2025/09/01

経済の核爆弾から4年。経済戦争が勃発?!

はじめに:4年前の「経済の核爆弾」とは何だったのか

今から約4年前の2022年、ロシアによるウクライナ侵攻に対する制裁措置として、西側諸国はロシアの主要銀行を国際決済ネットワークのSWIFT(国際銀行間通信協会)から締め出すという前例のない金融制裁に踏み切りました。このSWIFTからの排除は、当時「金融の核爆弾」とまで呼ばれた非常手段です。実際、専門家からは「市場が開けば通貨ルーブルは暴落し、ロシア経済の大きな部分が終わりを迎える」といった極端な予測も出ていたほどで、その衝撃度の大きさがうかがえます。いわば実際の爆弾ではなく、“お金の流れ”を断つ経済版の核兵器とも言える措置だったのです。

この「経済の核爆弾」投下の歴史的意義は極めて大きいものでした。第二次世界大戦後、約50年にわたり培われてきた国際金融システム(たとえばドルを基軸通貨とする体制や自由貿易の常識)は、この一件で大きく揺らぎ始めます。SWIFT制裁はロシア経済に深刻な打撃を与えただけでなく、同時に欧米企業にも痛みを伴う諸刃の剣でした。当初ドイツやフランスが慎重だったように、世界の金融市場全体を巻き込む恐れがあったためです。

結果としてロシア側は、中国の人民元決済や独自の決済網に活路を求め、経済的なダメージを受けつつも完全な崩壊は免れました(2022年のロシアGDP成長率は当初予想より浅いマイナスにとどまったとも言われます)。この経験は、「経済制裁にも限界がある」「グローバル経済の分断が進み得る」という教訓を世界にもたらしたのです。

こうした出来事から約4年が経過し、世界経済は今新たな局面に立っています。当時のSWIFT制裁が“核爆弾”だったとすれば、次に懸念されるのは「経済戦争」です。では、経済戦争とは一体何を指すのでしょうか?そして、私たち投資家はこれから何に注意すべきなのでしょうか。以下で順を追って解説していきます。



経済戦争の予感:トランプ政権、ロシアに最後通告?

2025年9月を目前に控えた米国では、トランプ大統領がロシアへの強硬姿勢を強めていると報じられています。なんと「ウクライナ戦争がこのまま続くなら、世界大戦にはしないが“経済戦争”にする」とまで発言し、プーチン大統領に停戦を迫ったのです。ここで言う「経済戦争」とは、文字通り武力ではなく経済制裁や関税といった手段で戦う戦争のこと。トランプ氏は「望まないがロシアにとっても悪い結果になる」と述べつつ、あえて経済面からプレッシャーをかけています。

具体的な策として示唆されたのが、ロシア(さらにはウクライナに対しても)に非常に強力な関税を科すという前代未聞の戦略です。これは「和平実現のため」に両国に大きな経済的負担を課す覚悟がある、という宣言でもあります。まるで「話し合いで平和にならないなら、お財布を痛めつけるぞ」という最後通告のようにも聞こえますね。

このような動きは、国際社会に新たな緊張感を生み出しています。約4年前のSWIFT制裁は各国が足並みを揃えてロシアを金融網から排除しましたが、今回は米国主導でより直接的・積極的な経済攻撃を仕掛ける可能性があるからです。まさに経済戦争の勃発とも呼べる状況であり、エネルギー価格や為替相場など市場全体への影響も無視できません。

さらに注目すべきは、トランプ政権がこの経済戦争を通じてドルの基軸通貨体制を死守しようとしている点です。たとえばBRICS(新興5か国)がドル離れを進めようとすると、トランプ氏は「ドル離れの動きを諦めないなら100%の関税をかける」と牽制しました。米ドル以外の通貨で決済しようとする試みすら、経済戦争の一環として阻止しようとしているのです。この強硬な姿勢からは、米国が経済覇権を巡る戦いに本腰を入れていることがうかがえます。


ここ数年で変わった世界経済とパワーバランス

これまで見てきたように、ウクライナ侵攻以降、国際経済はかつてない激動期に入りました。いくつか具体的な変化を挙げてみましょう。

まずインフレと金利の急上昇です。2022年には原油や天然ガス価格が高騰し、世界各国で物価上昇率が数十年ぶりの高さに達しました。各国の中央銀行(日本銀行や米FRB(米連邦準備制度理事会)など)は急ピッチで利上げを実施し、長らく続いた超低金利時代に終止符が打たれました。その結果、企業や家計の借入コストが上がり、株式市場も大きく上下動しています。低金利を前提とした投資環境は、もはや過去のものとなりつつあります。

