2025/11/10

メタが詐欺広告で荒稼ぎ?SNS広告の闇と投資家への警鐘

アメリカのIT大手メタ(旧Facebook)が、驚くべき内部報告をしていました。なんと2024年の年間売上高の約1割(約160億ドル、2兆4,500億円)もの収益を、詐欺広告や販売禁止品の広告から得ていたというのです。メタ傘下のFacebookやInstagram上では、投資詐欺や違法ECサイト、オンラインカジノ、禁止薬物の広告などが少なくとも過去3年間にわたり氾濫していました。内部資料によれば、メタのプラットフォーム上で表示される「高リスク」詐欺広告は1日平均150億件にものぼり、このカテゴリーの広告だけで年間約70億ドルの収益を上げていたとの試算もあります。こうした数字から、メタの広告ビジネスがいかに巨大であるかと同時に、その中に相当数の不正な広告が含まれている実態が浮き彫りになりました。



メタの広告ビジネスと“不正広告”の闇

では、メタは不正広告を野放しにしているのでしょうか。内部文書によると、メタのシステムは不審な広告主を自動検知していますが、「詐欺行為の可能性が95%以上」とAIが判断した場合にのみ広告主を禁止していたといいます。95%未満の「グレー」なケースでは即座に排除せず、代わりに「ペナルティビッド(罰金入札)」と呼ばれる措置を適用しました。これは、怪しい広告主に対して通常より高額の広告料率を課すというメタ独自の対応策で、詐欺業者に広告出稿を思い留まらせる狙いがあったようです。

しかし、この措置によって詐欺広告の件数自体は減っても、一件あたりから得られる収益が上がるため、収益減の一部が相殺される結果になりました。さらに、メタの広告配信アルゴリズムの特性上、一度詐欺広告をクリックしたユーザーには類似の詐欺広告が次々表示される傾向があり、被害が拡大しやすい構造も指摘されています。

この“不正広告”問題が及ぼす社会的影響は深刻です。被害に遭うユーザーは金銭的損失を被るだけでなく、SNSやインターネット全般への信頼も損なわれかねません。実際に、カナダ空軍の採用担当者のFacebookアカウントが乗っ取られ仮想通貨詐欺に悪用され、知人が約4万カナダドル(約436万円)を騙し取られたケースも報告されています。この担当者や同僚が100回以上もMetaに被害を通報したにもかかわらず対応が遅れ、被害を防げなかったといいます。

また規制当局も動き始めており、米証券取引委員会(SEC)はメタが金融詐欺広告を表示している件を調査中であり、英国の金融当局は2023年の決済詐欺被害の54%にメタのサービスが関与していたと発表しています。この数字は他のSNS全体の2倍以上にも上り、メタのプラットフォームが詐欺の温床になっている現状を物語っています。メタ側は「内部資料の数字は大まかで過度に包括的」と反論し、実際の不正広告収入の割合はもっと低いと主張しています。同時に「過去18か月で世界的に詐欺広告のユーザー報告件数を58%減らし、累計1億3,400万件以上の詐欺広告コンテンツを削除した」と成果を強調しています。しかし、「Googleよりもメタの方が詐欺広告を出しやすい」との内部レビュー結果も報じられており、企業としての対応が競合他社に比べ不十分との指摘は拭えません。


世界中で増えるSNS詐欺広告、日本がフィッシング標的になる理由

メタに限らず、SNS上の詐欺広告や詐欺的な投稿は世界的な問題となっています。X(旧Twitter)やInstagramでも、有名人の顔写真を無断使用した投資詐欺広告や、「魔法の副業」「簡単に稼げる〇〇」といった怪しい広告が後を絶ちません。こうしたSNS詐欺の氾濫はグローバルで深刻化しており、各国の利用者が被害に遭っています。なかでも日本は現在、世界で最もフィッシング詐欺メールの標的にされている国だとご存じでしょうか。

