2025/04/09

関税戦争勃発!ドルコスト平均法で泣きを見る投資初心者たち。〜2025年『解放の日』後の乱高下相場に備えよ〜

関税戦争。日本が国別取引に関して「優先権」を得ました。米側担当に指名されたのは知日派で知られるベッセント財務長官。そのベッセント氏によれば、4月、5月、6月と、国別交渉期間になりそうとのこと。つまり、4~6月期まで市場の不確実性が晴れることはないことが確定です。そんな株式相場の大幅下落を想定しながら発動されているトランプ政権の関税政策。トランプ変数という未知の世界。

このような状況下では、教科書通りのテクニックが通用しません。

例えば「ドルコスト平均法」。

相場の下げには「良い下げ」と「悪い下げ」があります。本当に今、ドルコスト平均法は有効なのでしょうか?初心者が陥りやすい「こんな時だからこそのドルコスト平均法理論」。今回は盲目的な「ドルコスト平均法信奉者」にならないための対策をまとめました。



ドルコスト平均法の基本と初心者に好まれる理由

ドルコスト平均法(DCA)とは、株式や投資信託などの資産を定期的に一定額ずつ買い増す投資手法です。
例えば毎月1万円ずつ投資するように決めておけば、価格が高い月には少ししか買えず、価格が安い月には多く買えるため、購入価格の平均を抑える効果があります。こうした自動積立によって、市場変動による影響を平準化し、投資のタイミングを図る手間や心理的負担を減らすことができるのがポイントです。実際、「高い時には少なく、安い時にはたくさん買う」ことで平均購入単価を下げられるこの方法は、しばしば投資初心者に最良の方法として紹介されています。

初心者にドルコスト平均法が支持される主な理由は次のとおりです。

  1. タイミングを考えなくて済む安心感
    相場の高低を予想するのはプロでも難しいものです。ドルコスト平均法なら「毎月○日に○円買う」と決めてしまうため、常に最適なタイミングを計るストレスから解放されます。経験が浅いと「いつ買えばいいのか…」と迷いがちですが、その心配が減るのがメリットとされています。

  2. 機械的な積立で感情に左右されにくい
    値下がり局面では怖くて買えなくなったり、逆に高騰局面では飛びついて買ってしまったりと、人間の感情は投資判断を狂わせがちです。一定額ずつの積立なら半ば強制的に買い続けることで、感情によるブレを防ぎ、長期的な資産形成を継続しやすくなります。

  3. 資金計画が立てやすい
    毎回の投資額が一定なので、家計の中で「毎月○円を投資に回す」と予算化しやすく、貯金感覚で始められます。特に少額からコツコツ積み立てたい人に向いており、NISAや積立投信などとも相性が良い手法です。

このようにドルコスト平均法は手軽で計画的な手法のため投資初心者にとって取り組みやすく、心理的ハードルが低い方法として人気があります。「ほったらかしでOK」「投資初心者はまず積立から」といった宣伝文句も後押しし、多くの人がこの方法で資産形成をスタートしています。


2025年「解放の日」以降のトランプ関税政策と市場への影響

4月2日、米国のトランプ大統領は自ら「解放の日」と銘打った大規模関税政策を発表しました。第2次政権に入ったトランプ氏がローズガーデンで高らかに宣言したのは、「相互関税」と呼ばれる包括的な関税措置です。

内容の詳細は二転三転しましたが、ホワイトハウス報道官によれば「他国が米国製品に課しているのと同じだけの関税」を課すことを目指す方針だといいます。具体的には全ての輸入品に一律10%の基本関税を課し、さらに各国ごとの非関税障壁なども考慮して追加関税を上乗せする計画で、4月5日からこの基本関税が発効、4月9日には追加関税も発動され57か国・地域が対象となりました。トランプ氏は「不公平な貿易慣行から米国を解放する唯一のチャンスだ」と胸を張りましたが、各国は猛反発し、米中・米欧間で貿易戦争の再燃とも言うべき事態に発展しています。

この「解放の日」発表以降、市場は文字通り激震に見舞われました。

直後から景気後退(リセッション)への懸念が急速に高まり、世界の金融市場は動揺しています。米国株式市場では乱高下が続き、発表翌週の4月7日にはS&P500指数が一時8%超も急騰・急落する乱高下を記録し、終値は前日比わずか0.2%安に落ち着いたものの、この2営業日だけで約5兆ドル(約740兆円)もの時価総額が吹き飛ぶ事態となりました。こうした1日の値動き幅(ボラティリティ)の大きさは、2020年のコロナショック以来の異常事態です。株式だけでなく為替・債券・商品市場も巻き込んだ波乱となり、市場参加者の間には「まるで道化師の見せ物」と揶揄する声さえ出ています。

