2025年9月、金(GOLD)価格が連日で史上最高値を更新しています。たとえば田中貴金属工業の店頭小売価格では9月3日に1グラムあたり18,691円と、前日の18,211円から480円も上昇し連日の最高値となりました。文字通り「最高値更新」のニュースが続いている状況ですが、実はこの最高値はゴールではなく通過点に過ぎません。むしろ「まだまだ超最高値を目指す中での最高値」というわけです。こう聞くと「今がピークなのでは?ここから買って大丈夫なの?」と不安に思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、ご安心ください。金相場には今後さらなる上昇を期待できる強固な理由があります。本記事では、その主な理由を6つのポイントに分けて解説します。ぜひ参考にしてください。
・現在の最高値は通過点 – さらなる上昇を期待できる理由 ・ドル基軸体制の揺らぎとトランプ政権・FRBの不透明さ ・各国中央銀行の金保有増はまだ続く ・アジアの年金基金も金を組み入れ開始 ・広がる陰謀論に惑わされないで ・金の通貨的価値 – 今こそ組み入れ好機 ・小川からの注意喚起 ・書籍紹介
現在の最高値は通過点 – さらなる上昇を期待できる理由
今回の金価格の最高値更新は、長い上昇トレンドの中の一里塚に過ぎません。実際、金の国際価格は2025年に入ってからも力強く上昇し、9月初旬には1トロイオンスあたり3,500ドルを突破しました。今年だけで35%以上も急騰しており、まさに異例の強さです。なぜここまで金が買われるのでしょうか?背景には世界的な金融・経済の不透明感があります。
まず、アメリカではインフレ高進や巨額の財政赤字などにより、中央銀行であるFRB(米連邦準備制度)の政策運営への信認が揺らいでいます。将来の景気や金融政策の見通しに懸念が広がる中、投資家や各国政府は「本当に米ドルや米国債を安全資産として信頼してよいのか?」という疑問を持ち始めました。こうした不安心理が広がると、「有事の安全資産」としての金に資金が集中し、価格を押し上げる傾向があります。
実際、金と米国債の明暗は2025年に大きく分かれました。金価格が史上最高値を更新する一方で、米国債(長期国債)の利回りは近年にない高水準まで上昇(価格は下落)しています。これは、将来のインフレや金利に対する懸念から、従来「世界で最も安全」とされてきた米国債ですら売られ気味になっていることを示します。代わりに選ばれているのが金です。インフレや地政学リスクへのヘッジ手段として、今や中央銀行も民間投資家もこぞって金を買い増しているのです。
要するに、足元の最高値更新は「終わり」ではなく新たな上昇ステージの幕開けかもしれません。「もっと上がる余地があるからこそ皆が買う」。。。この好循環が生まれている点が重要です。
ドル基軸体制の揺らぎとトランプ政権・FRBの不透明さ
金価格上昇の根底には、基軸通貨ドル体制への不信感があります。第二次大戦後、一貫して国際基軸通貨の地位を保ってきた米ドルですが、近年その地位に陰りが見え始めました。国際的な外貨準備に占めるドルの割合は徐々に低下しており(現在は約60%程度)、各国中央銀行がドル資産の比率を減らす動きも見られます。背景には、米国による経済制裁リスクや地政学的緊張の高まりがあります。事実、ロシアがSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除された2022年以降、各国はドル以外の通貨や資産に目を向け始めました。その受け皿の一つが金なのです。
さらに、2025年時点の米国政局にも市場は神経質になっています。現在、ドナルド・トランプ氏率いる政権が運営していますが、FRBの独立性が脅かされるのではないかとの懸念があります。実際、ゴールドマン・サックスは「トランプ大統領によるFRBへの干渉が続けば、投資家のドル資産離れが進み金価格は1オンス=5,000ドルに達し得る」との分析を発表しました。トランプ政権による金融政策への介入はドルの信頼低下を招き、相対的に金の「安全な逃避先(セーフヘイブン)」としての魅力を高めるという指摘です。
