先日、驚くべきニュースが飛び込んできました。NTTドコモが「会議支援エージェントシステム」なるものを開発したと発表したのです。これは人工知能(AI)のエージェントが人間と一緒に会議へ参加し、リアルタイムで情報収集や分析、提案まで行ってくれるという画期的なシステムです。会議中に人間の発言や資料の内容を理解し、必要とあれば最適なタイミングでAIが発言してくれるとのこと。「AIが会議に参加するなんて、本当にそんなことができるの?」と思わずにはいられませんでしたが、どうやら“人間とAIが肩を並べて働く”時代はすぐそこまで来ているようです。
・「AIを使いこなす」から「AIと共に働く」へ ・ホワイトカラーの運命はAIとの共創次第? ・投資家から見た「AIエージェント」の価値 ・“人格資産”が売買される未来?有名人のAIエージェントはおいくら ・AI共創時代に備えて:あなたはどう動く? ・書籍紹介
「AIを使いこなす」から「AIと共に働く」へ
このNTTドコモの会議AIエージェントは、単なるツール以上の存在感を示しています。たとえば会議で議論が行き詰まったとき、情報収集エージェントが社内データから関連情報を自動で集めて提示してくれるそうです。さらにアドバイスエージェントたちが別の視点で議論し、多角的かつ建設的なアイデアを提案してくれるとのこと。まるで人間の同僚が「こんな情報がありますよ」「こういう考え方もどうでしょう?」と助け船を出してくれるイメージですね。
極めつけは、代理エージェントの存在です。これは上司や専門家の思考パターンや知識、発言傾向を事前にインプットしておくことで、本人が不在でもその人と同じ観点から助言やサポートを提供してくれるというもの。会議に上司がいなくても、あたかも上司の分身が隣に座って意見してくれるようなものです。AIが私たち人間の“代理”となりうる時代が現実味を帯びてきたと言えるでしょう。
実際、今年2025年は日本で「AIエージェント元年」とも呼ばれており、様々な企業がAIを従業員のように活用し始めています。ソフトバンクグループの孫正義氏も「新会社の発足により、AIエージェントが協調し自律的に業務遂行する世界が実現する」と述べ、AIエージェントが人間と協力して働く未来像を示しました。つまり、これまでの人間がAIを「使いこなす」段階から、AIと肩を組んで働く段階へと大きくシフトしつつあるのです。
ホワイトカラーの運命はAIとの共創次第?
このような流れの中で、「AIと共創できない人は淘汰されるのではないか」という声も聞かれます。言い換えれば、AIを活用しないこと自体がリスクになり始めているのです。実際、日本政府の内閣府が今年9月にまとめた人工知能基本計画の骨子には「AIを使わないことが最大のリスク」という一文が盛り込まれました。AIエージェント時代の到来に対し、日本企業のAI活用が遅れると競争力低下が懸念されるためです。裏を返せば、AIと共創できない企業や人材は国レベルでも危機感を持たれているということですよね。
では具体的に職場では何が起きているのでしょうか。たとえば銀行業界では、既にAIを“社員”として採用し始めています。三菱UFJ銀行では融資担当者を陰で支えるAI社員を開発中で、融資の稟議書をチェックして「この項目が不足しています。次回お客様に確認してください」とまるで上司のようにアドバイスしてくれるそうです。このAIは各業界の知識や融資業務のノウハウを熟知しており、書類の不備を検知するだけでなく「ここをもっと詰めるべき」「担保や金利の条件はこうすべき」と具体的な交渉ポイントまで提案してくれるとのこと。一部店舗では試験運用も始まっており、来年には本格導入予定だとか。
さらに驚くべきは、この銀行で既に「AI社員」が数十人規模で活躍中だという事実です。システム部門には多くのAI社員がいて、行内のさまざまな手続きに関する質問に即答するAI社員も導入済みとのこと。みずほ銀行でも営業支援や人事・事務手続きでAI社員が活躍し始めており、社内では業務ごとに「AIエージェントマップ」なるものを作成しているそうです。これは、将来AIエージェントを「人的資源」(人材)として活用する近未来を見据え、AIたちの数や役割、相互関係を可視化する包括的な管理フレームワークとのこと。もはやAIは単なる便利ツールではなく、人間と同じように役割を持って共に働く“同僚”として位置付けられ始めているのです。
