最近、オフィス用品通販大手のアスクルや飲料大手のアサヒグループホールディングス(アサヒHD)など、日本の大企業が相次いでサイバー攻撃(ランサムウェア被害)に遭いました。アスクルでは受注・出荷システムが麻痺し、自社ECサイトが停止。配送を委託されていた無印良品のネットストアにまで影響が及びました。アサヒHDでも工場出荷が一時ストップし、復旧まで業務に大きな支障が出ています。これらは「便利」なデジタルシステムが突然使えなくなる現実を突きつけました。サイバー攻撃は決して他人事ではなく、証券会社や銀行・保険といった金融機関も決して安全圏ではありません。今回は、最新の事例から浮かび上がる“デジタルの闇”と、その一方で見直される実物資産(たとえばブリタニア金貨)の強みについてお話ししたいと思います。
・大企業を襲ったサイバー攻撃の現実 ・“闇のマニュアル化”するランサムウェア攻撃 ・デジタル化の恩恵と隣り合わせのリスク ・ステーブルコインも次の標的に?新しい電子決済の危険性 ・デジタル時代に光る実物資産の安心感 ・まとめ:脅威のリアルさと資産防衛の心構え ・書籍紹介
大企業を襲ったサイバー攻撃の現実
2025年秋、日本を代表する大企業が立て続けにランサムウェア攻撃を受けました。9月末に被害公表したアサヒHDは、サイバー攻撃により国内の製造・出荷システムが停止。一時はキャンペーン中止や商品の出荷見合わせに追い込まれ、10月2日から順次工場稼働を再開したものの、同月14日には個人情報流出の可能性まで公表する事態となりました。10月中旬にはアスクルがランサムウェア感染を発表し、受注・出荷業務を停止。さらに物流子会社に業務を委託していた良品計画(無印良品)も、自社のオンライン注文を停止せざるを得なくなりました。サプライチェーン全体にまで影響が及んだのです。
これらのケースが示すのは、現代の企業活動がいかにITシステムに深く依存しているかという事実です。システム障害が実際の物流や生産ラインまで止めてしまうことは、もはや珍しくありません。サプライチェーンが高度にデジタル連携され効率化しているほど、一箇所の想定外トラブルが全体へ波及する傾向があります。言い換えれば、便利さと効率を追求した緻密なシステムほど、一撃を受けたときの被害も大きくなりがちなのです。
注目すべきは、こうしたサイバー攻撃が特定の業種に限られていないことです。今回は通販や食品メーカーでしたが、専門家によれば金融機関や病院、インフラ事業者など「身代金要求が効果的なところ」に攻撃が集中し始めているといいます。証券会社や銀行だから安全、といった保障はなく、むしろ社会的インパクトが大きい分、標的となりやすいのが現実です。「サイバー攻撃はもはや災害だ」という声も聞かれるほど、企業にとって深刻な脅威となっています。実際、攻撃者は対策が手薄になりがちな週末を狙うなど巧妙さを増しており、一度に複数企業が麻痺する“連鎖”も起こり得ます。こうした状況下で重要なのは、「自分の会社は大丈夫」と油断せずに正しく恐れること。金融業界を含め、あらゆる企業・投資家がサイバーリスクへの認識を新たにすべきフェーズに来ています。
“闇のマニュアル化”するランサムウェア攻撃
では、なぜ最近これほどサイバー攻撃が多発し被害が拡大しているのでしょうか。その背景の一つに、ランサムウェア攻撃の「サービス化」があります。近年、闇市場ではRansomware as a Service(RaaS)と呼ばれる違法な“サブスク”型ビジネスが隆盛しています。簡単に言えば「ランサムウェア使い放題プラン」のようなもので、攻撃に必要なツール一式が提供され、手順を解説した親切なマニュアルまで付属し、さらにはサポート窓口まで用意されています。まるで闇のスタートアップ支援パッケージですね…。専門的なプログラミング知識や高度なハッキング技術がなくても、利用料さえ支払えば誰でも簡単にランサムウェア攻撃を実行できてしまうのです。