加えて、米FRB自体の先行きにも不透明感があります。インフレ退治を優先するあまり急激な利上げを行った反動や、逆に景気後退局面では大幅利下げに転じる可能性など、金融政策の読みづらさが市場の不安要因となっています。ゴールドマン・サックスのレポートによれば、市場では米国が近く利下げに動くとの観測が広がっており、その期待も金価格の上昇要因になっています。仮に政権の圧力で超金融緩和に傾けば、ドルの価値がさらに揺らぎ、金への資金流入が加速する可能性もあるでしょう。
このように、ドル基軸体制の揺らぎと米政権・FRBの迷走リスクが意識される状況では、「通貨の王様」である金の存在感が一段と高まります。基軸通貨ドルに陰りが差すほどに、金という普遍的な価値のある資産への信頼が増していくのです。
各国中央銀行の金保有増はまだ続く
金価格を下支えする大きな要因の一つが、各国中央銀行による金の爆買いです。実はここ数年、各国中央銀行は歴史的なペースで金準備を積み増しています。世界全体の中央銀行による金保有量は36,000トン規模に達し、2022年以降の3年間は毎年1,000トン超の純購入が続いています。これは過去10年平均の2倍ものハイペースで、まさに異例の「金詰め込み」状態です。
こうした中央銀行の動きを牽引しているのは、新興国を中心とした外貨準備多様化のニーズです。たとえばポーランドは2025年に入ってから67トンもの金を購入し年初来世界最大の買い手となっています。また中国人民銀行も9か月連続で金を買い増しし、その累計は36トンに及びます。トルコやカザフスタンなど他の国々も定期的に金を購入し続けており、「高値でも買う」という強い姿勢が鮮明です。
中央銀行が金を買い続ける理由は明快です。前章で述べたとおり、基軸通貨ドルや米国債への過度の依存を減らし、価値の普遍的な金を保有してリスク分散を図るためです。また金は他国による凍結リスクや信用リスクがないため、地政学リスク回避の手段としてもうってつけです。
事実、金は今や各国準備資産の中で米ドルに次ぐ地位を占めるまでになっています。2025年には金の準備資産シェアが27%に達し、初めて米国債(米財務省証券)を上回りました。これは1996年以来のことで、30年ぶりに「金>米国債」という逆転現象が起きているのです。世界の準備通貨体制に構造的変化が生じている可能性があり、こうした流れは簡単には止まらないでしょう。むしろ「中央銀行はこれからも金を買い増すだろう」という市場の見方が、金相場をさらに押し上げる好循環を生んでいます。
アジアの年金基金も金を組み入れ開始
金への需要増加は中央銀行だけに留まりません。実はアジア圏の年金マネーにも金をポートフォリオに組み入れようとする動きが出てきています。たとえばインドでは、公的年金基金の運用担当者たちが金ETFへの投資枠拡大を当局に要望し始めました。現行では年金基金資産の5%までしか金関連資産に投じられない規制となっていますが、これを緩和してもっと金に投資できるようにしようというのです。
背景には、金の近年の顕著なリターンがあります。インドの年金基金運用者らは「金は今年最も好調な資産の一つで、年金資産の成長に貢献してくれる」と期待しています。実際、インド国内の主要な金ETFは2025年に入ってから約30%近い価格上昇を記録しており、年金マネーにとっても魅力的な投資先となっています。こうした声を受け、インドの年金規制当局(PFRDA)は金ETF投資の規制緩和を検討中と報じられました。
インド以外のアジア諸国でも、年金や政府系ファンドが金投資を見直す動きが出る可能性があります。アジアは伝統的に金への愛着が強い地域でもあり、個人レベルだけでなく制度的な資金が金市場に流入すれば、そのインパクトは無視できません。年金基金のような超長期の資金にとって、金はインフレや通貨下落に対する価値保存手段として有用だからです。
まだ兆しの段階とはいえ、「堅実な年金マネーまでもが金に注目し始めた」という事実は、長期的に金価格を支える新たな需要基盤になり得ます。今後アジア各国でこの流れが本格化すれば、金市場にはさらに強力な追い風となるでしょう。
広がる陰謀論に惑わされないで
金相場の盛り上がりと共に、一部の投資家の間では過激な陰謀論や極端な煽りも散見されるようになりました。「〇〇年○月にドルが崩壊して金本位制に戻る」「BRICS諸国が秘密裏に金担保通貨を発行する」といった根拠薄弱な噂話がインターネット上で拡散しているのです。こうした情報に踊らされ、「今すぐ全財産で金を買わないと損をする!」などと極端な行動に走るのは大変危険です。