次にエネルギーやサプライチェーン(供給網)の再編です。ヨーロッパはロシア産の石油・ガスへの依存を減らす動きを急速に進め、代替となるエネルギー確保に奔走しました。同時に、米中対立や各国の経済安全保障政策の高まりから、世界的な“経済ブロック化”が進んでいます。昔の冷戦時代のように、価値観を同じくする国同士で経済圏を作り、敵対する国とは取引を制限する――そんな動きが徐々に顕在化しているのです。「世界の工場」である中国からの輸入に頼りすぎないように、生産拠点を自国や友好国に移す企業も増えています。グローバル化一辺倒だった流れにブレーキがかかり、経済の地政学リスク(*地域紛争や外交で経済が揺れるリスク)が無視できなくなりました。

さらに国際的なパワーバランスの変化も見逃せません。2000年代初頭に4%程度だった中国の世界GDPシェアは、2020年代には18%を超えるまでになり(米国はかつての30%超から低下)、経済規模で見ても多極化が進んでいます。ロシアがSWIFTから排除された後、中国とロシアは自国通貨(人民元)と中国独自の決済システムCIPSを活用し、制裁の影響を低減させました。インドや中東諸国も自国の利益を最優先に、必ずしも米欧の意向通りには動かない姿勢を見せています。つまり「アメリカとドルの絶対的な一強時代」に陰りが見え始めたのです。

たとえば、米国が敵対国をSWIFTから締め出しても、そうした国々がドル以外(人民元やルーブル建てなど)で取引を始めれば、制裁の効果は薄れます。実際、ウクライナ侵攻後にロシアはドル離れを進め、中国との間で人民元建て決済を拡大させました。BRICS諸国は自分たちの共通通貨構想まで打ち出しています。こうした動きに対し、米国は前述のように強硬な経済戦争的手段で対抗する構えですが、世界経済の主導権争いは今やかつてなく複雑になってきていると言えるでしょう。


投資の常識が変容:50年のセオリーが通用しない?

戦後約50年かけて築かれた投資理論やセオリーも、この数年で見直しを迫られています。具体的にどんな変化が起きているのか、いくつか例を挙げてみます。

かつては株式と債券を6:4の割合で持てば安定したリターンが期待できる、と言われてきました(60/40ポートフォリオと呼ばれます)。株と債券は逆相関になりやすく、片方が下がってももう片方が支えてくれる、という経験則があったためです。ところが2022年、世界的なインフレで株も債券も同時に値下がりし、この伝統的な分散投資戦略の効果が失われてしまいました。実際、60/40モデルの2022年の成績は過去数十年で最悪級で、「もはや通用しないのでは」とまで囁かれています。多くの投資家が代わりに暗号資産やコモディティ、不動産など代替資産(オルタナティブ投資)へ関心を移す動きも見られます。これは、これまで有効だったリスク分散の考え方を根本から見直す必要が出てきたことを意味します。

もう一つ、大きな常識の変容は中央銀行の独立性や信頼性に関するものです。中央銀行(たとえば米国のFRB)は政治から独立して物価と景気を安定させる——これは長年にわたり信じられてきた前提でした。しかし昨今、政治指導者が金融政策に介入しようとする動きが目立っています。象徴的なのがトランプ政権によるFRB人事への干渉です。トランプ大統領は2025年8月、住宅ローンに関する疑惑を理由にFRB理事の一人(リサ・クック氏)を解任する方向で動き出しました。市場専門家からは「この動きはFRBの独立性への懸念を強め、ドル相場の重しとなった」「FOMC(米連邦公開市場委員会)のメンバー構成がハト派(*金融緩和に積極的な姿勢)寄りに傾く可能性がある」との指摘が出ています。つまり、政治の圧力で利下げ方向に政策がねじ曲げられるのではという不安です。

さらに「トランプ政権の意図はFRBの健全性維持ではなく、自分に近い人物を据えることだ。それは制度への信頼を損ね、米国という国の投資魅力にヒビを入れる」との辛辣なコメントも専門家から出ました。実際この人事介入で「近くFRB理事の過半数を味方で占める」という観測まで流れ、市場では中央銀行の中立性が揺らげば通貨(ドル)や国債の信頼低下につながるとの懸念が強まっています。戦後長く常識とされた「中央銀行は常に信用できる黒子的存在」という通念も、今や変わりつつあるのです。