さらにトランプ政権は強硬姿勢をエスカレートさせ、追加関税の応酬合戦が現実化しました。

トランプ氏は「中国が報復関税を撤回しなければ、4月9日から対中関税をさらに+50%上乗せする」と警告し、中国側も対抗措置として「4月10日から全ての米国製品に34%の追加関税」を発動すると発表 。EUも黙っておらず、トランプ政権の鉄鋼・アルミ関税への報復として米国製品に一律25%関税を課す案を準備しました。主要経済圏が互いに高関税を掛け合う事態に市場の動揺は収まらず、株価はニュース見出し一つで上へ下へと乱高下しています。「リスクオフ」の流れから安全資産とされる金価格が急騰する一方、景気敏感な原油価格が乱高下するなど、金融市場全体が神経質なボラティリティ(変動率)上昇局面に突入しています。

今回の状況は、「貿易戦争の再来」と呼ぶにふさわしいものでしょう。

2018年にも米中間で関税の掛け合いが起こりましたが(後述)、2025年の今回はその規模と衝撃度で勝るとも劣らないと言えます。コラノビッチ(Marco Kolanovic)氏など一部の著名ストラテジストは「このままではトランプ氏も市場圧力に屈するしかなくなる」と指摘し、関税撤回を促しています。しかし現時点で政権は強気の姿勢を崩しておらず、市場の乱高下はしばらく避けられない情勢です。


ケーススタディ:2018年米中貿易戦争が市場に与えた影響

今回の局面を理解するために、過去の類似ケースとして2018年の米中貿易戦争時の市場動向を振り返ってみましょう。

当時トランプ政権は、中国に対する知的財産権侵害を理由に追加関税を表明し、これに中国が報復関税で応酬する形で貿易摩擦が激化しました。2018年初め、米国市場は減税効果への期待から堅調でしたが、年の後半にかけて米中の関税合戦への不安が投資家心理を冷やし、楽観ムードは一転しました。

その結果、2018年通年では世界株指数が-11.2%、S&P500指数も約6%下落して終わるなど、表面上は下げ幅こそ限定的でしたが投資家にとっては乱高下の多い波乱の年となりました。実際、S&P500は年内に2度「調整局面」(高値から10%以上の下落)入りし、日々の値動きも2017年の数倍に急増するなど、株式市場のボラティリティが顕著に上昇しました。

とはいえ、この2018年の下落局面で慌てて資産を手放した投資家は、その後大きな上昇機会を逃すことにもなりました。貿易交渉の停滞・関税発動のニュースで株価が下がり、交渉再開・合意のニュースで上がるという展開を繰り返した末、米中は2019年10月に「第一段階(phase one)の貿易合意」に漕ぎ着けます。

これが市場心理を好転させ、2019年の米国株式市場は空前の大幅高となりました。S&P500指数は2018年に4.38%下落した後、2019年には31.5%もの上昇を記録し、一気に史上最高値を更新したのです。中国株も同様に、2018年に大きく値を崩した後、2019年には力強く回復しています。

このケースから学べるのは、「暴落は永遠には続かない」という点です。

2018年の貿易戦争では、一時は世界経済への悪影響が懸念され株価も大幅下落しましたが、適切な妥協や政策対応がなされれば市場は意外と早く持ち直すことが示されました。ドルコスト平均法でコツコツ買い続けた投資家にとっても、2018年の下げ局面は「安く仕込む好機」となり、その後の2019年の急騰で大きな果実を得ることができた計算です。結果論ではありますが、「下がったら買い増し、上がったら利益が乗る」というドルコスト平均法のメリットが、この期間については存分に発揮されたと言えます。

しかし重要なのは、このような展開は常に保証されているわけではないということです。

2018~2019年は比較的短期間で下落から回復に転じましたが、世の中にはもっと長く苦しい下落相場も存在します。次のセクションでは、「どんな下げもチャンス」とは言い切れない理由、すなわち相場下落の質の違いについて考えてみます。


 「どんな下げも買い時」とは限らない:相場下落の“質”の違い

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ドルコスト平均法を信奉する人は「下がったら安く買えるチャンス!」と前向きに捉えがちです。

確かに、短期的な調整であれば買い増しの好機となり得ます。しかし、すべての下落局面が将来の上昇に繋がるとは限りません。相場の下落には「一時的な調整」と「長期的な低迷」の2種類があり、後者の場合は安易に「買い時」と飛びつくと痛手を被る可能性があります。