米セキュリティ企業Proofpointの調査によれば、2025年2月に世界で観測された新種のメール攻撃の80.2%が日本をターゲットにしていました。4月にはその割合が83.6%に達し、日本は今や世界のフィッシング攻撃の「主戦場」と言える状況です。背景には様々な理由がありますが、まず指摘されるのが言語の壁の消失です。かつて海外からのフィッシングメールは日本語が不自然で見破りやすいものでした。しかし近年は生成AI(ChatGPT等)の飛躍的進化によって、誰でも自然な日本語の詐欺メールやDMを容易に作成できるようになりました。その結果、「日本語が変だから怪しい」という従来の判断基準が通用しなくなっています。むしろ「日本語が自然だから本物だろう」と安心してしまい、巧妙なフィッシングに引っかかるケースが増えているのです。これは私たち日本人の「相手を疑わない」傾向や、日本語への信頼感を逆手に取った新手の戦略と言えます。

加えて、日本人の個人情報はダークウェブ上で高値で取引されるほど価値が高いことも、日本が狙われる一因です。名前・住所・電話番号・クレジットカード情報といった個人情報や、日本企業が持つ顧客データは詐欺グループにとって格好の獲物であり、リターンの大きい「優良市場」と認識されています。要するに、日本相手の詐欺は成功率が高く儲かるので、犯罪リスクを冒してでも狙う価値があると見なされてしまっているのです。さらに最近では、AmazonやApple、楽天、銀行・証券会社など日本で利用者の多い有名ブランドを騙ったフィッシング詐欺が急増しています。

手口も高度化しており、Proofpointは「CoGUIフィッシングキット」という高度なツールの存在を指摘しています。このツールは地域やユーザーを選択的に狙い撃ちできる機能を持ち、今まさに日本人ユーザーを重点的に攻撃するために使われているとのことです。結果として、私たちは日常生活の中で常にフィッシング詐欺の危険と隣り合わせになっています。たとえば寝起きの朝に届いた一通のメール仕事の休憩中にスマホに来たメッセージ。判断力が鈍りがちな隙を狙って、「未納料金があります」「アカウントが不正利用されています!至急対応を」といった緊急を装う文面でリンクをクリックさせようとしてくるのです。「自分は騙されない」と思っていても、自分が普段使っているサービス名で来たらつい信用してしまった…ということは誰にでも起こり得ます。

このように、日本は残念ながら世界有数の詐欺標的国となっており、SNS上でも巧妙な詐欺広告・詐欺投稿が流れてくる可能性が高いと言えます。だからこそ重要なのが、次に述べる私たち一人ひとりのリテラシー向上です。


日本人に求められる「ITリテラシー」と「AIリテラシー」

被害に遭わないために、まず私たち利用者側が賢くなることが求められます。残念ながら国際比較では、日本人のサイバーセキュリティ知識や警戒心は必ずしも高いとは言えないのが現状です。ある調査では、日本人のオンライン上の安全習慣やツール利用の知識は世界ワースト2位という結果も出ています。中でも深刻なのは、フィッシング詐欺サイトの見分け方を知っている人がわずか17%しかいなかったというデータです。これでは詐欺メールや偽サイトに多くの人が引っかかってしまうのも無理はありません。

まずは基本的なITリテラシーとして、メールやSMSに記載された不審なリンクは絶対にクリックしない少しでも怪しいと感じたら公式サイトや公式アプリから自分でアクセスし直すログインや決済前にURLや証明書の有無を確認するといった習慣を徹底する必要があります。銀行や公的機関がメールやSNSで緊急連絡をしてくることは通常ありませんので、「急いで対応しろ」という内容のメッセージほど一呼吸置いて真偽を確かめましょう。また二要素認証(SMSや認証アプリでの追加認証)を設定しておくことも被害防止に有効です。万一パスワードが漏れても、第二の鍵があれば被害を最小限に抑えられます。

さらに忘れてはならないのがAI時代のリテラシー(AIリテラシー)です。先述の通り、現在の詐欺は高度なAI技術によって私たちの盲点を突いてきます。たとえば、「日本語が上手だから本物」とは限らないこと、合成音声やディープフェイク動画で著名人になりすます詐欺が現実に起きていることなど、AIが悪用され得る現実を理解しておくことが大切です。