50年の間には、「世界経済は長期的には成長し続ける」「株式は長く持てばリスクが平準化される」という楽観的な理論も広く信じられてきました。確かに過去半世紀、大きな戦争もなくグローバル化によって企業利益は拡大し、人類全体が豊かになるトレンドが続いてきました。しかしウクライナ侵攻や米中対立の激化を見ると、地政学リスクが投資リターンを左右する時代が到来しています。突然の制裁でロシア株が無価値になったり、パンデミックで特定業種が壊滅するような出来事が起こり得る現実を目の当たりにし、「これからもずっと経済成長が続く」とは言い切れないとの見方が広がりました。持続可能性や安全保障といった観点を織り込んだ投資戦略が重要になり、教科書通りのモデルでは対応できない局面が増えています。

以上のように、ここ数年で投資の前提やセオリーが揺さぶられているのです。これは初心者の方にとっては少し怖い話かもしれませんが、大切なのは「過去と同じやり方が常に通用するとは限らない」と知っておくことです。逆に言えば、新しい環境に合わせて柔軟に学び直し、戦略をアップデートする好機でもあります。


9月以降、投資環境はどう変わる?何に注意すべき?

では、具体的に2025年9月以降の投資環境はどう変化し得るのでしょうか。いくつかポイントを整理してみましょう。

まず、米国発の政策リスクに注意が必要です。トランプ政権が本格的に「経済戦争」を仕掛けた場合、ロシアへの追加制裁や高関税措置によってエネルギー価格や穀物価格が再び乱高下する可能性があります。たとえば原油供給が滞ればガソリン価格が急騰し、インフレ再燃で各国の金利見通しも不透明になります。経済制裁は標的国だけでなく世界経済全体に波及することを、約4年前の「経済核爆弾」で私たちは経験済みです。同じことが繰り返されれば、市場のボラティリティ(変動幅)は大きく拡大するでしょう。

次に金融政策の方向感です。仮にトランプ大統領がFRBへの影響力を強め、思い通りの利下げを進めるようなことになれば、一時的に株式市場は好感するかもしれません。金利が下がれば企業にとって資金調達が楽になり、株価は上がりやすいからです。しかし、その利下げが政治的思惑によるものだと市場が判断すれば、ドル安が進みかねません。実際、前述のFRB理事解任が報じられた直後、為替市場ではドルが主要通貨に対して下落する場面もありました。「アメリカ離れ」の資本流出が起きれば、米国株も長い目で見て不安定要素を抱えることになります。

また地政学イベントにも気を配りましょう。ウクライナ情勢はもちろん、台湾海峡や中東情勢など世界各地に火種があります。9月以降もこれらのニュース次第で市場が大きく揺れる可能性があります。特に商品市況(コモディティ価格)は敏感で、仮にどこかで紛争や制裁が発生すれば金や原油が急騰・急落することも考えられます。「有事の金」という言葉があるように、不透明感が強まれば金(GOLD)や米国債といった安全資産に資金が逃避する動きも強まるでしょう。

総じて、2025年の秋以降はこれまで以上に先行きが読みにくい投資環境になるかもしれません。長年積み上げてきた各国の経済協調が揺らぎ、政治・経済・金融が複雑に絡み合った「新しい相場」に突入する可能性があります。


おわりに:9月を慎重に見極めよう

以上のように、ウクライナ侵攻から4年を経て今、世界はまるで新たな「経済冷戦」とも言うべき局面に差し掛かっています。「経済の核爆弾」と呼ばれたSWIFT制裁から始まった激変は、ついに全面的な経済戦争の様相を帯びつつあります。それに伴い、これまで常識とされた投資のセオリーもアップデートが必要になってきました。

特に投資初心者の皆さんには、「9月以降の動きに要注目!」とお伝えしておきます。これは決して「怖いから投資をやめろ」という意味ではありません。むしろ、変化をチャンスと捉えて冷静に状況を見極めることが大切です。9月には米国の政策動向やウクライナ情勢など重大ニュースが目白押しになる可能性がありますが、焦って飛び乗ったり逆にパニック売りしたりするのではなく、じっくりニュースを追い、経済の“大きな潮目”を見定めましょう

たとえば大きな台風が来る予報が出たら、傘を用意したり外出を控えたりしますよね。同じように、経済の嵐が来るかもしれないときは、現金比率を高めにしておく、リスク資産の比重を点検する、新たな投資先(コモディティや代替資産など)を勉強してみる——といった備えが有効です。「備えあれば憂いなし」の精神で、この9月以降を過ごしてみてください。

最後に、どんな状況でも分散投資長期的視点の原則は初心者の味方です。短期的な波乱に右往左往せず、しかし決して油断せず、9月からのマーケットと世界情勢を一緒に乗り切っていきましょう。参考にしてください。


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