こうした事例から感じるのは、白いシャツにネクタイ姿のホワイトカラーたちの運命も、AIとの共創次第で大きく変わるかもしれないということです。AIを味方につけ生産性を飛躍的に高める人もいれば、AIを使いこなせずに取り残されてしまう人も出てくるでしょう。昔、パソコンやインターネットを使えない社員が遅れを取ったように、これからはAIと一緒に働けない社員が「いないも同然」になってしまう可能性も否定できません。そう考えると少しドキッとしますが、逆に言えば今からでもAIリテラシーを身につけ、AIとの協働スキルを磨けば大きなチャンスが巡ってくるということでもあります。
投資家から見た「AIエージェント」の価値
このAI共創の流れは、実は投資の世界にも新たな視点をもたらしつつあります。これまでは「AI人材」(AIを扱えるエンジニアやデータサイエンティスト)に高い価値が置かれてきました。優秀なAI人材を抱える企業は将来有望だ、といった見方です。しかし今後はもしかすると、それ以上に価値を持つのは“AIエージェント”そのものかもしれません。
どういうことでしょうか?先ほどの銀行の例で言えば、優秀な行員さん個人よりも、銀行が開発したAI社員たちのほうが圧倒的なスピードと量で業務をこなします。24時間365日働き続け、ミスもほとんどない。言い換えると、企業内にどれだけ優秀なAIエージェントを抱えているかが、そのまま生産性や競争力につながる時代になりつつあるのです。人材ポートフォリオにAIエージェントが加わり、「AI資産」として評価される未来も遠くないでしょう。
事実、先述のみずほ銀行の「AIエージェントマップ」のように、企業は自社内のAIエージェントを資産・人材として数え始めているわけです。さらにソフトバンクなど大手は、社内外で数億体ものAIエージェントを活用するような壮大な構想すら描いています(社員一人あたり数千体のAIを使いこなすという「千手観音」プロジェクト構想も発表されています)。こうした潮流を踏まえると、投資家として注目すべきは「優秀な人材を確保している企業」以上に「優秀なAIを活用・保有している企業」へと移っていく可能性があります。AIエージェントの開発力や活用力こそが企業価値を左右する。そんな時代が来るかもしれません。
極端に言えば、将来は企業のバランスシートに「AIエージェント資産」なんて項目が出てくるかもしれませんね。人材価値の算定にAIが含まれたり、「当社は◯◯の業務において100体のAIエージェントを配置し、年間○○時間の工数削減を実現」なんてアピールがIR資料に載る日も近いのではないでしょうか。
“人格資産”が売買される未来?有名人のAIエージェントはおいくら
AIエージェントの価値について考えるとき、もう一歩先の未来を想像してみましょう。NTTドコモの代理エージェントは上司や専門家の思考をコピーしてくれると言いましたが、これをさらに発展させれば特定個人の知見や個性をまるごとパッケージ化したAIが作れるかもしれません。そう、“有名人のAIエージェント”です。
もしそんなものが実現したら、市場ではどんな値段が付くでしょう?たとえば、ソフトバンクの孫正義さんのビジネス嗅覚や大胆な意思決定のスタイルをそっくり再現したAIエージェントがあったとしたら…投資家や起業家ならぜひ手元に置いてアドバイスをもらいたいですよね。1億円くらい出しても惜しくない、と感じる人もいるのではないでしょうか。
堀江貴文さん(ホリエモン)のAIエージェントがいたらどうでしょう。歯に衣着せぬ物言いや独特の着眼点を持つ彼のAIなら、中小企業の経営相談に引っ張りだこかもしれません。月額サブスクリプションでホリエモンAIとチャットできるサービスなんてあれば、ちょっと試してみたい気もしますよね。