昔のサイバー犯罪者像といえば「高度な技術を持つ一部のハッカー」でした。しかしRaaS時代の今、知識の乏しい素人でも“副業感覚”で攻撃者になれる現実があります。ランサムウェア攻撃の民主化、と言ってもいいでしょう。その結果、狙われる企業の裾野は爆発的に広がりました。「自分はITに詳しくないけど、闇バイト感覚でやってみよう」という犯罪予備軍まで出現しているということです。攻撃を行うハードルが下がった分、私たち企業側・利用者側にとってはリスクが格段に高まっています。
たとえば金融業界でも、「うちは小さな証券会社だから標的にならない」と考えるのは危険です。攻撃者にとって会社の規模は関係ありません。実際、中小企業のシステムが乗っ取られ、大企業との取引データを人質にとられるケースも発生しています。サイバー攻撃の敷居が下がった今、どんな組織も狙われ得る時代です。
デジタル化の恩恵と隣り合わせのリスク
私たち投資家や経営者は、デジタル技術の恩恵を日々享受しています。スマホひとつで株や投信の売買ができ、ネットバンキングで24時間送金が可能。暗号資産や電子マネーで国境を越えた即時決済も夢ではありません。こうしたデジタル化による便利さは、資産運用の世界でも飛躍的な効率化と新たなチャンスをもたらしました。
しかし、その便利さと表裏一体なのがデジタルのリスクです。すべてがネットワークで繋がる現代社会では、一部のITシステムに障害や攻撃が起きると、その影響は予測不能な範囲にまで広がります。まさに今回のアスクルの例がそうでした。ITやクラウドは今や社会インフラの一部であり、ひとたびトラブルが起これば連鎖的にサービス停止が波及します。金融機関に置き換えると、証券会社の基幹システムやオンライントレードがダウンすれば、多くの顧客資産が一時的に凍結状態になったり、取引機会を逃したりする可能性があります。
また、サイバー攻撃者もこの状況を熟知していて、より効果的に被害を与える手口へと進化しています。近年主流のランサムウェアは「二重脅迫型」と呼ばれ、システムを暗号化して止めるだけでなく、内部の重要データを事前に盗み出した上で「身代金を払わなければ盗んだ情報を公開する」と脅すようになりました。単に業務停止による損害だけでなく、機密情報の漏洩リスクまで企業は負うことになります。金融機関であれば顧客の資産データや個人情報が流出する恐怖もありますよね。
要するに、デジタル技術の発達で私たちは便利になった反面、「止まると大変なもの」を増やしすぎてしまったとも言えます。便利さの裏には常に“デジタルの闇”が潜んでいる――このリアルをしっかり踏まえることが、これからの時代に資産を守る上で非常に大切です。「便利だから全部デジタルでOK!」ではなく、「便利だけど、万一止まった時はどうするか?」と常に問いかける姿勢が求められています。
ステーブルコインも次の標的に?新しい電子決済の危険性
デジタル化の波は伝統的な金融だけでなく、暗号資産やフィンテック領域にも及んでいます。中でも注目されるのがステーブルコインと呼ばれるデジタル通貨です。ステーブルコインは法定通貨(円やドル)と価値が連動する暗号資産で、その利便性から決済や送金で急速に存在感を高めています。たとえばUSドル連動のステーブルコインを使えば、土日でも瞬時に大金を海外送金できるといった具合で、将来の金融インフラになる可能性も秘めています。
しかし、便利でお金が集まるところにはリスクも集まるのが世の常です。専門家は「暗号資産市場全体が4兆ドル規模に拡大する中、ステーブルコインも高度なサイバー攻撃に晒されている」と警鐘を鳴らしています。実際、オンチェーン上で巨額の取引が行われるのを見て、国家ぐるみのハッカー集団や犯罪組織が虎視眈々と狙っているという指摘もあります。デジタル通貨の裏付け資産を管理するサーバーやウォレットが乗っ取られれば、理論上は大規模な不正送金や資産奪取が起こり得ます。現に2022年にはアルゴリズム型ステーブルコインの崩壊や、DeFi(分散型金融)プラットフォームから巨額の資金が流出する事件もありました。それらはハッキングやシステム欠陥が一因でした。