実際、近年のSNSなどでは「あらゆる局面で積立投資こそ正解」「銀行預金なんかせずS&P500に積み立てれば絶対儲かる」といった極端な論調も目立ちます。しかし、プロの目から見るとそれは楽観的すぎると言わざるを得ません。

ドルコスト平均法は魔法ではなく、投資先の資産価値が最終的に成長していなければ損をすることもあるからです。実際、どれだけ長期間積み立てを続けても、運用終了時の価格が自分の平均購入単価を下回っていればトータルでは元本割れになってしまいます。つまり、積み立てている間ずっと価格が右肩下がりだった場合や、長い停滞の末に急落して終了時点を迎えた場合など、「終わりが悪ければ全て損」という結果も起こり得るのです。

また、投資の世界には「落ちるナイフは掴むな」という格言があります。急落中の銘柄は一見安く見えても、底が見えないまま掴めば手を切る(大損する)恐れがある、という戒めです。相場全体についても同様で、明らかに下降トレンドが続いている局面では、むやみに「安いから」と買い向かうのは危険です。

たとえば2000年代初頭のITバブル崩壊後のNASDAQ指数は元の高値まで回復するのに15年近くかかりましたし、1990年代以降の日本株の低迷(いわゆる「失われた20年」)では長期積立でも報われるまで非常に長い時間を要したケースがあります。極端な場合、投資先の企業がそのまま業績悪化・倒産してしまえば、積み立てたお金自体が戻ってこないリスクもあります。

また、下落のタイミングによっても損益の結果は大きく異なります

前節では「下がったところで買えれば後の上昇で大きな利益」と述べましたが、裏を返せば下落が運用の終盤に来てしまうと大損になり得るということです。ドルコスト平均法では運用期間の後半になるほど積立元本が大きくなっています。そのため、運用終了間際に暴落が起こると、それまでコツコツ買い溜めた資産が一気に高値掴みの塊と化し、全体の資産評価を押し下げてしまいます。

実際、あるシミュレーションでは「運用20年のうち最初の10年で大暴落→後半回復」というケースが最も良い成績となり、逆に「最後の年に急落」というケースでは20年間積み立てても損失が出るという結果も報告されています。

要は、下げ相場にも「良い下げ」と「悪い下げ」があるということです。順調に右肩上がりの相場より、一度大きく下がってから最後に上がる相場の方がドルコスト平均法には好都合ですが 、いつも都合良くそのような展開になるとは限りません。

まとめると、「どんな下げも買い時」と無条件に信じるのは危険です。長期的に見て有望な資産の一時的な調整であれば積み増しの好機かもしれませんが、そうでない場合(構造的な不況や衰退局面など)にはむしろ一歩立ち止まる勇気も必要になります。


戦略的視点:必要に応じて“一歩引く”勇気と判断軸

ドルコスト平均法は「ほったらかしでOK」と言われることもありますが、実際には市場環境に応じて柔軟に戦略を調整することも大切です。特に2025年現在のように不透明要因が多く乱高下する相場では、状況によっては一時撤退(様子見)する勇気も持つべきでしょう。プロの視点では、たとえ長期投資が前提であっても「今後下げそうだ」と思えばいったん利益を確定して現金比率を高め、嵐が過ぎるのを待つのは賢明な判断だからです。

では具体的に、どんな局面で「一歩引く」判断を検討すべきでしょうか。いくつか判断軸の例を挙げてみます。

  1. 景気後退の明確な兆候が出ている場合
    失業率の急上昇や景況感指数の悪化、長短金利の逆転(逆イールド)など、マクロ経済的に不況のシグナルが点灯しているときは注意が必要です。こうした局面では株価が中長期的に下落トレンドに入る可能性が高く、無理に買い向かわず様子を見ることも検討しましょう。

  2. 政策リスク・地政学リスクが高まっている場合
    今回の関税戦争のように、政府の政策一つで市場が大きく揺れる状況や、戦争・災害など先行き不透明感が極めて強い状況では、防御的姿勢を取るのも一策です。悪材料が出尽くすまで「現金ポジションやGOLDポジションを厚くして守りを固める」などの資産を守る戦略が有効です。