確かに、前述したようにドル体制の揺らぎや各国の金保有増加は事実です。しかしそれを誇張し、「近いうちにドルは紙切れ同然になる」「金だけが唯一の資産になる」などと煽るのは行き過ぎと言えます。実際にはドルは依然として全世界の準備通貨の約6割を占めていますし、主要国の金融システムもドルを中心に回っています。また、金価格も市場の需給や金利動向によって上下するもので、決して一方的に上がり続けるわけではありません。短期的な調整局面や急落リスクもゼロではないのです。
大切なのは、冷静な目で事実を見極めることです。インターネットやSNS上の派手な主張に飛びつくのではなく、公式発表や信頼できるデータ(各国中央銀行やWGCの統計など)に基づいて判断しましょう。陰謀論的な情報はエンターテインメントとして眺めるくらいに留め、決して投資判断の拠り所にしないことが肝心です。金相場が活況だからこそ怪しい情報も出回りやすいという点にも十分注意してください。
金の通貨的価値 – 今こそ組み入れ好機
最後に、金そのものが持つ「通貨」としての価値について改めて強調したいと思います。金は株式や債券とは異なり、発行体の信用リスクを伴わない「無国籍通貨」とも言える存在です。極端に言えば、世界中どこにいても金そのものが価値を持ち、どこの政府の保証も必要としません。これは法定通貨(フィアット通貨)にはない大きな強みです。法定通貨はその国の信用が揺らげば下落しますが、金はどの国にも依存しない普遍的な価値を有しています。
さらに金は誰の負債(借金)にもならない資産です。他人に返済してもらう必要がないのでデフォルト(債務不履行)の心配がありません。加えて量が限られており希少性が高いため、紙幣のように無限に増刷されて価値が希薄化する心配もほとんどありません。こうした特性から、古来より金は最終的な価値の拠り所として人々に信頼されてきました。
そして現在、その「通貨としての金」の価値が改めて脚光を浴びています。インフレや金融不安が意識される時代において、金の価値保存機能が見直され、中央銀行から個人投資家まで幅広く金を資産ポートフォリオに組み込む動きが広がっているのです。でも述べられている通り、金は長期的なリターンをもたらし、分散効果や流動性も備えた戦略的資産です。安全資産でありながら着実なリターンも期待できる点は、大きな魅力と言えるでしょう。
今まさに金は絶好の追い風を受けています。これまで述べてきたような強固な理由によって金価格は上昇トレンドを維持しており、専門機関によっては「今年末に平均3,700ドル(1オンス)に達し、2026年半ばには4,000ドルを超える」との予測も出ています。もちろん短期的な変動はあっても、長期分散投資の一部として金を組み入れる好機であることは間違いありません。まだ金を保有していない方も、まずはポートフォリオの一部に少額からでも金(現物や純金積立、金ETFなど)を取り入れてみてはいかがでしょうか。将来の備えとして金が心強い支えとなってくれるはずです。
小川からの注意喚起
ここまで金相場の明るい見通しと魅力をお伝えしてきましたが、最後に私から読者の皆様へ注意喚起です。いくら金に強気の材料が揃っているからといって、決して油断は禁物です。投資に絶対はありません。金は長期的に見れば価値を保ちやすい資産ではありますが、短期的には価格が変動します。「鉄板だ」と思い込みすぎて無理な資金投入をすれば、思わぬ相場急変で痛手を被るリスクもあります。
また、前述の陰謀論の章でも触れたように、情報をうのみにしない冷静さも重要です。特にネット上で見かける極端な予測や宣伝には十分注意してください。「これさえ買えば絶対安心」「〇〇になることが約束されている」——そのような甘い言葉は疑ってかかるくらいでちょうど良いのです。金投資においても基本は分散と計画性です。ご自身の資産全体のバランスを見ながら、無理のない範囲で少しずつ金の保有比率を高めていくことをおすすめします。
金相場には確かに明るい材料が揃っています。しかし投資は常に自己責任です。冷静な判断と適切なリスク管理を忘れずに、金とうまく付き合ってください。それが長い目で見て資産を守り、育てていく秘訣だと私は考えます。皆さんの健全な金投資ライフを応援しています。