2025/07/22

米国市場は「さすがトランプ大統領?!」 〜関税収入13兆円の衝撃〜

トランプ大統領の強気な貿易政策によって、アメリカ政府の関税収入が記録的な急増を見せています。2025年上半期(1~6月)だけで関税収入は約13兆円(872億ドル)に達し、法人税に次ぐ規模の財源に迫る勢いです。この結果が果たして「さすがトランプ大統領!」と称賛される成功劇となるのか、それとも「トランプ大統領で大失敗」と酷評される結末となるのか—その行方に注目が集まっています。



関税収入が急増、その“からくり”とは?

今年に入ってからの関税強化で、米国の関税収入は文字通り桁違いの伸びを示しています。4月に各国との「相互関税」を発動して以降、関税収入は急増し、6月単月では約266億ドルと例年の4倍に跳ね上がりました。関税率10%の相互関税だけで6月末までに177億ドル超、さらに自動車分野の追加関税で107億ドル超もの税収が発生したと分析されています。トランプ米大統領は8月1日から新たな関税率を発動すると表明しており、「多くのお金が我が国に入ってくる」と自信たっぷりに語っています。この発動により、米国の平均実効関税率は現在の20.6%(1910年以来の高水準)からさらに上昇する可能性も指摘されています。

では、なぜこれほど巨額の資金が米国に流れ込むのでしょうか。その“からくり”は相互関税にあります。例えば米国と相手国が共に関税をかけ合う場合、米国が多くの製品を輸入しているほど、その輸入品に課す関税収入が増えます。アメリカという巨大な市場に世界中から商品が送り込まれている現状では、高関税による「通行料」のようなお金が次々と米国財務省に積み上がる構図です。まるで大人気テーマパークが入場料を大幅値上げしたにもかかわらず来園者が絶えず、結果として売上が激増しているような状況と言えるでしょう。トランプ政権はまさにこの状況を作り出す体制を整えつつあり、相互関税によって「米国にお金が流れ込む」仕組みが現実のものとなってきています。


「一方的」関税交渉で進むいびつな合意

関税収入激増の背景には、トランプ政権の独特な通商交渉術もあります。政権は「相互主義」を掲げる一方で、各国との交渉では米国だけが高関税を維持し相手国は関税ゼロという極端な条件を引き出そうとしています。事実、7月に発表されたベトナムやインドネシアとの合意では、米国は約20%もの高関税をかけ続ける一方、相手国側は米国製品に対する関税をゼロにするといったいびつな“一方的”合意が成立しました。ホワイトハウスの高官はこの合意内容を「素晴らしい。極めて『一方的』な内容だった」と称賛したほどです。まるで橋の両端で通行料を取り決める交渉において、自分(米国)だけが「無料通行パス」で橋を渡り、相手には高額の通行料を課すようなものです。これでは通行料(関税収入)が米国に一方的に入ってくるのも当然でしょう。

こうした合意が積み重ねられれば、米国の関税収入は今後も安定した“収入源”として定着する可能性があります。米議会予算局(CBO)の試算によれば、追加関税によって2035年度までに累計2.8兆ドル(約308兆円)も財政赤字が削減される見込みだといいます。これは今後10数年間の米国の税収累計見通し(約67.5兆ドル)の4%にも相当し、国家財政を潤す上で無視できない規模です。事実、世界銀行のデータによれば米国の税収に占める関税収入比率は2023年時点で2.8%と、中国(2.7%)より高く、英国(0.7%)やフランス(0.006%)など先進国とは桁違いです。5%以上の関税収入比率を持つ国・地域は世界でも数少ない中、経済大国アメリカがこの仲間入りをしつつある現状は、極めて異例と言えます。


安定財源化の光と影:撤廃困難と市場への影響

関税収入が「打ち出の小槌」のように潤沢な財源となればなるほど、そこには光と影の両面があります。まず財政面の“光”としては、先述のように関税収入増で財政赤字圧縮が期待でき、財源としての安定感が増すことです。しかし“影”の部分として懸念されるのは、一度肥大化した関税収入が財源として固定化し、将来も撤廃や引き下げが難しくなる事態です。CBOの分析では、仮に追加関税(2.8兆ドル分)を将来撤廃しようとすれば、単純計算で法人税率を3分の1に引き下げるのと等しい財源喪失になりかねないとの指摘があります。政権が交代しても関税を元の低水準に戻せなくなる可能性があるわけです。

実際、こうした懸念を裏付ける先例も既に現れています。第1次トランプ政権(2018年以降)で導入された対中追加関税は、次のバイデン政権でも結局撤廃されず継続されました。バイデン前大統領は当初これら関税の見直しを検討しましたが、中国の“不公正な貿易慣行”是正や安全保障上のサプライチェーン見直しを理由に結局維持されたのです。それどころか電気自動車(EV)・鉄鋼・半導体など重要品目では、さらなる関税引き上げさえ行われました。このように、一度高関税路線に舵を切ったアメリカは、政権交代後も「自由貿易路線からの転換」を継続しており、関税政策が恒久化する兆しがあります。企業にたとえるなら、新商品によって莫大な収益を手にした結果、もはやその収益源を手放せなくなってしまった状態です。一時的な施策だった関税が恒常的な収入の柱となれば、その“出口戦略”はますます難しくなるでしょう。