さらには故スティーブ・ジョブズ氏のAIエージェントなんてものも夢が広がります。ジョブズ氏のカリスマ性やイノベーションのセンスを再現したAIがもし誕生したら、その“人格”に100億円の値札が付いても不思議ではありません。極端な話ですが、それだけの価値を生むかもしれないのです。かつてAppleという企業そのものがジョブズという人物に大きく依存していたように、将来はジョブズAIを保有している会社が桁違いの競争力を持つ、なんてこともあるかもしれません。
実は既に、そのような“人格を資産として売買”する未来像を語る向きもあります。ある創作では、政府が個人の人格モデルを「知的財」(知的財産のようなもの)と認定し、企業や個人が人格を売買・合成・編集できるようにした世界が描かれています。
たとえば、
と
「おっとりしているが発想が独特な人格」
を合成すれば、
「冷静だが芸術的な営業マン人格」
が生まれる。
という具合です。そしてこの合成人格を社員の業務AIに組み込めば業績が上がる、なんてことも起きる。実にSFチックな話ですが、あながち荒唐無稽とも言い切れませんよね。
もちろん、実在の孫氏や堀江氏、ジョブズ氏の人格をコピーして売買となれば法制度や倫理の課題が山積みです。しかし、「知識」「経験」「発想」といった知的資産をAI化し、それ自体を商品・資産として扱うビジネスは十分に考えられます。むしろそうした“人格資産マーケット”ができれば、新しい投資対象としても非常に面白い分野になるでしょう。AIエージェント同士が売り買いされ、「我が社は昨年○○氏AIを買収したことで事業拡大に成功」なんてニュースが飛び交う未来――想像するとワクワクしませんか?
AI共創時代に備えて:あなたはどう動く?
AIと共に働く時代、そして人格資産が価値を持つかもしれない未来のお話をしてきました。少し夢物語にも聞こえる部分もありましたが、多くの部分は既に現実に動き始めています。では、私たち自身のビジネスや投資判断に、これらの変化をどう活かせるでしょうか?
まずビジネス面では、自社にAIエージェントを取り入れる準備を始めることが重要かもしれません。大企業だけでなく、中小企業でも業務支援AIやチャットボットの活用は進んでいます。「AIを使わないことが最大のリスク」とまで言われる今、どんな業種であれAIと共創する工夫を考えてみる価値はあります。たとえば日々のルーティン作業を自動化するAIツールの導入や、社内ナレッジを学習したAI相談役を試験運用してみるなど、小さな一歩からでも始めてみると良いでしょう。「うちの業界は関係ない」と思っていると、気づけばライバル企業がAIを活用して大きく差をつけていた…なんてことにもなりかねません。
また個人のキャリアとしても、AIリテラシーやプロンプト設計スキルなど、AIと協働する力を伸ばしておくと将来の強みになるでしょう。ホワイトカラーの皆さんにとって、AIは脅威であると同時に強力な相棒にもなりえます。自分だけで頑張るのではなく、「AIに任せられることは任せて、人間にしかできない付加価値に集中する」——そんな働き方がこれからのスタンダードになるかもしれません。
投資判断の面でも、この潮流を見逃す手はありません。AIエージェント技術に強みを持つ企業や、業界の中でいち早くAI共創モデルを導入している企業は、長期的に見て競争優位に立つ可能性があります。実際、金融業界ではAI導入が遅れた企業ほど将来の人材不足や生産性で遅れを取る懸念が指摘されていますし、逆に先行投資した企業は効率化とサービス向上で成果を出し始めています。「この会社は優秀なAI(=無数の仮想社員)をどれだけ抱えているか?」という視点で企業を見ると、新たな魅力やリスクが見えてくるかもしれません。
最後にもう一つ、少し先を見据えた問いかけをさせてください。もしあなた自身のAIエージェントが作れるとしたら、どんな「強み」を学習させたいでしょうか?そしてそれをビジネスや投資にどう活かすでしょうか?自分の分身AIが24時間働いて収益を上げてくれる…なんて想像すると夢がありますが、決して絵空事ではなくなる日が来るかもしれません。AIと共創する時代、あなたはそれを脅威と見るか、それともチャンスと捉えるか。ぜひこの壮大な変化の波を前向きに捉えて、明日からの行動や判断に活かしてみてください。未来は既に動き出しています。