実となれば、世界経済には以下のような影響が考えられます。

1. 貿易摩擦の激化と世界経済の減速
高関税政策の応酬により貿易量が縮小し、各国の成長率が押し下げられる懸念があります。特に輸出に依存する新興国や欧州・日本の企業に逆風となるでしょう。

2. ドル安基調への転換
米国が強引にドル安に誘導すれば、基軸通貨ドルの信認にも影響します。ドル安は米国製品の価格競争力を高めますが、ドル建て資産の価値下落を通じて各国中央銀行や投資家のポートフォリオに影響を与えます。

3. 国際協調の乱れと市場の混乱
主要国間の協調関係が崩れ、為替・金融政策の足並みが乱れると、市場は先行きの不透明感から動揺します。為替相場の急激な変動や資本の逃避(リスクオフ)により株価の急落や信用不安が広がるリスクも否定できません。


このように、マールアラーゴ合意構想は世界経済にポジティブな面(米国の競争力回復)とネガティブな面(国際対立の激化)の両刃の剣です。金投資家としては、後述するように特に「ネガティブな波乱」が起きた場合に金がどう動くかに注目しておく必要があります。


株式市場と金市場への影響:不確実性が増すほど金に追い風

トランプ政権の強硬策や通貨政策の転換は、金融市場にも直ちに影響を与えます。

まず株式市場ですが、4月2日の高関税発表直後に米国株が急落し、翌日には世界の株式市場も軒並み下落しました(いわゆる「トランプ関税ショック」)。このように、貿易摩擦や通貨政策の不透明感は株価の下押し要因となりやすいのです。企業収益見通しが悪化する懸念や、先行きの経済減速リスクが意識されると、投資家はリスク資産である株式から資金を引き揚げ、安全資産へと避難する傾向が強まります。

一方で、金(ゴールド)市場には追い風となる可能性があります。

金は古くから「有事の避難先」として重宝され、地政学リスクや金融政策の不確実性が高まる局面で価格が上昇しやすい傾向があります。実際、トランプ氏の再登場や各国の通貨不安が意識され始めたここ最近、金のスポット価格は中長期的に上昇トレンドを描いています。下のグラフは2022年から2025年3月までの金価格(月間平均)の推移を示したものです。2022年は一時的な調整があったものの、2023年以降は世界的なインフレや戦争・政情不安も背景にじりじりと価格を切り上げ、2024年には過去最高値を更新する展開となりました。

画像
2022年1月~2025年3月の金スポット価格(月間平均、USD/oz)。 
2024年にかけて金価格は上昇基調を強め、複数回史上最高値を更新した。2025年前半も金は高値圏で推移している。


ご覧のように、金相場は2024年を通じて大きく上昇し、特に2024年末には1トロイオンスあたり2,600ドル台半ばに達して年初来26%超の上昇となりました。この年間上昇率は今世紀に入って指折りの高さであり、市場の構造変化を反映して何度も史上最高値を塗り替える展開(2025年4月現在3,291ドル/oz)となったのです。

背景には、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策転換観測やインフレの長期化、ウクライナ情勢などの地政学リスク、さらにはトランプ氏の通商戦略への警戒感など、様々な不確実要因が存在しました。こうした「将来何が起こるか分からない」局面で、価値の保存手段として金が買われやすくなることが改めて示された格好です。

金価格が上昇するとき、往々にして米ドルは下落基調にあります。一般に金と米ドルは逆相関の関係にあると言われ、ドルが弱いときに金は相対的に価値を増しやすい傾向があります。

トランプ氏のドル安誘導策が現実になれば、ドル建ての金価格がさらに押し上げられる可能性もあります。また各国の中央銀行も備えとして金の保有を増やす動きを強めています。2022~2023年には各国中銀の金購入量が過去最高水準となり、これが金相場を支える一因ともなりました(※参考:世界黄金評議会の統計など)。

総じて、株式市場にとってはトランプ流政策は不安要因となり得ますが、金市場にとっては「安全な避難先」としての需要増加につながる可能性があります。

実際、2024年の金相場はそのような不安定な環境下で力強さを見せました。投資初心者の方も、「株価が荒れる局面では金が上がりやすい」という経験則を覚えておくとよいでしょう。金は配当や利息を生まないため平時には敬遠されがちですが、いざという時の保険としてポートフォリオに一定割合を組み込む価値がある資産です。


日本人の生活への影響:輸入物価の上昇、円安圧力、インフレに注意

では、私たち日本人の暮らしにはどんな影響が及ぶでしょうか。

仮に米国がドル安政策を強行し、各国との経済摩擦が激化するような事態になれば、日本経済にも円相場の変動や物価上昇を通じて影響が波及する可能性があります。

まず考えられるのは、円安圧力の高まりです。

通常、米ドルが安くなれば相対的に円高になりそうですが、現実はそう単純ではありません。仮に世界的に不況懸念が高まれば投資家はリスク回避から円を買う(円高)動きもあり得ますが、一方で日本の超低金利政策が続く限り、「金利の低い円を売って他国通貨や資産を買う」動きも根強く、円が独歩安となるリスクも指摘されています。また、米国のドル安政策に対抗して各国が自国通貨安誘導に動けば、競争的な通貨安(円安)の局面も考えられます。いずれにせよ、円相場が不安定化すると日本の輸入物価を直撃します。円安が進めば海外から輸入するエネルギーや食料、原材料の価格が割高になり、結果として日本国内の物価を押し上げる圧力となります。