今後は詐欺メールだけでなく、AIチャットボットを使った詐欺相談や、AI画像生成による偽の商品・偽プロフィールなども増えるかもしれません。「コンピュータが作り出したものは本物そっくり」という前提で、情報を疑う目を持つ。これがAIリテラシーの第一歩です。反対に、私たちもAIを活用して身を守ることもできます。迷惑メールフィルタやセキュリティソフトはもちろん、怪しいメッセージを受け取ったときにChatGPTなどに「これって詐欺っぽい?」と質問してみるのも一つの手でしょう。AI時代にはAIに振り回されない知識と、AIを逆に道具として活用する知恵の両方が求められます。

日本では政府や教育機関もデジタル教育に力を入れ始めています。小中学校でのプログラミング教育や情報モラル教育、生成AIのガイドライン策定など、今後若い世代のリテラシーは徐々に向上していくでしょう。しかし、私たち自身も「今さら聞けない…」ではなく、自ら学び続ける姿勢が大切です。幸い、インターネット上にはセキュリティ対策の情報やクイズ形式の学習サイトも多数あります。日頃から最新の詐欺事例や対策をチェックし、「自分は大丈夫」と油断せずアップデートしていきましょう。「フィッシング詐欺は誰にとっても身近な脅威」。この意識を持つことが、被害防止の第一歩です。


投資家にも求められる「社会に貢献する視点」

ここまでSNS上の詐欺問題を見てきましたが、この問題は単なる利用者側のリテラシーに留まらず、企業や投資の在り方にも一石を投じています。冒頭で述べたメタ社のケースは、その好例でしょう。メタは米国株式市場を代表する巨大ハイテク企業であり、その業績や株価は多くの投資家の関心を集めています。しかし、その10%もの収益源が詐欺的な広告に依存していたとなれば、「儲かりさえすれば手段は問わないのか?」という疑問が浮かびます。実際、市場ではメタのような大型ハイテク株(いわゆるGAFAなど)が指数を牽引していますが、一方で今回の報道に触れた投資家の中には「自分の資金が結果的に社会にマイナスを及ぼす行為を支えてしまっているのではないか」と不安や疑問を感じた人もいるでしょう。

投資の世界ではしばしば「株主利益の最大化」が最優先と語られ、企業も利益追求を至上命題としてきました。もちろん投資家にとってリターンを得ることは大事ですが、「儲かればそれで良い」という姿勢だけでは、長い目で見て持続可能な豊かさは得られないかもしれません。仮にメタがこのまま不正広告を放置し続け、ユーザー離れや大規模な罰金・訴訟に発展すれば、業績悪化で株価も下落し、結局は投資家も損失を被るリスクがあります。

逆に言えば、企業が健全で透明性の高いビジネスを行い、社会から信頼されることが、結果的に投資リターンの安定にも繋がるのです。最近ではSNS上で一般消費者が企業の倫理や社会貢献度を厳しくチェックし、不祥事があればボイコット運動が起きることもしばしばです。企業にとって「社会に悪影響を与えない」「むしろ社会課題の解決に寄与する」ことがブランド価値となり、ひいては株価評価にも影響する時代になっています。

こうした中で、私たち個人の投資家も「お金の流れで社会をより良くできるかもしれない」という視点を持つことが重要になっています。投資先の企業がどんなビジネスモデルで収益を上げているのか、その裏側に不正や搾取、環境破壊などはないか、少し立ち止まって考えてみるだけでも、投資の意味合いが変わってくるでしょう。

もし自分が知らずに応援していた企業が、実は詐欺的手法で荒稼ぎしていたら嫌な気持ちになりますよね。幸い、企業の情報開示も進んでおり、サステナビリティレポートや第三者評価などで企業の社会的側面を知る手段も増えています。単に四半期決算の数字だけでなく、「この会社は社会にとってプラスだろうか?」と問う習慣をつけてみると、投資の世界がまた違って見えてくるはずです。


