・東京一極集中が生む税収格差 – 「多摩川格差」とは何か ・抜本改革先送りのツケ – 国依存の歪みが招くもの ・自治体も個人も「自立」が鍵を握る ・依存から自立へ — 明日へのDEVOTION ・書籍紹介
東京一極集中が生む税収格差 – 「多摩川格差」とは何か
地方創生が叫ばれる中で、地域経済の活性化には何が必要なのでしょうか。そのヒントは、自治体が「国におんぶにだっこ」なのか「国から自立」できるかにあるかもしれません。最近話題となった日経記事『小池都政が広げた「多摩川格差」 地方税、抜本改革先送りのツケ』では、東京都と周辺地域との税収格差、いわゆる「多摩川格差」にスポットが当たりました。多摩川を境に東京23区と川崎市など隣接県で財政力や行政サービスに大きな差が生じている現状を指す言葉です。
東京都は巨額の税収を背景に子育て支援など充実したサービスを提供できます。たとえば東京都では0~18歳への月5,000円給付や給食費無償化、小児医療費18歳まで無償化、高校授業料無償化など、全国トップクラスの施策が実施されています。一方で多摩川を渡った川崎市では、比較できる施策は中学生までの小児医療助成(1回500円負担)程度にとどまり、その他の支援は東京都に遠く及びません。この差こそが「多摩川格差」と呼ばれる所以であり、東京と周辺自治体との財政力の違いが子育て世代にも実感されているのです。
では、なぜこれほど差がつくのでしょうか。背景には税収の偏在があります。東京都には企業本社が集中し、法人住民税や法人事業税といった「法人2税」による収入が突出しています。実際、2018年度の都税収入は約5.2兆円と全国の地方税収約39.4兆円の13%超を占め、人口比約10%を大きく上回っています。東京都財政は法人2税への依存度が高く、都税収入の約36%が法人住民税・法人事業税で占められており、企業集積の恩恵を強く受けているのです。
一方、川崎市など周辺自治体には通勤で東京に働きに出る住民が多いものの、企業本社は少なく、自前の税収は限られます。川崎市の年間予算規模は約1.8兆円で、約18兆円の東京都の10分の1程度に過ぎません。さらに川崎市は政令指定都市として県の業務も肩代わりしていますが、その財源措置が不十分で毎年約231億円もの市税を持ち出して県事業を担っている構造的問題もあります。財政規模の違い以上に、税収が東京に集中し過ぎている制度上のゆがみが「多摩川格差」を生んでいるのです。
抜本改革先送りのツケ – 国依存の歪みが招くもの
この税収偏在の問題に対し、総務省は東京一極集中を是正する地方税制改革に乗り出しました。専門家検討会で税収集中の原因を分析し、今年11月をめどに制度案をまとめる方針です。特に東京都と周辺県との税収格差(まさに多摩川格差)が焦点となっており、東京都に集中する税収を地方へ再配分する新たな措置が議論されています。千葉・神奈川・埼玉など隣接県からの要望も強く、国としても放置できない問題と認識され始めたと言えるでしょう。
しかし実は、こうした税収格差是正の試みは今に始まったことではありません。以前から法人課税の一部を国税化して地方に再配分する措置などが講じられてきましたが、東京都側の反発もあり抜本改革は先送りされ続けてきました。象徴的だったのが2018年、小池百合子東京都知事が政府・与党による「東京都の税収の一部を地方に配分する新たな措置」に猛反発した場面です。「東京を標的とした税制度の見直しは断じて認められない。地方自治体による行財政改革を軽視するものだ」と小池知事は述べ、東京の力を削ぐことは日本全体の力を弱めると強調しました。当時すでに東京都の法人課税約4,200億円が地方に配分されていましたが、さらなる偏在是正策には「断じて認めない」と強硬に反対したのです。
こうした東京都の抵抗もあり、地方税の偏在是正は小手先の制度改正に留まり抜本策が打てないまま現在に至りました。そのツケが回り、東京と地方の税収格差は依然として大きく、自治体間の軋轢や不公平感もくすぶっています。財源が乏しい自治体ほど国の交付金や他地域からの支援に頼らざるを得ず、真の意味で自立した地域運営が難しい状況です。
さらに、国からの過度な財政依存は自治体の行動にも歪みを生じさせます。財政力の弱い自治体ほど国の地方交付税交付金など「依存財源」に頼る比率が高まりますが、研究によれば地方交付税への依存度が高い自治体ほど歳出効率が低下し、依存度が低い(自力で賄う)自治体ほど財政規律が保たれる傾向があると指摘されています。
要するに、「足りなければ国が補填してくれる」という状況では緊張感をもった財政運営が難しくなるということです。国に頼りきりで交付金を当てにした事業ばかりしていると、住民ニーズに合わない箱モノ行政や無駄遣いに陥りやすく、地域の自律的な発展を阻害しかねません。