実際にここ最近、日本では記録的な物価高が家計を直撃しています。

輸入原材料や燃料価格の高騰が相次ぎ、電気料金やガソリン代、食品価格まで幅広く値上がりしました。背景には、ロシア・ウクライナ危機によるエネルギー価格上昇や世界的なインフレもありますが、急速な円安も一因でした。円安は輸入物価の上昇を通じて強いインフレ圧力を生むことが確認されています。そのため政府も一時、電気・ガス代の補助金などで物価上昇を和らげる策を講じたほどです。

日本の20~40代の若い世代にとって、急激な物価上昇や円安は実感しにくいかもしれません。しかし、以下のような具体的な影響が出る可能性があります。

1. 食料品や日用品の値上げ
輸入小麦や油脂、飼料価格が上がるとパン・麺類、食用油、肉や乳製品などの価格に波及します。既にスーパーでの値上げが続いており、家計負担が増大しかねません。

2. エネルギー・ガソリン代の負担増
原油高や円安でガソリン代や電気・ガス料金が上昇すると、通勤・通学や光熱費の支出が増えます。特に冬場の暖房費や夏場の冷房費がかさむと、可処分所得を圧迫します。

3. 海外旅行や留学費用の高騰
円の価値が下がれば、海外で使うお金の実質負担が増えます。せっかくの旅行も円安だと宿泊費や飲食代が割高に感じられるでしょう。留学や海外赴任では学費・生活費の増加につながります。


また、日本企業に目を向けると、円安自体は輸出企業には追い風ですが、先行きの不透明感が強まると企業が設備投資や賃上げに慎重になり、経済全体の勢いが削がれる恐れもあります。賃金が伸び悩む中で物価だけが上がると、実質所得が目減りして生活水準が下がりかねません。したがって、私たちとしてはインフレと円安から身を守る工夫が一層大事になります。


通貨不安の時代に備える:「無国籍通貨」で資産防衛を

このように通貨を巡る不安要素が高まるとき、資産防衛の手段として注目されるのが金(GOLD)です。

金は世界共通の価値を持ち、どの国の政府や中央銀行の信用にも依存しないため、「無国籍通貨」とも呼ばれます。通貨そのものへの信認が揺らぐ局面では、金のようにどの国にも属さない資産が安心感をもたらすのです。

特に地金型金貨と呼ばれる純金コインは、投資初心者でも手軽に購入・保有できる金の形態として人気です。

地金型金貨とは、金そのものの価値(地金価格)にほぼ連動する投資用の金貨のことです。たとえば英国王立造幣局のブリタニア金貨、オーストリアのウィーン金貨、カナダのメイプルリーフ金貨などが代表的で、世界中どこでも通用する信頼性の高い金貨です。

ブリタニア金貨は英国王立造幣局発行ですが、その価値は金そのものの価格によって決まるため国籍に左右されません。まさに世界で通用する「無国籍通貨」として流通し、経済の混乱やインフレに強い安定資産として知られています。どんな状況でも価値がゼロになることがなく、長期の資産保全手段として優れています。

また「有事に備えて金を持て」と昔から言われるように、通貨への信頼が揺らぐ時代こそ金の価値が際立ちます。

特に紙幣や預金は発行主体の政策(金融緩和や預金封鎖など)によって価値が毀損するリスクがありますが、金の現物はそうしたリスクとは無縁です。金貨であれば小口から買いやすく、保管や売却も比較的容易です。インターネット通販や貴金属店で簡単に入手できるほか、信頼できる業者であれば買い取りもスムーズです。

小川からの提案として、資産の一部をこのような地政学リスクや通貨不安に強い資産に振り向けてみることをおすすめします。

例えば毎月の貯蓄の一部で1/2オンスや1/4オンスの金貨をコツコツ買い増すといった方法でも良いでしょう。

無理のない範囲で金資産を保有しておけば、いざというとき円の価値が下がっても資産全体で見れば目減りを和らげる効果が期待できます。実際、足元のインフレ局面や為替変動で金の有用性を再確認した方も多いのではないでしょうか。


まとめ:不確実な時代に備え、賢く資産分散を

トランプ大統領の「マールアラーゴ合意」構想は、まだ仮説の域を出ないものの「第二のプラザ合意」として市場が無視できないテーマになっています。

4月2日の「解放の日」を経て、彼の打ち出す通商・通貨政策は一段と読みにくくなっており、世界経済や市場への影響から目が離せません。ドル安誘導や関税の強硬策は一歩扱いを誤れば通貨戦争を招き、私たちの暮らしにも円安や物価高という形で跳ね返ってくる恐れがあります。

だからこそ、平時からの備えが大切です。

株式や円建て預金だけでなく、有事に強い金(GOLD)をポートフォリオに組み入れることは有効な防衛策となります。とりわけ地金型金貨は無国籍通貨として信頼され、インフレヘッジやリスク分散に役立つでしょう。

世界のルールが変わる可能性がある時代、金という資産が持つ安心感・安定感は改めて注目されています。不透明感が増す局面でも落ち着いて対応できるよう、資産ポートフォリオを見直してみましょう。不安定な時代こそ、知識を持って賢く備え、チャンスに変える心構えで市場に参加することをお忘れなく。

参考になれば幸いです。


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