「心ある投資」とは?ESG投資やエシカル投資との違い

近年、「社会に貢献する投資」としてESG投資エシカル投資といった言葉を耳にすることが増えました。まず簡単にこれらの概念を整理してみましょう。

⚫︎ESG投資
環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)という3つの観点で企業を評価しようという投資手法です。従来は企業の売上や利益率など財務情報が投資判断の中心でしたが、ESG投資では「環境に優しいか」「社会に対して責任ある行動をしているか(人権や労働環境、製品安全など)」「経営の透明性・コンプライアンスは高いか」など非財務情報も重視します。たとえば、再生可能エネルギーに力を入れている企業や、ダイバーシティ経営で従業員を大切にしている企業、内部統制がしっかりして不祥事の少ない企業などがESG的に高評価となります。近年、世界の機関投資家や富裕層の間でESGを意識した投資が急増しており、若い富裕層の40%超が資産運用にESG視点を求めるとのレポートもあります。ESG投資は「持続可能な社会の実現」と「長期的な企業価値向上」の両立を目指すものとして注目されています。

⚫︎エシカル投資
エシカル(ethical)とは「倫理的な」「道徳上の」という意味です。エシカル投資は、自分の倫理観や社会正義に照らして応援したい企業・業種に投資する、または自分が良心的に支持できない企業には投資しないというアプローチです。たとえば武器製造やタバコ・ギャンブル産業のように社会的弊害が指摘される業種を投資対象から除外したり、途上国支援や地域貢献を積極的に行う企業のみを選んだりするのがこれに当たります。ESG投資と重なる部分もありますが、どちらかというと個人の価値観に基づくポートフォリオ構築という色合いが強いでしょう。「利益よりも信念を優先する投資」とも言えます。たとえば「環境問題に加担する企業はたとえ儲かっても買わない」「児童労働や動物実験に反対だから、そうしたことをしない企業に絞って投資する」といった具合です。エシカル投資信託など商品化も進んでおり、共感するテーマに沿って初心者でも始めやすくなっています。

では「心ある投資」とは何でしょうか。一言で定義するのは難しいですが、私は「お金を投じる相手に心を配る投資」だと考えています。つまり、数字の裏にいる人々の存在や社会への影響に思いを致しながら行う投資です。ESGやエシカル投資と基本的な方向性は同じですが、もっとシンプルに「自分の投資行動が誰かの笑顔につながるかな?」と想像してみることかもしれません。

たとえば、あなたがある食品会社の株を買ったとします。その会社が安全で美味しい食品を届け、人々の健康や幸せに貢献しているなら、それは心ある投資と言えるでしょう。一方で、たとえ成長株でも、そのビジネスモデルが詐欺まがいで消費者を不幸にしているなら、心ある投資とは言えませんよね。

心ある投資は決してボランティアや寄付と同じではなく、適正なリターンも追求しながら社会にもプラスをもたらす「両利き」の考え方です。実際、インパクト投資と呼ばれる領域では、教育支援や医療普及など社会課題の解決に取り組む事業へ投資しながら経済的リターンも得る取り組みが世界で広がっています。これはまさに「心(社会課題解決への共感)と財布(投資利益)の両方を大事にする」投資と言えるでしょう。投資初心者の方でも、まずは身近な製品やサービスを提供している企業に注目してみてください。「このブランドは好きだけど、環境への取り組みはどうかな?」「最近ニュースになったあの問題、しっかり対応しているかな?」と調べてみると、その企業への見方が変わるかもしれません。SNSや公式サイトで企業の姿勢が発信されていることも多いのでチェックしてみましょう。それでも判断が難しい場合は、ESG評価の高い企業をまとめたインデックスや、テーマ型の社会貢献投資信託などを利用する方法もあります。プロが企業の社会性を評価して組成した商品を活用すれば、自分一人で全てを分析できなくても心ある投資を実践しやすくなります。

大切なのは、「この投資で誰がハッピーになるかな?」と想像してみることです。自分だけでなく、社会全体がハッピーになれる投資であれば、きっと長期的にも実りある結果をもたらしてくれるでしょう。逆に誰かの不幸の上に成り立つような儲け話は、いずれ綻びが生じるものです。これから、そしてこれからも資産形成をしていく皆さんには、ぜひ「心ある投資」というキーワードを頭の片隅に置いておいてほしいと思います。私たち一人ひとりの投資行動が集まれば、資本の流れを変え、社会の在り方をも変えていく力があります。お金にも心を持たせる――そんな気持ちでこれからの投資に一緒に向き合っていきましょう。


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