ステーブルコイン自体は新しい技術ゆえに規制当局も注視していますが、逆に言えば完全に整備された安全網がまだありません。「デジタル金庫」に巨額の資産が集まれば、泥棒もより狙ってくるのは当然です。今後、中央銀行デジタル通貨(CBDC)など公的な電子マネーが普及しても、同様のサイバーリスクはついて回るでしょう。便利で革新的なシステムほど、それを守るセキュリティの重要性が飛躍的に高まっているのです。
投資家としては、新しいデジタル金融商品やサービスを利用する際、「どんな便利さがあるか」だけでなく「どんな最悪の事態が起こり得るか」もシミュレーションしておくべきでしょう。残念ながら、「絶対に安全」と言い切れるデジタルサービスは存在しません。ステーブルコインであれネット証券であれ、常に“落とし穴”を意識しておくことが、資産防衛の第一歩です。
デジタル時代に光る実物資産の安心感
ここまでデジタル社会の闇の部分を見てきましたが、だからといって便利さを捨てて昔に戻ることはできません。オンライン取引も電子決済も現代を生き抜く上で欠かせませんよね。ただ一方で、「デジタルに依存しない資産」を一部に持つ重要性も改めて感じられます。そこで注目されるのが実物資産、たとえば金(GOLD)です。
金は有史以来その価値を世界中で認められてきた資産です。中でも地金型金貨は、投資用に発行される純度の高い金貨で、世界各国で発行されています。たとえばイギリスのブリタニア金貨は1987年から発行が始まった代表的な投資用金貨です。南アフリカのクルーガーランド金貨やカナダのメイプルリーフ金貨などと肩を並べ、イギリスを代表する地金型金貨として世界中の投資家に親しまれています。ブリタニア金貨は純度の高さはもちろん、毎年デザインが変わる美しさからコレクターにも人気ですが、本質は「手に取れる安心感」にあります。
デジタル資産と対照的に、実物の金貨はハッキングされる心配がありません。インターネットに繋がっていないのでサイバー攻撃で盗まれることもなく、極端な話、世界中のサーバーがダウンしても目の前の金貨の価値は失われません。たとえばブリタニア金貨1オンスなら、含まれる純金としての価値が常に国際相場で担保されています。実物資産は価値の基盤が「現物そのもの」なので、データ改ざんやシステム障害の影響を受けにくいのです。
もちろん、金や金貨にも価格変動リスクや保管コストなどはあります。しかし、サイバー脅威が高まる現代において、実物資産が持つ「ゼロリスクにはならないけれど異質のリスク」という性質が際立っています。株やデジタル通貨とは異なる値動きをする金は、ポートフォリオの分散投資先として有用ですし、何より「手元にある」という安心感はお金には代えられません。ブリタニア金貨のように世界共通で価値が認められる資産であれば、いざという時の換金性も高いですし、資産の一部を現物で保有しておくことは資産防衛の選択肢として有力です。
まとめ:脅威のリアルさと資産防衛の心構え
サイバー攻撃というと一見自分とは遠いハイテク犯罪のようですが、その影響は確実に私たちの身近なお金やサービスに及んでいます。証券会社の顧客口座でさえ、システム次第で一時的に凍結されうる時代です。便利さの裏にあるデジタルの闇を直視し、「起こり得る最悪」を想定した上で便利さを享受するしたたかさが、これからの投資家には求められているのでしょう。
一方で、何もかもがデジタルになる時代だからこそ、アナログで普遍的な価値を持つものが逆に新鮮な安心感をもたらしてくれます。金貨や地金といった実物資産は、サイバー空間のトラブルに影響されない強みがあります。脅威がリアルだからこそ、守りの手段もリアルに。デジタルと実物、両方の特性を理解してバランスよく資産を持つことが、現代ならではの賢い備え方なのかもしれません。参考にしてください。