  3. 相場が過熱しすぎている場合
    市場が長期間にわたり上昇し続け、株価収益率(PER)などのバリュエーション指標が歴史的高水準に達していると感じたら、いったん利益を確定しておくのも有効です。「10年運用して元本が2倍になったら、半分だけでも利益確定して良い」という考え方はプロには自然な発想です。誰しも欲が出てもっと儲けたいと思うものですが、大きな含み益がある時こそ一部でも現金化・GOLD化してリスクを下げることが、暴落への備えになります。

  4. 自分の投資目的・期限が近づいた場合
    例えば老後資金のように使う時期が決まっている資金の場合、残り時間が少なくなるほど一時的な暴落でも致命傷になりかねません。目標時期が迫ってきたら、リスク資産の割合を落として守りを固める(いわゆるグライドパス戦略)ことも検討しましょう。「ゴール直前での暴落」が積立投資にとって最大のリスクである以上、そのリスクを事前に下げておくことが大切です。


以上のような状況では、「勇気ある撤退」を選択肢に入れるべきです。

実際、プロのトレーダーの世界では「20年間ずっと長期投資すると決めたからといって、どれだけ含み益が出ていても売らないというのは単なる根性論に過ぎない」と言われています。たとえ積立期間の途中でも、「ここから先は下げそうだ」と思えば一度売却して様子を見るのがプロの考え方
になります。特に非課税のNISA枠などは「もったいないから使い切りたい」と考えがちですが、下げ相場に無理についていくのは時間の無駄。焦って枠を消化しようとせず、相場が大底を打ち横ばいから反転し始めるまで投資を待つくらいの慎重さがあっても良いでしょう。そして「今が底だ」「チャンスだ」と思えるタイミングが来たら、積立を再開すればいいのです。

重要なのは、闇雲に恐れて常に現金で待機せよということではありません。むしろ「長期で見れば成長が期待できるが、今は嵐の中かもしれない」という状況を見極め、攻めるときと守るときのメリハリをつけることが肝心なのです。そのためには日頃から経済ニュースに目を配り、世界景気や市場トレンドを自分なりに分析する習慣も欠かせません。

その上で「貯蓄と違って投資は先の見えないものにお金を投じる行為だからこそ、自己責任でしっかり『これから上がるか下がるか』を予測すること」も重要です。完全に的中させるのは不可能でも、何も考えずに機械的に積み立てるだけでは大切な資産を2倍3倍に増やすのは難しいのが現実だからです。市場の状況に応じて柔軟に戦略を調整する視点を持ち、「休むも相場」という選択肢もポートフォリオ運用の中に取り入れられるようにしましょう。


結論:「ドルコスト平均法」は“使う場面”を見極めることが重要

ここまで見てきたように、ドルコスト平均法は投資初心者にとって心強い手法であり、長期投資を継続する上で有効な戦略です。毎月コツコツ積み立てることで、高値掴みのリスクを薄め、いつ買うべきか悩むストレスを確かに軽減してくれます。実際、歴史的に見れば米国株式市場は長期では右肩上がりを続けてきたため、この手法で大きな資産を築いた投資家も多数存在します。

しかし同時に強調したいのは、ドルコスト平均法は決して「万能の必勝法」ではないという点です。

市場環境によっては、積み立てを続けても報われるまでに非常に長い時間がかかったり、場合によっては損失が出たりすることもあり得ます。特に2025年現在は、トランプ政権の関税政策による貿易摩擦や世界的なインフレ・金融引き締めの動向、地政学リスクなど、不確実性の高い要因が山積しています。こうした乱高下相場では従来のセオリーが通用しにくい局面もあるでしょう。大切なのは、一つの手法に固執せず臨機応変に対応する姿勢です。ドルコスト平均法という強力な武器も、その「使いどころ」を見極めてこそ真価を発揮するということを覚えておきましょう。

投資経験が浅いと、下落局面で不安になるあまり機械的な積立ルールだけに頼りたくなる気持ちは理解できます。実際に積立投資は有効な場面が多いですし、初心者が変に相場予測をして失敗するよりは賢明な手法でしょう。ですが、「ほったらかし」や「放置して無関心」でいられる状況は「健全な投資状況」とは言えません。自分の資産の行方には常に関心を払い、必要に応じて舵を切る勇気も持ち合わせたいものです。

ドルコスト平均法を使って長期投資を行ったとしても、値動き次第では損をする。決してほったらかしにしてはいけない。どんな手法も絶対はありません。ドルコスト平均法とうまく付き合いながら、時には距離を置くことも選択肢に入れて、これから訪れるかもしれない荒波の相場を乗り切っていきましょう。2025年のトランプ変数、今までのように教科書通りのテクニックは有効ではないような気がします。。。


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