国が主導する地方創生策も、各自治体が自ら汗をかいて稼ぐ仕組みを作らなければ絵に描いた餅になってしまいます。人口減少が進む地方ほど「補助金を獲得すること」が目的化しがちですが、それでは地域経済の活力は生まれません。むしろ、大胆な規制緩和や税源移譲によって地方が自主財源を確保し、権限と責任を持って地域戦略を描けるようにすることが重要です。自治体が自立していれば、東京など都市圏に出て行った人材が地元に戻って起業したり、地域ならではの産業を興したりするインセンティブも高まるでしょう。「国からの自立」こそ地方創生のポイントである所以です。
自治体も個人も「自立」が鍵を握る
地方自治の世界で「親離れ」の重要性を見てきましたが、この自立の精神は私たち個人のマネーライフにも通じるものがあります。つまり、「誰かに判断を委ねるのではなく、自分自身で考え、決断する」という姿勢です。
昨今、日本では「貯蓄から投資へ」の流れが加速しています。政府は資産所得倍増プランを掲げ、2024年からは新NISA(少額投資非課税制度)を恒久化・拡充して個人の資産形成を後押ししました。事実、新NISA開始をきっかけに投資を始めた人は急増しています。金融庁の調査によれば、2024年一年間でNISA口座数は435万口座も増加し、年間の買付額も17兆円増えて累計52.7兆円に達し、政府目標の56兆円に迫る勢いでした。SNSやメディアでも投資・資産形成の話題がこれまでになく盛り上がり、まさに個人投資元年とも呼べる状況です。
こうした環境の変化の中で強調したいのが、「自立した投資判断」の重要性です。NISAなどを通じて投資を始める人が増える一方、「何を買えばいいの?」「誰かオススメの銘柄を教えて…」と他人任せの姿勢では、本当の資産形成力は身につきません。せっかく税優遇のある制度を活用しても、金融機関任せで言われるがまま商品を買うだけでは、自分の目的やリスク許容度に合わない投資をしてしまう恐れもあります。大切なのは、情報収集から判断まで主体的に行動することです。
幸い、今はネット証券やSNS、書籍などから誰でも知識を得られる時代です。特に20~40代の皆さんはデジタルにも慣れ親しんでおり、自ら学んで投資スキルを磨く余地は大いにあります。最近では女性投資家の台頭も目覚ましく、新NISA開始直後の2024年1月末時点では楽天証券の新NISA口座開設者の54%が女性だったとのデータもあります。大手証券で女性割合が過半数を占めたことは画期的で、まさに「女性も投資が当たり前の時代」が始まりつつあります。投資の世界は性別に関係なくチャンスが開かれており、知識と行動次第で誰もが恩恵を享受できるフィールドです。
では、具体的に自立した投資家になるために何が必要でしょうか。第一に、自分なりの投資方針や目標を持つことです。他人の意見は参考にしても最終判断は自分で下すという覚悟を持ちましょう。第二に、長期・分散・積立という王道を理解することです。
新NISAでも拡充された「つみたて投資枠」を活用し、時間を味方につけた長期積立分散投資を習慣化するのが堅実な資産形成への近道です。派手な売買テクニックよりも、地味でも着実な運用を続けることが成功の鍵になります。実際、行動ファイナンスの研究では「女性の方が運用成績が良い」というデータも報告されています。これは女性の方が慎重で不要な短期売買を控える傾向があり、男性にありがちな自信過剰からくる過剰取引による失敗が少ないためと分析されています。自分に過度の自信を持たず謙虚に学び、中長期目線でコツコツと運用する姿勢は、老若男女問わず投資の王道と言えるでしょう。
最後に忘れてはならないのは、「自分のお金の責任者は自分」であるという意識です。他人任せのままでは、たとえうまくいってもそれは自分の力にはなりませんし、もし損をしても納得がいかないでしょう。逆に、自分で考え抜いて下した判断であれば、結果がどうあれ糧になります。投資にはリスクがつきものですが、だからこそ小さく始めて経験を積み、自信を育てていくことが大切です。
依存から自立へ — 明日へのDEVOTION
国家と地方の関係にせよ、個人とお金の付き合い方にせよ、共通するキーワードは「自立」です。地方創生の本質は、地域が中央に過剰に頼らず自ら稼ぎ、考え、行動できるようになることにあります。同じように、私たち一人ひとりの資産形成も、銀行や誰かの助言に寄りかかりきりではなく、自分自身で財産を築く主体者になることで道が開けます。
「国におんぶに抱っこ」から卒業し、地方も個人もそれぞれの力で未来を切り拓いていく。それは決して楽な道ではありません。しかし、依存から脱却し主体的に動き出した時、初めて見えてくる景色があります。地方が自立すれば東京一極集中の歪みも是正され、人も資金も全国に循環する持続可能な社会へと近づくでしょう。個人が自立すれば老後不安に怯えることなく、自分らしい人生設計を描けるでしょう。
地方創生も資産形成も、一朝一夕で成果が出るものではありません。しかし、自立した意思と行動の積み重ねこそが未来への確かな投資です。他人任せでは得られない充実感と成功体験を、自らの手で掴みにいきませんか。国も企業も当てにならない時代だからこそ、自分の未来は自分で選び取る。そんな覚悟を持つ人こそ、これからの時代をリードしていくのではないでしょうか。