では、このような関税収入急増と高関税政策の長期化は、市場にどのような影響を及ぼすのでしょうか。短期的には、米国への資金流入増加というプラス材料があります。高関税による収入増は政府財政を下支えし、減税や歳出拡大といった形で景気刺激策につながる可能性もあるからです。事実、トランプ政権は大規模な税制・歳出法案にも意欲を見せており、関税戦争への懸念が和らぐ中で市場の関心は「関税から減税・利下げへの転換」といったポジティブな側面に移りつつあります。上半期に動揺を招いた関税発動も一巡し、7月後半以降はこうした新たな材料を織り込みながら、市場の方向性が少しずつ見え始める初期段階に入ると考えられます。まさに夏の嵐(関税通達)が過ぎ去った後、市場という大海原の航路が徐々に定まっていくイメージです。


米国株式市場は上昇基調、一方でバブル懸念も

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2025年6月末、ニューヨーク証券取引所の様子。 
米国株式市場はジェットコースターのような上半期を記録的高水準で終えました。


米国株式市場は足元で堅調な上昇基調を維持しています。今年4月には相互関税発動の報復懸念から急落する場面もありましたが、その下落分をわずか1ヶ月ほどで完全に取り戻し、さらに上昇に転じました。S&P500種株価指数は4月の急落前の水準を5月初めまでに回復し、その後は過去最高値圏に迫る水準にまで上昇しています。2025年上半期末時点で米国株式市場は史上例を見ない高値圏にあり、投資マネーも米国に大きく流れ込みました。事実、今年に入ってから既に1,640億ドル(約23兆7千億円)もの資金が米国株式市場に流入しており、このペースは年間ベースで過去3番目の規模という記録的な勢いです。

なぜこれほど株価が強いのか、その背景にはいくつかの要因が考えられます。前述のように、関税収入増による財政余力が市場に安心感を与えている面もあるでしょう。また、米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ動向を見極めつつも将来的な利下げに動くとの観測や、2025年末に期限を迎える減税措置の延長など景気刺激策への期待も、高揚感を後押ししています。投資家心理としては「関税問題はひとまず峠を越え、次は減税や金融緩和といった追い風が来るかもしれない」との見方が広がりつつあるのです。

しかし、一方でバブルへの警戒も怠れません。株価上昇が行き過ぎていないか、冷静に見極める必要があります。現にBofA(バンク・オブ・アメリカ)のストラテジストであるマイケル・ハートネット氏らは「関税から減税・利下げへの転換」が下半期に投機的な株式バブルのリスクを高める可能性があると指摘しています。超低金利や減税期待でジャブジャブに資金が流れ込めば、株価が実体経済以上に膨らみ過ぎてしまう懸念があるからです。まさに風船が大きく膨らみすぎてパンと弾けるリスクに注意すべき局面と言えます。実際、2025年6月末時点でS&P500の予想株価収益率(PER)は22倍超と長期平均(約16倍)を大きく上回り、投資家の楽観がかなり織り込まれている水準でした。さらに関税率引き上げによる物価上昇(インフレ)や企業コスト増も、時間差で利益圧迫や個人消費減速を招くリスクがあります。こうしたバブルの芽を踏まえ、米国株が今後も伸び続けるかについては慎重な見方が必要でしょう。


「定説が通じない」トランプ相場、柔軟な発想で挑む

トランプ大統領下のマーケットでは、「これまでの常識や定説が必ずしも通用しない」場面が度々見受けられます。貿易戦争=株安というセオリーを覆した今年4~5月の展開は、その典型でしょう。4月初旬、突如発表された高率の相互関税に市場は悲観し、米国株は10%以上急落しました。普通であれば貿易摩擦が長引くほど株安が常態化しそうなものですが、トランプ政権はわずか一週間後に関税強化の一部を90日間停止するなど軌道修正に動き、結果として市場は急速に落ち着きを取り戻しました。S&P500指数は1ヶ月足らずで下落前の水準を回復し、その後さらに高値更新に至ったのです。まさに「恐れているときこそ貪欲であれ」という有名投資家の格言通りの展開になったわけですが、裏を返せば従来の経験則だけでは測れない“異次元”の相場でもあります。

また、政治面でも従来の常識が当てはまらない状況が続いています。通常なら政権交代時に前政権の高関税政策は見直されると考えがちですが、前述したようにバイデン前政権はトランプ氏の対中関税を継承・維持しました。むしろ安全保障や産業政策の観点から関税強化を推し進め、民主・共和を問わず米国全体が保護貿易的な方向に舵を切ったのです。このように、トランプ時代の投資環境では「これまでこうだったからきっとこうなるだろう」という固定観念が通じないケースが増えています。ある意味、一寸先は闇ならぬ“一寸先はトランプ”とも言える状況かもしれません。投資家としては柔軟な発想と臨機応変な対応力を持って臨むことが重要です。定説にとらわれず、常に最新の動向にアンテナを張り巡らせながら、「もしかすると今までの常識は当てはまらないかも?」という視点でマーケットと向き合う姿勢が求められるでしょう。

結局のところ、足元の米国市場は関税収入という“追い風”を得て上昇を続けています。このまま「さすがトランプ大統領!」と称えられる景気拡大・株高が進むのか、それとも関税バブルの影が忍び寄り「トランプ大統領で大失敗だった」と振り返られる結末になるのか—2025年後半の市場動向は予断を許しません。関税強化がひと段落する7月後半からは、いよいよその趨勢が見えてくる初期段階と言えます。投資初心者の方も経験者の方も、そして企業経営者の方も、「トランプ相場」の行方を引き続き注視しつつ、柔軟かつ慎重な投資スタンスで臨んでいきましょう。


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